コンテンツにジャンプ
サイト内検索
トップページ > 活動レポート > 共助社会づくり課による取材 > 特定非営利活動法人 フードバンク埼玉

特定非営利活動法人 フードバンク埼玉



 「食品ロス」とは、まだ食べられるにも関わらず廃棄される食べ物のこと。日本では、年間約646万トンの食品ロスが発生しています(平成27年度)。その一方で、貧困世帯や児童養護施設など、沢山の人や場所が、食べ物を必要としています。これらの問題への対応が求められている中、注目を集めているのが「フードバンク」の活動です。
 フードバンクでは、包装の印字ミスや破損、賞味期限が迫っている、などの様々な理由で廃棄されてしまう"まだ食べられる"食品を集め、食べ物に困っている人や施設などに提供しています。
 今回は、フードバンクの活動に取り組むさいたま市のNPO法人フードバンク埼玉の理事・永田さんに、お話を伺いました。

  • 共助社会づくり課

    「フードバンクとして活動を始めたきっかけを教えてください。」

  • フードバンク埼玉 永田さん

    「NPO法人セカンドハーベスト・ジャパン(日本初のフードバンク)からフードバンクの活動を紹介されたことをきっかけに、労働者のための福祉活動に取り組む一般社団法人・埼玉県労働者福祉協議会(以下「労福協」)の中で研究会を発足しました。
     研究会にはセカンドハーベスト・ジャパンや企業の方を講師としてお呼びし、勉強会やフォーラムの開催などを通してフードバンクに対する理解を深め、その必要性を認識しました。しかし、実際に活動するとなると、「誰がやるのか」「場所はどうするのか」「資金はどうするのか」といった様々な課題があり、フードバンクの運用開始にまでは至りませんでした。
     活動に踏み切る契機となったのが、2011年の東日本大震災です。労福協はセカンドハーベスト・ジャパンからの依頼を受けて、提供された食品を避難所で配る活動を行いました。その後、セカンドハーベスト・ジャパンとの連携や、小売店から提供を受けた被災者支援のための食品配布の活動に取り組む中で、「食品の配布の段階で協力する」のみではなく、労福協自身が食品を集め、必要とする人・場所へと届ける"フードバンク"として機能できるのではないか、との考えに至り、フードバンクとしての活動を開始しました。」

  • 共助社会づくり課
    「昨年9月にNPO法人としての認証を受けるまでは任意団体として活動されていました。NPO法人化するに至ったきっかけについて教えてください。」

  • 永田さん
    「2015年に生活困窮者自立支援法が制定されたことがきっかけです。生活困窮者に対する窓口が、埼玉県内に多数設置されることとなり、社会福祉協議会、さいたま市、川口市、川越市などと提携して食品を提供することになりました。労福協単体で予算・人手の両面で担うことが難しくなり、まずフードバンク埼玉事務局を設立しました。
     そして、労福協内の運営事務局として活動を続ける中で、より幅広く周知を行い、寄附を得るために、NPO法人化するに至りました。」

  • 共助社会づくり課
    「フードバンク埼玉では、どのようにして食品を集めているのですか。」

  • 永田さん

    「主に個人や、企業からの寄附で食品を集めています。個人の寄附ですと、フードバンク埼玉の事務所に直接持ってきていただくか、フードドライブでご提供いただくことが多いです。
     フードドライブとは、家庭で余ってしまった食品を回収する活動です。フードバンク埼玉ではスーパーマーケットなどの企業と提携して、店舗にフードドライブのボックスを置かせてもらい、フードバンク埼玉のスタッフが回収する、店舗からお送りいただく、などして食品を集めています。
     事務所に直接持ってきていただく場合はお米、フードドライブでは春雨などの乾物の提供が多いです。寄附していただいた食品は、フードバンク埼玉で賞味期限・消費期限などの期限を確認の上で分別し、保管しています。
     企業からの寄附は、スーパーマーケットなどの小売店や食品メーカー、住宅メーカーなどの多岐に渡ります。寄附していただく企業は年々増えつつあり、食品を無駄にしない範囲で可能な限りの寄附を受け付ける、フードバンク埼玉の活動が企業の間でも浸透してきた結果ではないか、と考えています。
     また、ある企業からは2016年ごろに防災備蓄用食料の寄附を受けました。2011年の東日本大震災の影響で防災備蓄品を購入するも、防災備蓄用食料の期限が迫り、提供先としてフードバンク埼玉を選んだ、とのことでした。この事例以外にも、フードバンク埼玉では防災備蓄用食料の受け入れが多いです。」

  • 共助社会づくり課

    「フードドライブについて、詳しく教えていただけますか。」

  • 永田さん

    「先ほど申し上げた通り、フードバンク埼玉の特徴として、防災備蓄食料品の受け入れが多いことが挙げられます。寄附していただけることはとても嬉しいことですが、食べる方の気持ちになって考えると、防災備蓄用食料は、味気ない印象を受けます。そこで、梅干しやふりかけ、といった食事に彩りを添えるような食品の寄附を増やしたいと考え、個人の方からの寄附を受け入れるフードドライブを始めました。
     現在フードドライブのボックスは、県内のコーププラザ、スーパーダイエーの県内8店舗、カスミの県内10店舗に設置していただいています。」

  • 共助社会づくり課
    「集まった食品の提供先について教えてください。」

  • 永田さん

    「主に社会福祉施設や学習支援施設、こども食堂などに提供しています。
     なぜ学習支援施設に提供するのか、と思われる方も多いと思いますが、多くの学習支援施設では、子どもたちに食事が提供されています。というのも、放課後17時頃から2時間近く勉強時間を設けていると、お腹が空いたり、集中力が低下してしまうからです。短い休憩時間できちんとした食事をとることは難しいですが、防災備蓄用食料のサバイバルクッキーなどであれば、すぐに食べることができます。学習支援施設の方からも、食事の時間を設けたことで勉強の効率が上がった、とのお話をよく耳にします。
     フードバンク埼玉は、県内約30か所のこども食堂に対して食品を提供しています。
     また、フードバンク埼玉では食品だけではなく、紙オムツなどの物品を、乳児院やシングルマザー、県社協に毎月提供しています。」

  • 共助社会づくり課

    「食品を提供するにあたって、気をつけていることなどはありますか。」

  • 永田さん

    「気を付けていることとしては、まず、相手が食品に何を求めているのか、どんなことに利用するのか、ということです。たとえば、アルファ米などの食品は、調理をせずにすぐ食べることができるので、その場で調理した温かい食事を提供する子ども食堂にはなじみません。
     また、フードバンク埼玉では、施設や団体などを介さない、個人への直接の食品の提供はしないと決めています。食品を必要とする方はそれぞれ様々な事情を抱えているかと思いますが、食品を提供するだけでは根本的な解決になりません。まずは行政や支援団体などに相談してもらい、食品に限らず必要な支援を受けていただくことが、自立への第一歩だと考えています。」
    フードバンク埼玉 倉庫の様子フードバンク内倉庫

  • 共助社会づくり課

    「今後の活動として、検討していることはありますか。」

  • 永田さん
    「現在苦労していることとして、「人材」と「資金」の不足の2点があります。これらの解決のために、様々な対応策を検討しています。
     まず人材については、現在ボランティアの募集に力を入れています。今年度から毎週火・木曜日をボランティアの日に設定し、主に保管している食品の整理などに御協力いただいています。
     資金については、当法人のホームページ内に寄附を募る仕組みの設定を検討しています。また、これまでは無償で協力してきましたが、法人のスタッフが講師として依頼を受ける際には、依頼料をいただく、という決まりにしたいと考えています。もちろん、食品の提供はこれからも無償で行います。
     新しい取組としては、就職困難者に対する支援という意味も込めて、有償ボランティアの採用も検討しています。トラックを運転し、フードドライブの回収を担当してもらう予定です。新たにスタッフを雇用するとなると人件費や維持費がかかるため、資金集めには一層力を入れていくつもりです。」

  • 共助社会づくり課
    「最後になりますが、他のNPO法人や読者の方に向けて一言お願いします。」

  • 永田さん
    「現在埼玉県内でフードバンクを実施しているNPO法人は2団体のみしかなく、県内全域でフードバンクを実施するには、予算面・人員面共に難しい状況です。県内に活動を行き渡らせるためには、最低でも10団体ほど、フードバンクに取り組む団体が県内に必要だと考えています。
     フードバンクは、同じ活動をする団体同士が競合する、という性質のものではないと考えます。県内各地にフードバンクに取り組む団体があり、それぞれが担当する地域で活動する。そして団体同士で情報を共有し、食品が余った際には分け合う、などといった連携をする。そんなネットワークを築いていけたらと考えていますので、ぜひ、多くの方にフードバンクの活動を始めていただきたいと思っています。」

活動レポート

  • NPOデータベース
  • NPO法人ただいま縦覧中
  • NPO法人 届出・申請
  • facebook