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特定非営利活動法人中国帰国者総合互助ネットワーク

 厚生労働省が発表している平成27年度「中国残留邦人等実態調査結果報告書」によると、終戦時の混乱で中国や樺太に取り残され、日本への帰国が長らく叶わなかった方が、全国に約3,700人いると言われています。
 そのうち半数以上が70代を過ぎ、介護が必要になる年齢に差し掛かっています。言葉の問題から施設に入居しても、同居者に馴染めないケースが増えつつあるようです。
 そこで今回は中国残留邦人やその家族に対し、介護事業を実施している特定非営利活動法人中国帰国者総合互助ネットワーク(以下「互助ネットワーク」)の理事長の福間さんと副理事長の上條さんにお話を伺ってきました。

共助社会づくり課
 「活動を始められたきっかけを教えてください。」

互助ネットワーク 上條さん
 「私の父が中国残留邦人の1世で、私は中国で生まれて17歳の時に来日しました。日本に来てからは定時制の高校に通い、卒業後は介護の仕事に10年近く携わっていました。
 80歳近くなった父がデイサービスで日本人のヘルパーさんに体調が悪くても上手く伝えることができず、不便な思いをしていることを知りました。
 父のように中国に取り残され、辛い経験をしてきた人たちに『少しでも楽しい思いをさせてあげたい』『最期に幸せな時間を提供したい』と思い、残留邦人向けの介護事業を始めようと決めました。」

共助社会づくり課
「現在の活動について教えてください」

福間さん
「『虹』という訪問介護と『一笑苑』というデイサービスを運営しています。
 法人を設立して、最初に取り組んだ事業が訪問介護で、埼玉県では所沢や新座など、東京では小平や練馬まで出向いています。
 利用者さんは通常のデイサービスに馴染めず、当施設を選んでくれる方がほとんどです。
 ただ、訪問介護では、利用される一人一人に対しケアできますが、利用者さんにとって外部の人との接点を持つことがこれだけでは不十分です。
 そのような利用者さんの気持ちに応えるためデイサービスを始めました。同じ境遇で育ってきた方と一緒に過ごせる、最期まで笑っていられるような場所にしたいという願いを込めて『一笑苑』という名前を付けました。
 利用される方は上條さんのお父さんも含め10名ほどおり、週に3回デイサービスを実施しています。中国語で歌を歌ったり、体操をしたりと楽しく過ごしています。」

梅並木の下での集合写真 カフェの前での集合写真

梅並木の下での集合写真          カフェの前での集合写真

共助社会づくり課
 「上條さんのお父様はどのような幼少期を過ごされたのですか」

上條さん
 「父は7歳のときに中国に取り残され、中国人の養父に育てられました。
 当時7歳だったので日本語は話すことができたと思いますが、中国での生活に馴染むために必死で中国語を覚えたそうです。
 その一方、日本語を話すと、日本人だとばれてしまうから、日本語を忘れるよう必死に努力をしたと言っています。
 ですが、いつか日本に帰ったときに両親に会えるように自分の名前だけは忘れないと心に強く決めていたようです。」

共助社会づくり課
 「福間さんが残留邦人に対する支援を始めたきっかけについて教えてください。」

福間さん
 「仕事一筋で50歳近くまで過ごしてきましたが、仕事以外に社会の役に立つことをしたいと思ったことがきっかけです。
 住んでいる所沢に中国残留邦人を支援する国の機関があることを思い出し、残留邦人を支援する「友の会」という市民活動団体に入りました。
 国では帰国者に対し6か月間(昔は4か月間の時期もありました)の日本語教育を実施しています。その教育をサポートするボランティアとして帰国者を支援していました。ですが、年に数回しか帰国者と接点がなく、6か月(もしくは4か月)の教育が終了した、その後のフォローはできていない状況でした。
 そこで、フォローを実施する市民活動団体がちょうどできていたので、そこに入り、上條さんと知り合いNPO法人を立ち上げました。」

共助社会づくり課
 「法人として活動を進める中でどのような御苦労がありますか」

上條さん
 「活動資金をどう捻出するかは常日頃考えています。法人を設立してから介護事業が運営できなくなる危機が少なくとも2回はありました。
 そういったときは、新聞で一笑苑の記事を見た方が寄附してくださるなど皆さまの協力のおかげで危機を乗り越えることができました。
 当初は資金繰りに困っていることを他人に言うのをためらいがちでしたが、今では笑顔で『資金に困っています』と胸を張って言えるようになりました。
 色々な方に私たちの取組を知っていただき、共感していただくことが資金調達の第一歩であると思っていますので、新聞などの取材はできる限りお受けしています。
 もし、私たちの活動に関心を抱いていただけたのであれば、是非御連絡ください。」

一笑苑のボーリングの様子 仲秋のお祝いの様子

 一笑苑のボーリングの様子         仲秋のお祝いの様子

共助社会づくり課
 「今後どのように活動を展開していきたいですか」

福間さん
 「デイサービスの運営を続けていきたいと考えています。一笑苑のような小規模のデイサービスは運営が難しいと言われており、東京商工リサーチの調査によると平成30年の一年間で『老人福祉・介護事業』は106件の倒産が確認され、従業員5人未満の事業者が全体の約60%を占めるそうです。
 運営を続けることは容易ではありませんが、最期まで笑って過ごせる一笑苑を残していきたいと思います。」

【連絡先】
特定非営利活動法人中国帰国者総合互助ネットワーク(一笑苑)
電話番号:04-2944-8181

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