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秩父の環境を考える会

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NTTコミュニケーションズ(株)と県立秩父農工科学高等学校と協働して、

 秩父ミューズパークの裏側の休耕田で棚田再生活動を行っている

 

 

棚田の田植え

 

 

棚田の収穫祭で餅つきを楽しむ

 「秩父の環境を考える会」は動物部、植物部、地球部、生活部、歴史部5つの研究部と3つのプロジェクトチーム里山再生、荒川再生、森林再生に分かれている。 

 1994年に設立、2003年に法人の認証を受けた老舗の会ではあるが、秩父地域全体の自然再生と地域振興を考え活動している。

 

企業と協働 里山再生 棚田も雑木林も再生させて憩いの場に

 里山再生プロジェクトは、NTTコミュニケーションズ㈱と県立秩父農工科学高等学校と協働して、秩父ミューズパークの裏側にある休耕田で棚田再生活動を行っている。棚田の付近には、絶滅危惧種希少生物のオオコオイムシが棲み、植物では、ユリ科の多年草で小さな白い花を咲かせるのステゴビル(捨小蒜)などもあり保護や増殖活動も急がなくてはならない。NTTコミュニケーションズ㈱の社員70~80名は、年7~8回来ている。田起し、田植、草取りはもちろん、かかし作りも行い、秋の稲刈り、収穫祭に向けて活動している。棚田の一部では自然農法で古代米も植栽している。

 「特に企業の人たちは東京の人が多いので、秩父の地の物を食べてもらいたいと思いまして、毎回地元料理を手作りしています」と会長の黒澤與四郎さんは語る。

 このほかにも2008年の秋から秩父ミューズパークの元ゴルフ場を5年かけて「森の学園 昆虫の森」に作り変えている。雑木林を再生させ、蝶類や甲虫類などの生態観察や野鳥や小動物など、里山で生きる生き物との出会いを多くし、親子、家族、友人たちとの憩いの場所にしたいと考えた。

 深さ70㎝まで掘り起こし、砂を取り除き、土を入れて、NTTコミュニケーションズ㈱の皆さんと一緒に三つ葉ツツジ、えのき、山椒、山つつじ、くぬぎなどの樹木を植えている。

 

漁協と魚増殖 荒川再生 荒川を魚だらけにしたい…昔の姿に戻したい

 

 荒川の再生で少なくなった魚を戻す…ヤマメやチチブイワナの放流、荒川の水質・水生昆虫・藻類の調査などを行い、荒川を魚だらけにして昭和30、40年代の姿に戻したいと会は願っている。そのための活動として、川の石を洗い、畳6畳ほどの大きさの産卵床(マヤ床)を作ってウグイを増やしている。また、岸辺から3m以内の浅瀬の土砂に埋まっている石を起こして浮石にしている。浮石が多くなった浅瀬には、同じ水量でもかくはん効果で酸素が多く取り込まれ、石の上の藻が増え、水生昆虫も順調に成長する。稚魚がそれを食べて川魚が増えていくという。このために地区の漁協組合とも話し合い、協力関係を築いている。荒川の支流、浦山川で漁協組合とともに上流の釣り場で親子つり大会を開催したり、魚のえさになる水生昆虫を見つけたり、釣った魚の魚拓を作って記念に子どもたちに持ち帰ってもらうというようなこともしている。

 

森林管理事務所と樹木保護森林再生

 森林再生については、原生林の大木の幹の皮を鹿が食べてしまうという鳥獣被害が多くなったことから取り上げた。2008年から奥秩父山中での樹木保護ネット設置に取り組み、まだ被害にあっていない樹木にネットを巻いて鹿の食害から守っている。雲取山の東京側は保護ネットがあり、被害が少ないが、埼玉県側は保護ネットがないため食害が酷いそうで、そこで埼玉森林管理事務所と協働で保護ネット設置を行っている。2000m級の山に保護ネットを持って朝5時から山に入るという強行軍だが、会から23名、森林管理事務所の人も含めて30数名で行っている。このほかにも浦山川の上流の山に、地元の中学生とともに植栽をしている。

 

山里自然館で地域振興 山里の生活を知ってもらう一つの拠点に

 2009年から新たに秩父市から委託を受けたのが、山里自然館の管理である。武州日野駅の先、荒川橋手前左を入った道の駅「あらかわ」にある元の「あらかわビジターセンター」を模様替えして始めた。この会の活動の紹介や林業、農業を含めた山里の生活を知ってもらう一つの拠点にしたいと考えているそうだ。近くにはホタルが群舞する場所もある。姉妹都市を結んでいる東京都荒川区で広報をしてもらい、周辺のウォーキング、夜間昆虫採集、天体観測などを行っている。夜間になるイベントでは、県外から来た人は、周辺の民宿に宿泊し、地域振興の一助にもなっているという。冬には、アニマルトラッキングで林道を通る動物を見てもらおうと計画しているそうだ。

 

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定期的に発行されている「秩父環境を考える会」の出版物。自然観察や調査の報告書でもある。