コンテンツにジャンプ
サイト内検索
トップページ > 活動レポート > 共助社会づくり課による取材 > 令和3年度 地域つながりレポート > #1 NPO法人クラブしっきーず(志木市)「3つのKYOSOでまちづくり」

#1 NPO法人クラブしっきーず(志木市)「3つのKYOSOでまちづくり」

志木市を拠点に「総合型地域スポーツクラブ」(※)活動に取り組む「NPO法人クラブしっきーず」(正式名称:特定非営利活動法人志木総合型地域スポーツ・レクリエーションクラブ)。スポーツを通して「交流のきっかけづくり」「地域での人間関係づくり」「誰もが健康でいられる地域社会づくり」をテーマに活動されています。

今までは常設施設での活動でしたが、コロナ禍においては必要としている人への支援が届かないと判断し、今年6月から曜日ごとに活動場所を変える巡回型に変更。今回は、活動に至った経緯や現在の課題、巡回型への移行理由についてお話を伺いました。インタビューに答えてくださったのは、理事長の増田ますだ三枝子みえこさんと、クラブマネージャーの増田ますだこうさん、理事の岡島おかじま貴弘たかひろさんです。

埼玉県HP「総合型地域スポーツクラブ」

↓クラブしっきーずのメンバーとプログラム参加者

体育館内で、クラブしっきーずの旗を手に持った増田理事長を参加者が囲んでいる

(取材年月:令和3年8月)

"地域に目を向ける視点を大事に"

―本日は、活動の体験もさせていただき大変楽しい時間を過ごすことが出来ました。今日のような体を動かす活動を行う時に、大切にしていることはありますか?

私たちの活動は、地域の人の自主運営で多世代が色んなスポーツ種目を行う「総合型地域スポーツクラブ」です。単に体を動かすだけではなく、チーム戦での競争も入れながら多世代が一緒に体を動かしています。
そこで競技をやる時は、チーム分けに気をつけています。それで競って負けた時には、「負けました」と必ず言ってもらうことです。負けを認めて相手を称えるということをしていかないと「互助」にはなりません。中にはプライドが邪魔して「負けました」と言えない子もいるけど、年下の子に「ゲームなんだからさあ」と言われちゃうんです(笑)。
参加者は多世代なので、子どもとシニアさんが一緒になって活動を楽しみます。シニアさんたちにとっては、子どもたちとコミュニケーションが取れる機会はお金を出してでも得たい経験なんです。コロナ禍で気落ちしていたシニアさんたちを見ますと、私たちの活動に参加してから、まるで映画『ベンジャミンバトン』みたいに若返ってきましたね(笑)。

―そのコロナ禍をきっかけに、事業の一部で常設型(「しっきーずステーション」)から巡回常設型へと活動場所の変更をしたそうですが、その理由と切り替えて良かった点があれば教えてください。

私たちの活動を必要としている人がいるのに「やらない」という選択肢はありませんでした。地域には子どもや健康な高齢者、要支援・要介護の人たちなど多様なバックグラウンドを持った人たちがいます。巡回型に切り替えることで、そういった人たちが利用しやすい環境をつくることができます。「誰でも来ていいよ」という意味を込めて巡回型に切り替えました。

自分たちが良ければいいのではなくて、私たちは地域に目を向ける視点を大事にしています。コロナによって、自治会館や集会所の利用者が減少して町内会が打撃を受けていました。そこで活用目的を説明して、その会場費を町内会に還元するために巡回型への切り替えを決めました。

巡回型にして良かった点は、曜日ごとに活動場所が変わるので新たな参加者も増えてきたことです。

―コロナ禍をきっかけに気づいた点はありましたか?

地元のお寺「宝幢寺ほうどうじ」さんの存在の大きさです。宝幢寺さんは、「良いことをやっているのだから大変な時はどうぞ自由にお使いください」と仰ってくれます。

これは普段からのお付き合いがあってこそです。境内のお掃除を買って出るなどして、お互い助け合うことを大切にしています。

↓月2回、小学校体育館で様々なトレーニングを行い汗を流す

手前の平均台の上を走る男の子と、奥でコーンバーの下をくぐっている大人たち

↓2人でボールを支えながら競争するペアボールリレー

4人のシニア女性が二人一組で、片手でボールを押さえながらゴールまで走って競っている

↓火曜日の活動場所「宝幢寺」でパラスポーツの「ピンポンバレー」

卓球台とピンポン玉を使って、筒を両手に持った男の子と増田理事長が対決している様子

↓金曜日の活動場所「クラブ中野」でストラックアウト

クラブ中野の前で、四角い的の中に9つの数字が書かれた四角い的をめがけてフリスビーを投げる男の子

"太い幹のところはブレずに、枝葉はいつでもリニューアルしていく"

―現在抱えている課題や悩みは何かありますか?

運営を担っている人たちの高齢化です。

ただ私たちは組織の新陳代謝を大事にしつつ多世代で活動しているので、課題ではあるけどあまり表面化していません。愚痴を言って課題から目を背けるよりも、私たちは「じゃあどうするのか」と言って動き続けるようにしています。上手く軌道修正しながら動き続けていれば、それは課題になりません。

―具体的にどのような対策を講じていますか?

徐々に次世代へバトンタッチをしています。例えば、会計担当のシニアさんなら若い会員と一緒にやってもらったり、チラシ貼りならシニアさんと小学生で一緒に行きつつ街の探索をしてもらったりしています。世代交代と言うと硬いですが、「いつでも組織としての新陳代謝をし続ける」ことを念頭におくようにしています。固定メンバーで集まるのではなく、私たちはその街に住んでいる人たちとご一緒することがベースなので、いつでも誰でも参加できるように門戸を開き続けるようにしています。太い幹のところはブレずに、枝葉はいつでもリニューアルしていく。いつでも「今」をみつつ、ただ「幹」のところはブレずにやっていこうとみんなでいつも確認し合っています。

活動の上では、世代間同士で異なる文化に触れ合うことが大切になってきます。世代間でカルチャーショックを受けることもありますが、お互いにそれを受け入れていかないといけません。子どもの参加者で言えば、シニアさんの参加者が積極的に動いてみせることによって、「ああいう風にやるんだ」「自分たちがやらなくちゃ」と考える心が養われて、新しく来た子どもでも自発的に動けるようになっていくのです。

↓水曜日の活動場所「コーポカシワ(団体事務所)」で宿題をする小学生

庭に机と椅子を出して宿題をしている男子小学生二人

↓コーポカシワでこどもボランティアが「しっきーずニュース」の配布先の確認作業をしている様子

机の上のシートを指差しながら増田理事長が男の子に話をしている

↓「しっきーずニュース」を配布しにいく小学生たち

小学校前の道路をクラブしっきーずの小旗とチラシを持って歩く小学生の男の子3人

↓木曜日の活動場所「武道館」で志木郷土かるた

畳の上でかるた遊びをしている

↓行屋稲荷で子どもの作った遊び道具で交流

お籠り堂に机を置いて、その周りで男の子から説明を聞いている大人たち

"「互助」は、目の前で転んで泣いている子どもを見て「大丈夫?」と声をかけられる関係性のこと"

―団体として大切にしていることは何ですか?

「自助・共助・公助」と言われますけど、私たちがここで意識しているのはもっと顔の見える「互助」なんです。私たちが「共助」という言葉を使っている時は、介護保険や医療保険などの「仕組み」のことです。お金をいったん税金や保険料として払うとその大きな仕組みの中に入ってしまい、分かりづらくなります。
「互助」は、もっと身近なところで、目の前で転んで泣いている子どもを見て「大丈夫?」と声をかけられる関係性のことを指しているんです。
日頃から、私たちのような地域活動に顔を出してると互いに顔見知りになって助け合える関係性になっていきます。子どもたちが一緒に活動に参加した大人を町で見かけると、子どもたちから「〇〇さん」と声をかけるんです。それが出来るのは、私たちの活動姿勢が役職や立場に関係なく「対等」に接しているからだと思います。

―今チャレンジしていることはありますか?

クラウドファンディングや離れたところへの支援はたくさん集まりますが、同じ町内・同じマンション内での活動は避ける方が多いです。私たちは、そこにチャレンジしています。

「互助」の延長線上には、有事の際の支え合いがあります。例えば、活動中に一人の子どもが暇そうにしていたら「〇〇さん誘っておいで」と声をかけると、一人でシニアさんを迎えに行って一緒に来て遊んだりしてます。そういったことの積み重ねが、有事の際にもつながってくると思うのです。小さい頃から「互助」の関係性を身に着けておけば、中学・高校に身体的なアドバンテージが上がってからは、いざという時に近隣のシニアさんを助けに行くことが出来るようになります。だから、彼らに「いざという時はリヤカーであのおばあちゃんを乗せて引っ張ってくるんだよ」と言うと「はい!わかりました!」と返事が返ってきます。こういった丁寧な対応が出来るのは、私たちが小さい組織だからです。

―最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

クラブしっきーずは、スポーツに始まりスポーツで終わらない、多種多様な点が特色です。「あったらいいな」をカタチにしていったら25を超えるプログラムになりました。

クラブ運営やプログラム企画は、生活圏域を意識して、コンパクトシティである志木のまちに暮らす人たちと共に創っています(共創)。

そして、スポーツレクリエーションをコミュニケーションツールに、集う人たちでチームを組み、競い合います(競争)。そこから、自然とチームワークや笑顔が生まれます。

さらに、音楽で"ピアノコンチェルト"といえば独奏楽器(ピアノ)と管弦楽が互いに対等な立場に立って音色を響かせ合い、より美しい楽曲を奏でるように、ひとも互いの違いを認めつつ、互いに生かされる関係を紡ぐことをめざしています(協奏)。

3つのKYOSOを大切に、顔見知りを増やす「お互いさま」のまちづくり。医療や介護保険などの「共助」は不可欠ですが、私たちが日々コツコツ積み上げているのは、近くて小さなコミュニティの「互助」です。

今までも、そして、これからも、()だんの ()らしに ()っきーず。

コバトンびんHP

団体HP(別ウィンドウで表示します)

団体Facebookページ(別ウィンドウで表示します)