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#2 NPO法人さいたまユースサポートネット(さいたま市)「一人の若者も取り残さない社会へ」

さいたま市を拠点に子ども・若者支援活動に取り組む「NPO法人さいたまユースサポートネット」。学習支援や自立支援などの事業を通して、「一人の子どもや若者も取り残さない社会」を目指して活動されています。

今回は、現在の活動に至った経緯やコロナ禍の悩みごと、今取り組んでいる地域社会が協働する仕組みづくりを目指した新プロジェクトについてお話を伺いました。

インタビューに答えてくださったのは、代表理事の青砥(あおと)(やすし)さんと、事務局長の青砥(あおと)祥子(さちこ)さん、社会参加推進プロジェクトマネージャーの武原(たけはら)忠志(ただし)さんです。

↓左から武原マネージャー、青砥代表理事、青砥事務局長

裏手の公園をバックに撮影

取材年月:令和3年8月

"子どもたち・若者たちとの関わりをどうつなぎ止めるか"

―青砥代表がさいたまユースサポートネットを始めたきっかけを教えてください。

高校と大学で教員をやっていたこともあり、学校と地域社会は切っても切り離せませんでした。地域活動のボランティアとして、学童やひとり親世帯、外国人のお母さん・お父さんの話を聞く会を始めてみると、子どもの発達や学力、将来の進路形成に、親の経済力が大きく影響していると分かってきました。我々が考えているよりも遥かに深刻で、この格差によって子どもたちの人生は既定されてしまうのです。
例えば、幼児期に親が色んなところに連れていくことは子どもに大きな影響を与えます。別に海外旅行とかではなく、一緒に公園で遊んだり、虫を捕まえたり、絵本を読んだり、何でもいいです。そういったことから、子どもの発達のために教育・学校が果たせる役割や、親から幼児期の子どもに対する働きかけの差、地域社会が親と子どもに関われる方法などについて考えてきました。その延長線上に、今の活動があります。
若い学生に声をかけて、僕と一緒にやってみるかと話をしたら「先生やりたい!」と言ってくれました。実際に活動を始めてみると、あっという間に毎回60人ほど集まり、そのことに感動しました。活動の様子は、NHKにも取材してもらいました(※)。

HP「NHK ETV特集 本当は学びたい~貧困と向き合う学習支援の現場から~」(別ウィンドウで表⽰します)

―コロナ禍で大変だったことを教えてください。

事業によって異なりますが、私たちは人と関わって、人と向き合って、時には一緒に悩んだりすることを大切にしています。活動場所が閉鎖している中、子どもたち・若者たちとの関わりをどうやってつなぎ止めるかということは、それぞれの事業で工夫を凝らしていました。対面かオンラインかを考えたり、彼らの状況を知るためにアンケートを出したり、本当に色んなことを模索してきた一年でした。
この状況は、数年続くと思っています。感染予防しながら、なるべくクローズドにしないで繋がっていられる方法でやっていくしかありません。利用者は、この状況でも怖がらずに来る人がいたり、逆に引きこもってしまったりと二極化しています。今後の対策としては、それぞれの状況に応じて、感染予防を徹底しながら、どうやって切り抜けていくかです。

―コロナ禍でオンラインの支援が増えた一方で、社会との接点が持ちづらくなったと言われています。オンラインの難しさや課題は感じていますか?

オンラインで学習支援や相談会をしても、相手が今どういう気持ちで受け止めたのかを感じるためには、表情が見えないと難しいです。本当のコミュニケーションを取ろうとする時に、オンラインの限界を感じます。
子どもたちのコミュニティ形成には、「体験の共有」を背景につくられた「共通の記憶」と「感情の共有」が必要です。しかし、オンラインにそれに代わる関係性が築けるのでしょうか。きちんと議論しないといけません。

↓さいたま市若者自立支援ルーム(桜木)で行われた感情共有とコミュニケーションスキルを育てるための「アートde 脳活プログラム」

キュビズム風の絵画を持った女性が絵の説明をしている

↓さいたま市若者自立支援ルーム(南浦和)でカードゲームを通じて遊びや人間の関係性について話題にしながらコミュニケーションの練習をしている様子

丸テーブルでカードゲームをしている若者

↓さいたまユースサッカークラブで、小学生が試合前の基礎トレーニングをしている様子

学校の校庭で小学生が赤と青のカラーコーンの前で2列に並んでいる

↓たまり場(居場所)には土曜日の午後、様々な事情を抱えた若者たちが集い会話やゲームを楽しむ

少人数に分かれたテーブルで様々な年齢の人が話をしている

"私たちの仕事は、地域課題を発掘して、解決の糸口をつくること"

―就労支援の事業では、企業と連携を取られているのですね。

「サポート企業」と私たちは呼んでいます。セミナー形式で業界の紹介をしてもらったり、会社見学や1~2日の就労体験をさせてもらったりしています。マッチングが上手くいって就職までお話が進んだ人もいます。

―現在、埼玉県では企業とNPO・市民活動等をつなげるサポートに力を入れています。

私たちとしても、地元の企業さんとの連携を目指しています。私たちの仕事は地域のニーズや課題を発掘し、その解決の糸口をつくることです。そのためにまずは、企業の皆様に地域課題を理解してもらう機会と社会を作り直すための方法を提案していきます。例えば、CSR活動の一環でボランティアに来ていただいて子どもたちと交流して、そこから地域課題を知ってもらい、その上で、可能な範囲で御支援していただけると大変嬉しく思います。

反対に、企業がNPOなどと関わる時のニーズを知りたいです。営利でやられている以上、単に寄附するという訳にはいかないと思います。人は出せるけどお金は出せない、逆にお金は出せるけど人は出せないなど企業ごとに事情は異なるはずです。それでも何らかの形で貢献したいと思ってくださっているのであれば、業種や業態に合わせて「こういうことでお願いできませんか」とお願いをさせていただきます。行政に企業とのマッチングの場を用意してもらえれば、現場にお連れして、活動を見ていただく努力をしていきます。

"一人の若者も取り残さない、そういう社会をめざす"

―長く活動されていて、時代とともに子どもの変化を感じることはありますか?

子どもの遊び方は明らかに変化しました。電子機器やSNSを小さい頃から利用しており、他者との関わりを持つ機会が少なくなりました。幼児を含めて、子どもが子どもたちの集団を作って遊ぶことが圧倒的に減ってしまい、子どもの世界が非常に個別化してきました。

―他者との関わりで言いますと、現在「堀崎プロジェクト」に取り組まれていますね。

「堀崎プロジェクト」は、法制度による支援を受けることができない子を地域のネットワーク・力で支える仕組みを目指すものです。
学校教育は、すべての子どもを対象にしたユニバーサルなものです。一方で福祉分野の支援を受ける場合は、高齢・貧困・障がいの3つのジャンルのうち、貧困と障がいは自分で申請しないといけません。つまり、教育はユニバーサルで、福祉はターゲット主義という大きな違いがあるのです。子どもの相対的貧困率は13.5%で約300万人います。そのうち、生活保護で教育扶助を受けている小中高生は、約30万人です。「子どもが学ぶ」という点においては30万人しか直接支援できておらず、今の法制度では残りの子どもたちを全部落としている「ケアできない社会」になっています。
そこで取り組んでいるのが、「堀崎プロジェクト」です。行政や企業、学校、NPO、自治会、社協など全部入れてネットワークをつくって、地域が困難を抱えた子どもたちに向き合うシステムを構築していこうと色々と試しながら動いています。

私たちの強みは、現場と施設を持っていることです。ここを上手く回転させれば、たくさんの人が集まってきます。そのためには、人々と子どもたちが来やすい仕組みづくりが必要です。幸い、ここには居場所学習支援や就労支援、畑、スポーツ施設があり、アートもやるので、色々な興味関心を持った人が集まりやすいと思います。今年10月から、施設内に「Commons Cafe」もオープンしました。(※)。私たちの活動は、地域の方々と協働で取り組むことために、誰もが入ってきやすい場所をつくり、そこから地域のニーズを発見したり、私たちの活動を知って頂くきっかけづくりにつなげていればと思います。カフェの収益は、子ども支援の活動に役立てさせていただきます。

私たちは、今、「堀崎プロジェクト」のような社会モデルづくりを目指しています。すぐに同じことを実施するのは難しいと思いますが、県内のNPOや社協にプロジェクトの内容を伝え、他の地域や全国に広げていけるよう、努力していきます。

↓さいたまユースサポートネットの目指す地域モデル「堀崎プロジェクト」

地域コーディネーターの関係図

↓今年10月20日にグランドオープンした地域のみんなの居場所「Commons Cafe」

カフェ入口の前に開店祝いのお花が並んでいる

HP「Commons Cafe(コモンズカフェ)」(別ウィンドウで表示します)

―最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

私たちが活動をする上で、とても重要だと思っているのは、「地域との協働」です。地域の皆さま、住民の皆さま、行政、企業、他の支援機関とネットワークをつくりながら、一人の若者も取り残さない、そういう社会をめざす、これが私たちの目標です。

これから、地域との協働で子ども・若者を支える活動のモデルづくりをしていきたいと考えています。ぜひ、イベントなどを通して私たちの活動の輪にご参加いただけると嬉しいです。

団体HP(別ウィンドウで表示します)

団体Facebookページ(別ウィンドウで表示します)