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特定非営利活動法人キャンパー

日本に暮らす以上、避けては通れない自然災害。

中でも大規模地震による災害は、多くの犠牲を生むとともに、「阪神大震災」を契機とした「ボランティア元年」、そして「東日本大震災」以後の寄付文化の高まりなど、社会に多大な影響を与えてきました。

特定非営利活動法人キャンパーは、2004年の新潟中越地震発生以降、多くの被災地に赴き炊き出しによる支援を行ってきた、行田市のNPO法人です。

主な活動が「災害発生時」の炊き出し活動、という不定期の活動でありながら、炊き出しメニューの研究や、炊き出しシステムのノウハウづくりなど、現状に満足することなく長きに渡り研究を続けてきました。

今回は、キャンパー代表理事の飯田芳幸氏にお話を伺いました。

活動レポート:特定非営利活動法人キャンパー(行田市)

団体設立までの経緯について

2004年10月に発生した新潟中越地震の被災地で、炊き出しを行ったことが活動の始まりです。

キャンパーの前身は、日本全国でキャンピングトレーラー(※1)を用いての野外活動を楽しむ仲間たちのメーリングリストによるネットワークです。日頃から全国各地の仲間と情報を共有していたメンバーは被災地の状況について知り、野外活動で培った調理スキルを生かせるのでは?と考え、新潟県の被災地へ向かいました。

現地で活動する中で、現地の自治体やボランティアセンターなどとのやり取りなど、活動をしやすくするためには法人格が必要だと考え、NPO法人として設立することを決意しました。

※1キャンピングカーが居住設備を備えた自走可能な車であるのに対して、車で牽引し切り離して設営することも可能な居住設備を、キャンピングトレーラーと言います。
キャンピングトレイラーの写真
キャンピングトレーラー

被災地での炊き出しについて

被災地に到着したら真っ先に行うのは、インフラの状況把握と、行政との折衝です。 
衛生面での不安や、炊き出しボランティアが殺到することによる食事の供給過多など、トラブルを避けるために、行政やボランティアセンターの指示を仰ぎ、連絡調整を丁寧に行います。

自分たちは被災地の外から来た人間であり、一定の時期を過ぎたら撤収するのだ、ということを忘れず、一番の当事者である地元の行政や住民の方との調整を丁寧に行い、顔を立てることを常に意識しています。

また、炊き出しは、無料で提供することで被災者からは喜ばれますが、地域の経済活動を止めることでもあります。食材は可能な限り地元で入手し、炊き出しが必要な時期を過ぎれば、直ちに撤収します。
被災者は、外からやってきた「よくわからない人たち」が作った食事を、やむを得ず食べている状況です。だからこそ、被災者に安心して食べてもらうために、調理の専門家でつくる一般社団法人日本調理科学会と炊き出しに関する研究を続けてきました。

実際キャンパーでも、活動初期のころには、一人に対する食事の提供量が多くなりすぎてしまったり、現地の人の食べ慣れない食事を提供してしまったりと、色々な失敗をしました。

これらの経験から得た教訓や、培ったノウハウをまとめたものとして、炊き出しマニュアルを発行してきました。改訂を繰り返し、現在出版されているものは5訂版です。
時間や人数、材料の量まで、細かく設定することで、炊き出しを無理なく継続できるようにするとともに、被災者の心理面を念頭に、日本調理科学会と協力して、彩り豊かなメニュー開発に取り組んできました。

マニュアルの表紙献立の写真

キャンパーと一般社団法人日本調理科学会の共著『災害時炊き出しマニュアル』(東京法規出版)
食材や調理方法が限定される炊き出しでは、どうしてもメニューが偏りがちとのこと。
マニュアルには、災害時の炊き出しとは思えないような色とりどりのメニューが並んでいます。
被災者が食べ慣れたものを提供できるよう、各地方に応じてのメニューの提案もされています。

近年の炊き出し活動について

これまで、各被災地で試行錯誤を繰り返してきましたが、2016年に発生した熊本地震の被災地での活動で、一定の炊き出しに関するノウハウが確立されたと考えています。

炊き出しで一番重要なのは、食材の調達や行政との調整といった裏方の仕事であり、キャンパーのメンバーが長年の活動で培ってきたものです。
一方で、表に立って調理や食事を提供する仕事は、現場を仕切るリーダーさえいれば、誰でも参加してもらうことができます。

そこで熊本地震の被災地では、地元の学生に炊き出しの表舞台に立ってもらい、キャンパーメンバーは連絡調整などの裏方に徹する、という新たな取組を行いました。

結果としてはっきりしたのが、「外から来た知らない人」よりも、見知った地元の若者が炊き出しの場に立つことで、被災者が親しみを持ち、勇気づけられるのだということです。

地元の学生といった地域に馴染みのある人たちに表で活動してもらい、我々メンバーが裏方に徹する、という仕組みを、今後各被災地で運用できるよう確立していきたいと考えています。

熊本地震の炊き出しの様子

熊本地震の被災地にて、地元の学生がボランティアとして参加した炊き出しの様子

炊き出し以外の活動について

キャンパーのメンバーが日頃趣味で楽しんでいるキャンピングトレーラーは、キャンピングカーと異なり、トレーラー部分のみを切り離して設営・寝泊りの場とすることが可能です。そこで、平常時にはキャンプ場などに設置して使用料を徴収し、災害が発生した際には被災地に急行、被災者に無償で寝泊りの場として提供する「ホワイトタウンプロジェクト」の仕組みづくりに取り組んでいます。

キャンピングトレーラーの設置が広がれば、どこかで災害が発生した際、全国各地からキャンピングトレーラーが集まり、仮設住宅建設までのつなぎとして活用できるようにもなります。

ホワイトタウンプロジェクトの説明図

ホワイトタウンプロジェクトの仕組み
キャンピングトレーラーが集結する様を例えた、キャンパーによる造語です。

活動15周年について

キャンパーはメンバーそれぞれが仕事を持ち、災害発生時にのみ活動する団体なので、平時だとメンバーの参加率が低いのが現状です。
また、災害発生時にこれまで様々な企業から御支援いただいてきましたが、感謝の意を示す場を設けることができないままになっていました。

そこで、キャンパーが活動15周年を迎えることにもあやかり、キャンプイベントを開催することにしました。キャンパーのメンバーや、支援者の皆さんとの交流の場としたいと考えています。

自然災害について

広域に被害が及ぶような大地震を始めとして、日本では毎年様々な自然災害が発生しています。しかし、竜巻や水害など、例え被害は甚大だったとしても、局地的な被害に留まる災害については、外部の人間が行くべきではないと考えます。
社会が普段どおりに機能している近隣地域からの支援を受けることができるからです。

いくら被災地で活動した経験やボランティア等のスキルがあるからといって、外部の人間が出向くと、むしろトラブルになってしまうことがあります。
近くに暮らす者同士、お互い様の関係で助け合うことができるのが一番スムーズですし、地域自身の力で解決することで、災害に対するスキル向上にもつながります。平常時のうちから、防災協定など、できるだけ地域の中で助け合える環境・関係性を作っておくことも重要です。

そして、地域の力だけは解決できない規模の災害が起きた時こそ、キャンパーの出番だと思っています。

炊き出しの様子  炊き出しの様子 子どもたちとの写真

東日本大震災被災地での活動の様子

今後の活動について

熊本地震被災地での活動時には、炊き出しボランティアとして活動した学生たちが成長していく姿を見ることができ、とてもうれしく思いました。
今後は、そういった若者たちに、被災地で安心して活動できる場を設けてあげたいと思っています。

そして、キャンパーは今年で15周年を迎えました。
今後も団体として活動を継続していきますので、キャンパーについて関心を持っていただければ幸いです。

特定非営利活動法人キャンパー