NPO法人救急医療の質向上協議会
特定非営利活動法人救急医療の質向上協議会(以下「CATS」)は、救急救命
士や看護師など救急医療の専門家が中心となり、健康増進及び救急医療の発展を
目指し2005年に設立された団体です。
救急医療に関する理解を深めてもらうため、AED講習や市民救命士の養成な
どの研修事業を行ったり、様々な組織との協働によって「救急フェスタ」などのイ
ベントを実施するなど、教育、啓発活動に取り組んでいます。
今回は、代表理事の池上さん、そして、旧騎西高校での健診ボランティアに協力
している松元さんにお話を伺いました。
◆旧騎西高校での一斉健診と健康相談◆
CATSは埼玉県加須保健所からの依頼により、獨協医科大学越谷病院と協働
して、5月中旬から避難者の健康管理に取り組んでいます。具体的には、毎週水
曜日の午前中に旧騎西高校を訪れ、避難してきている人の中で、特定保健指導(※)
の対象の方に対し一斉健診を実施しています。また、7月からはフォローアップ
の健康相談を中心に行っています。これまでに、延べ334名の方に保健指導を
実施しました。
(※)特定保健指導とは、平成20年4月から実施されている、40歳以上75
歳未満の方を対象とした、メタボリックシンドロームの予防・解消に重点をおい
た、生活習慣病予防のための健診・保健指導のこと。
◆生活の場に入っていくということ◆
今でも、900名近い避難者の方が生活をしている旧騎西高校。CATSスタ
ッフは全員、救急救命や看護の有資格者であり、普段は病院等の医療施設におい
て患者さんの対応をしていますが、今回の旧騎西高校での活動においては、普段
の病院での対応とは違う配慮の必要性を感じたそうです。
松元さんはおっしゃいます。「病院は患者さんが自らやってくる場所ですが、今
回は私たち医療従事者が、彼らの生活の場に入っています。医療行為であっても
押しつけになるような活動になってはならないし、時間も彼らの生活に合わせる
必要があります。この避難所には、病院とは違い重篤な病に罹患されている方は
いないものの、未病(半健康で病気が進行しつつある状態)の方は数多くいると
いうことが健診によって明らかになりました。だからこそ、「病気を起こしてから
の治療」ではなく「病気を起こさないようにする治療」を心がけています」
◆元気に福島へ戻れるように・・・◆
いつ終わるともわからない避難所での生活ですが、避難している双葉町の皆さ
んは思っていたよりも明るく、お互いを支え合い、助け合って生活されており、
孤立しているような方はほとんど見受けられないそうです。災害時においても個
人を独りにしない、みんなで支え合うことのできるコミュニティが生まれている
そうです。
一方、慣れない避難所での生活に体調を崩す方も多く、何人かの方は病院での
生活を余儀なくされています。残念ながら亡くなられた方もいるそうです。だか
らこそ、「元気に福島へ戻れるように」と池上さんは語ります。一人ひとりが自立
して健康を管理し、病気に対しての予防ができるように、きめ細やかな健康指導
はこれからも欠かすことができません。そして、避難者の方々が元の生活に戻れ
るその日まで、健康維持への取り組みは続きます。
◇訪問を終えて◇
今回、加須市にある旧騎西高校に直接伺って取材をさせていただきました。さ
いたまスーパーアリーナから移動してきた当時は、外部からの取材やボランティ
アが殺到し、大変な混乱状態だったそうですが、4ヶ月近く経った現在は、落ち
着いた印象を受けました。
暑さが続く中、避難所での生活は、一層大変になることが予想されます。避難
者の皆さんが一日も早く元の生活に戻れるように、早急な原発事故対応が望まれ
ます。
NPO法人 救急医療の質向上協議会ホームページ
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旧騎西高校での取り組み:東日本大震災の被災者の健康を守り重症化を防ぐ為の
緊急一斉健診プロジェクト
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(平成23年7月取材)