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#2 NPO法人TSUBASA(新座市)

 新座市を拠点に日本で最初のインコ、オウム、フィンチの保護団体として鳥類の保護活動や適正飼養に関する啓発活動を行っている、「NPO法人TSUBASA」。平成26年12月19日から認定NPO法人、平成27年3月17日から埼玉県条例指定NPO法人として活動されています。
 今回は、認定・指定NPO法人になって良かった点や現在の活動内容等について、井伊順子理事からお話を伺いました(取材日:令和6年9月10日)。

井伊理事
井伊 順子 理事

【認定NPO法人レポート】

Q1はじめに、認定、指定NPO法人になって良かった点を教えてください。

 平成24年8月にNPO法人を立ち上げてすぐに認定NPO法人制度が始まったため、認定NPO法人を目指して活動し、平成26年に認定NPO法人となりました。また、埼玉県には指定NPO法人という制度もあることから、一緒に取ろうという話になり、平成27年に指定NPO法人となりました。

 認定を目指したのは、寄附者の方に対するメリットがあることが一番大きな理由でした。認証NPO法人の場合は、寄附をいただいてもお返しできる形がほとんどありませんが、認定NPO法人の場合には、税制上の優遇措置があることが寄附者の方に対する大きなメリットだと思います。

 また、例えば、大企業にはマッチングギフト制度といって、社員の方が寄附した金額と同じ額をその企業が寄附してくれるという制度がありますが、その対象を認定NPO法人に限っている企業様もあります。企業側としても全NPO法人を精査するのは難しいので、5年に一度の認定更新の審査を受けて無事に通っているということがお墨付きとして信頼していただいているということも認定NPO法人のメリットだと思います。

施設内で暮らす鳥の写真  井伊さんと鳥の写真
↑施設では、新しい家庭を探す沢山の鳥達が生活しています。

Q2団体設立までの経緯を教えてください。 

 設立当時、この団体を創設した松本代表が会社の社会貢献活動の一環として、保護団体活動を始めました。代表は元々ペット業界で働いており、業界内の矛盾や問題を痛感していたようです。そのような折、アメリカで行われたシンポジウムに参加し、アメリカ最大級の鳥の保護団体「ガブリエル財団」の代表と知り合いました。松本代表は大きな感銘を受け、そのまま「ガブリエル財団」を訪問し、アメリカの保護団体の仕組みなど、色々なお話を伺ったそうです。これが現在の活動の基礎となっています。

 最初は会社の一部の活動として、一般社団法人として活動するつもりでしたが、最終的にNPO法人TSUBASAという形で活動を行うことになりました。

Q3現在の活動内容を教えてください。

 一番メインとなる活動は、日本全国の鳥を飼えなくなってしまった方からお引き受けし、次のご家庭を探す保護活動です。里親会も以前は月に1、2回のペースで週末に開催していましたが、現在は予約制で水曜日を除く毎日受け付けています。毎日ですので一日一組様限定とし丁寧に対応しています。

 TSUBASAの里親会で一番特徴的なのは、その場で鳥を連れて帰ることができない点です。まずは一旦仮登録していただき、ご家庭でどのように鳥を飼うのか、なぜその鳥が良いと思ったのかをうかがい、その鳥の特徴などをご説明します。特に大きい鳥の場合、鳥側が人を選ぶことが多いので、実際に触れ合って相性を見極める必要があります。鳥との距離の縮め方などもお伝えしながら時間をかけて少しずつ馴染んでいただく形です。鳥は種類によって30年から50年以上も生きることがあり、人見知りする鳥や誰とでも仲良くできる楽天的な鳥など、性格も様々なので、お申し込みから最低でも1ヶ月、長いと半年ぐらいかけて引き取り先を決定しています。

施設内で暮らす小型の鳥  施設内で暮らす中型の鳥
↑保護されている鳥達は、小型~大型の鳥までさまざま。

Q4ありがとうございます。鳥の引き渡しの際の手続(ワクチン等)について教えてください。

 鳥の場合、ワクチンはないのでかえって大変です。まず、鳥をTSUBASAに引き受ける時には他の鳥と交わらないように検疫室で45日間隔離します。引き受け時に3つの感染症(CHL・PBFD・BFD)の検査をしますが、環境が変わったり免疫が落ちたりすると症状が出ることもあるので、45日間は隔離して様子を見るためです。その後、何もなければ検疫室の外に出ることができます。クラミジア検査については、その後もTSUBASAでは全鳥が半年に一度実施しています。

 また、次のご家庭に行く際には、ご家庭内に鳥がいる場合、その鳥も検査(クラミジアのみ)を受けていただき、双方の検査が陰性であれば、話が進む形になります。この検査代は1羽あたり約2万円かかり、動物病院では保険の適用がないため、既に沢山の鳥を飼っている方が新たに鳥を迎える場合、費用がかさむことになります。

看護室の写真
↑施設内には、より手厚いケアを必要とする鳥達が生活する「看護室」も

 また、鳥の中にはワシントン条約の対象となっている種類もあります。そういった鳥は環境省が委託している一般財団法人自然環境研究センターで登録票の交付を受けないと移動できません。こうした手続きが必要であることは残念ながらあまり知れ渡っていません。私たちも手続きについて様々なご相談をお受けしますが、高齢者の方にとっては手続きが難しい場合が多いです。

 犬とは異なり、鳥には保健所との紐付けがないため、法律が変わって登録票の取得が必要になっても飼い主の元に通知が来ることはありません。テレビや新聞にも大きく取り上げられるものではないため、よほどアンテナを高く張っていないと、情報を得るのは難しい状況です。

Q5鳥を飼われている方が、普段から気を付けるべきことはありますか。

 まず、ワシントン条約の対象となっている鳥を飼育されている場合には、登録票の取得と更新を忘れずお願いしたいです。飼育している鳥が今はワシントン条約の対象でなくても、野生下の状況によって将来対象となる可能性もありますので、情報を得る努力も必要です。

 また、高齢者の方は特に、日頃からご自身が鳥を飼っていることが分かるように、周囲の方に知らせていただきたいです。そうすると、「最近あの方をお見かけしないな、鳥さんはどうなっているかしら」と気にかけていただくことに繋がります。また、家の中の見えるところに鳥の名前や動物病院の診察券を用意しておくと、緊急時に役立ちます。そして、年1回は動物病院で健康診断を受けていただくと、病歴も残りますし、動物病院の先生や同じく鳥を飼っている方との繋がりができるきっかけにもなります。埼玉県や東京都では、鳥の専門病院が増えてきています。

 鳥を飼っている方はそういった繋がりを持っていただいて、ご家族やお友達、場合によっては弁護士や行政書士に相談するなどしておいていただけると、将来のための備えになるかと思います。

放鳥スペース  鳥さんの顔のアップ
↑放鳥スペースでは、大型の鳥ものびのびと過ごしていました。

Q6今後の活動の目標・方向性を教えてください。

 やはりまずはこういった保護団体が存在し、大型鳥は50年以上、小型鳥でも10年以上生きることもあり、長生きができる生き物であることを沢山の方に知っていただきたいです。犬や猫の保護団体が多く存在することは皆さんご存知かと思いますが、鳥に関してもペットショップからではなくこうした保護団体からという認識が広がってもらえたら嬉しいです。

 また、鳥のお世話の仕方も昔の認識のままの方が多く、例えば、生態がよく分からなかった昔は、大きい鳥にひまわりの種や人間の食べ物を与えることが当たり前でしたが、現在では高脂血症などの生活習慣病を引き起こし、鳥の健康に悪影響を及ぼすことが分かっています。鳥の飼い方もアップデートが必要です。

 小さな鳥はペットショップだと数千円で購入できますが、生き物ですから歳もとるし、病気もします。ケアや治療にはそれなりの費用がかかります。命を扱うという覚悟をもって臨んでいただきたいです。これから飼う方たちは、ぜひそれぞれの鳥種の特性ならびに最新の飼い方などを理解した上で飼っていただけることを願います。

中学校からの訪問①  中学校からの訪問②
↑県内の中学生が企業見学のためにTSUBASAを訪問(令和6年10月撮影)。
 TSUBASAでは、県内外を問わず見学会を歓迎されているそうです。

Q7認定・指定NPO法人を目指す認証NPO法人の方に向けて、アドバイスをお願いします。

 「何のために認定を取るのか」ということは、まず考えた方がいいと思います。せっかく苦労して認定を取る以上は、なぜ認定を取るのか、そもそも自分たちにとって本当に必要なのかという根本的なことをしっかり考えることが必要だと思います。

 また、お金の流れや会員の方の情報などは、日頃からきっちりデータ化して整えておかないと、いざ認定を取るときに大変だと思います。

 どのNPO法人さんも、経理を専門に行う人員を確保できているところは少ないと思います。そもそもNPO法人は社会のために何かをやりたいという思いで立ち上げているので、日々の活動に追われている中で事務作業に時間をかけるのは大変だと思いますが、信用度を上げていくためには日頃の事務作業は決して侮れないと思います。

踊りを披露してくれた鳥さん① ⇒ 踊りを披露してくれた鳥さん②
↑最後に私たちの前で踊りを披露してくれた鳥さん。
 井伊理事の手振りと息の合った動きは圧巻でした。

○本日はありがとうございました。最後に、お知らせ等ありましたらお話しください。

 年一回「愛鳥祭」というTSUBASAで一番大きなイベントを開催しています。会場内には、誰もが気軽に聞ける無料セミナーコーナーを設け、鳥の現状や保護活動について知っていただく機会となっており、令和6年は環境省の方々にもご講演いただく予定です。また企業やクリエイターさんたちによる鳥のグッズや作品の展示販売もあります。令和5年からは社会貢献ブースを設け、他のNPO法人や社会のために活動されている団体にも出展いただき、連携に努めています。令和6年は11月16日、17日に大宮駅にほど近い埼玉県産業文化センター(ソニックシティ)で開催します。
 イベントの準備は大変ですが、多くの方に楽しんでいただけると思います。入場無料ですのでお時間があれば、ぜひお越しください。
【愛鳥祭HP;https://aichousai.jimdofree.com/

R5年度愛鳥祭①;会場写真  R5年度愛鳥祭②;会場の様子
R5年度愛鳥祭③;沢山の支援の羽  R5年度愛鳥祭④;販売スペース
↑令和5年の愛鳥祭の様子。
 令和6年は11月16・17日、大宮ソニックシティにて開催予定です。

【NPO法人TSUBASAについて】

 今回ご紹介したNPO法人へのリンクは以下をクリックしてください。

○NPO法人TSUBASA

コバトンびんHP

団体HP(別ウィンドウで表示します)