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特定非営利活動法人ふじみの国際交流センター

皆さんにとって、外国人はどんな存在ですか?

来日する外国人は年々増え続け、2018年には年間で3,000万人を突破。
2019年4月には「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が施行され、就労目的での外国人の来日は今後急激に増加することが推測されます。

今や外国人は「海の向こうの人たち」ではなく、身近な存在です。

今回の活動レポートに御協力いただいたのは、ふじみ野市で長年外国籍を持つ人々の支援に取り組んでいる、認定特定非営利活動法人ふじみの国際交流センターです。

ふじみの国際交流センターは、外国人に向けた常設の相談窓口を設けているほか、日本語が使えない・苦手な人に向けた多言語情報誌の発行、日本語教室、就職に役立ててもらうためのパソコン教室、子どもの学習支援・進路相談、翻訳・通訳支援など、その活動内容は多岐に渡ります。

外国人との共生が求められる今、私達日本人は、どのように外国人と接していけばいいのでしょうか。
ふじみの国際交流センターの皆さんのお話を伺う中で、少しずつヒントが見えてきました。

活動レポート:ふじみの国際交流センター(ふじみ野市)

センターの外観

ふじみの国際交流センターの活動拠点は、上福岡駅からほど近い住宅地の中にあります。
取材当日は日本語教室の開催日で、多くの生徒で賑わっていました。

共助社会づくり課

ふじみの国際交流センター(以下「FICEC(ファイセック)と表記します)の活動は、前身の日本語クラス時代を含めると1980年代にまで遡るとお伺いしました。

活動を始めたきっかけをお教えいただけますか。

FICEC理事長 石井ナナヱ氏

海外旅行に行った子ども達から、現地の人たちにとても親切にしてもらった、という話を聞いて、日本で暮らす外国人のために何か恩返しをしたいと、考えたことがきっかけです。

日本語や日本文化を外国人に伝え、互いの交流を図ることを目的に、1987年から「日本語クラス」を始めました。

日本語クラスを実施する中で気づいたのが、一人暮らしで寂しい思いをしている外国人が多いということです。加えて、国際結婚がブームになるにつれ、夫からの虐待や離婚、日本での就職困難など、様々な問題にぶつかる外国人妻の数が増えていきました。
また、親の都合で一緒に来日した子ども達も、その大半が学校の勉強についていくことができず、苦労していました。

これらの状況から、日本に暮らす外国人が自由に集うことができる常設のスペースが必要だと考え、1997年に「ふじみの国際交流センター」として現在の場所で活動を始めました。

2000年にはNPO法人格を取得、2013年には埼玉県の指定・認定NPO法人となり、現在に至ります。

外国人生活相談の看板

ふじみの国際交流センター入口の看板

共助社会づくり課

地域に暮らす外国人の集う場所として、長年生活相談をはじめとした様々な事業に取り組んでいらっしゃいますが、利用する人や相談内容の傾向はどうでしょうか。

石井氏

求人倍率の上昇もあり、ある程度生活も安定しているのか、最近の生活相談数は減少傾向にあります。相談者の国籍としては、昔は中国やフィリピンが多かったのですが、最近ではベトナム、ネパール、インド、アフリカ諸国などが多い印象です。

一方で、日本語教室の受講者数は増加傾向にあります。費用面から日本語学校への通学は難しいけれど、日本語を勉強したい、上手になりたい、という人達の受け皿になっています。

FICECまで通うのは難しい、という遠方に住む人に対しては、近隣の日本語教室を紹介しています。

ガイドブック表紙ガイドブック中身

近隣の日本語教室の情報を集約したガイド。開催の曜日や時間も明記されています。
週に一度の勉強では足りない、と複数の教室に通う人もいるそうです。

共助社会づくり課

FICECの活動には、かつて支援を受けていた外国人も、スタッフとして参加していらっしゃいますね。

FICEC理事 安銀柱氏(韓国籍の方)

私は語学留学を機に来日したのですが、日本人と話す機会がなかなかありませんでした。
実際、留学経験者に話を聞いてみると、数年間日本に滞在しても、日本人と全く話すことなく帰国する人は珍しくないそうです。

FICECでは、日本人と一対一で話すことができ、外国人なら誰でも、何か困ったことがあった際には相談が出来ます。

石井氏

外国人スタッフがいることで、日本人のみの団体では気が付かないことや、難しいことにも対応できていると思います。

例えば、FICEC設立当初は、支援対象となる外国人からは、得体の知れない、怪しい団体だと思われていたそうなのですが、前身の日本語クラス時代の外国人の生徒達が、センターのスタッフとして一緒に活動してくれたおかげで、外国人からの相談が少しずつ増えていきました。

スタッフとして活動する外国人たちは、自身が日本に来て苦労した経験から、同じように大変な思いをしている外国人を助けたい、という思いで活動に参加してくれています。

安氏

相談者の外国人からは、母国語を使って話ができる相手がいると相談しやすい、という話も聞きます。
自分と同じ国出身の外国人スタッフがいれば、使い慣れた母国語で、安心して色々な話ができます。

情報誌の表紙

FICECで毎月発行している情報誌。7か国語で書かれています。

共助社会づくり課

相談に来る外国人、日本人スタッフ、外国人スタッフと、様々な立場の人が集まっての活動となると、苦労されることも多いのではないでしょうか。

石井氏

一人一人異なるルーツを持ち、考え方も価値観も多種多様なので、継続して団体を動かしていくのはとても大変です。
でも、大変さ以上に、日本人のコミュニティの中で暮らしているだけでは受けられない、様々な刺激や喜びがあります。

元々は、外国人のために何かできないだろうか、と始めた活動でしたが、今では人生の生きがいになりました。
もっと多くの日本人に、外国人と交流する素晴らしさを知ってほしい、と思っています。

共助社会づくり課

外国人と交流する、と言われると、語学力など、ハードルが高いと感じる人も多いと思います。
FICECでは、日本人のボランティアスタッフを募集していますが、具体的にはどのような活動から始めていくのでしょうか。

石井氏

初めてFICECのボランティアに参加する人には、一番に「地域に暮らす外国人と話してみてほしい」という思いから、まずは日本語教室で日本語を教えてもらいます。

他団体の日本語教室の中には、ボランティア参加の基準として、資格の有無や指導経験などを定めている場合もありますが、FICECにはそういった基準はありません。
私自身、活動の原点はボランティアで始めた「日本語クラス」でしたので、最低限指導方法をお伝えしたあとは、教室で日本語を教えながら、必要なことは学んでもらえばいい、と考えています。

日本語教室は、「外国人に日本語を教える」のみならず、教える側の日本人も、外国人と話をする中で、色々なことを教わる場です。
日本語教室のボランティアに参加するうちに、もっと専門性を身に着けたい、という意欲を持つようになり、日本語教師の資格を取った人もいます。

日本語教室の様子

日本語教室の様子

共助社会づくり課

今後日本の社会で暮らす外国人はさらに増加していくかと思われますが、価値観や習慣の違いなどから、様々な問題が起きています。
問題を解決していくために、FICECではどのようなことを意識されていますか。

石井さん

日本に来る外国人の多くは、母国から遠く離れた場所で、寂しさを抱えています。
FICECを訪れるのは、皆近所に暮らしている人達です。外国人も含め、地域で顔の見える関係を築くことで、外国人を地域で孤立させない、寂しい思いをさせないことが大切だと考えています。

加えて、わざわざ遠い日本まで来たのですから、日本の素晴らしいところをもっと知ってもらえるように、と意識して、外国人と交流しています。
また、そのためには、市町村ごとにFICECのような交流拠点が必要だとも思います。

安さん

外国人が起こした問題や事件などがニュースで取沙汰されていますが、地域で孤立していることもその一因として考えられると思います。国籍に関係なく、「一人」から生じる不安は、犯罪やトラブルに繋がるのではないでしょうか。

共助社会づくり課

今後の活動に向けて、悩みや課題はありますか。

石井さん

活動資金の調達に苦慮しており、スタッフの多くには無報酬でボランティアとして活動してもらっている状況です。今後の活動継続のために、資金の確保をどのように図るかが今一番の悩みです。

外国人支援は、行政からの補助金がほとんどありません。
「なぜ外国人を支援しなければならないのか?」との意見もありますが、外国人にも、日本に暮らす以上税金を支払う義務があります。

高齢者や障害者に対する支援があるように、日本での生活に苦労する外国人にも、同じ社会的弱者として支援を受ける権利があるはずですし、国籍に係らず「人権」を守るという意味でも、私達の活動は必要不可欠だと思っています。

共助社会づくり課

最後に、FICECの活動について、読者に向けてメッセージをお願いします。

石井さん

FICECの合言葉は、「多文化が未来を拓く」です。
支援をする側のスタッフも、支援を受ける側の外国人も、互いを尊重し、刺激を受け、成長していける関係性を大切に、日々活動しています。

外国人と接する機会があまりなく、外国人を身近に感じられない、という人も多いかと思います。
地域で一緒に暮らすとなると、様々な困りごとやトラブルもあるかと思いますが、外国人は「悩みの種」ではなく、地域に多様性をもたらす「地域の宝」なのだ、と考えてみてほしいです。

また、定期的に継続して寄付いただける支援者の開拓をしたい、と考え、FICECでは「マンスリーサポート制度」を開始しました。
マンスリーサポーターとして登録いただき、毎月任意の額を、自動的に口座引き落としで、FICECに寄付いただく仕組みです。

現在登録者を募集中です。興味を持っていただける人、また、忙しくてボランティアをする時間がない人には、寄付を通じて御支援いただければと思いますので、ぜひFICECまで御連絡ください。

集合写真

FICECの前にて・スタッフのみなさん

特定非営利活動法人ふじみの国際交流センター

○団体HP
http://www.ficec.jp/

○団体情報(コバトンびんのデータベースが開きます)
http://www.saitamaken-npo.net/database/kyoudou/group.php?mode=detail&id=050610165931

取材を終えて(共助社会づくり課より)

「外国人との共生」は、現在の日本が直面している難しい問題ですが、どう解決するか、と頭を悩ませる以上に、まずは相手を知ることが一番の近道なのかもしれません。

街中で見かける「得体の知れない人たち」ではなく、日本とは異なる文化を持ち、地域に多様性をもたらす「宝物」のような存在だと考えれば、「外国人との共生」は今後の日本の地域社会をより豊かにする、貴重なチャンスとも言えそうです。