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特定非営利活動法人 面会交流支援 こどものおうち

 面会交流とは、両親の別居や離婚により離れて暮らすお父さんやお母さんと子供が、定期的、継続的に会って遊んだり話をしたりして交流することです。子供にとって離れて暮らす親と会うのは大切なことですが、親同士の事情でなかなか実現しないことも少なくありません。

 こうした面会交流の相談や付き添いを行う「特定非営利活動法人 面会交流支援 こどものおうち(以下『NPO法人 こどものおうち』と記述します。)」の代表理事 堤康子さんにお話を伺いました。(『NPO法人 こどものおうち』に対して今年度、正和工業(株)子育て応援事業として、NPO基金から助成しています。)

民家の門の前の看板の画像こどものおうちの看板

  • 共助社会づくり課
    「活動のきっかけを教えてください。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    担当する離婚調停では、子供と面会をさせてあげたくても両親のいがみ合いが激しく、
    当事者同士では解決できないものも見受けます。
    仲介してあげれば面会することができるのに、と第三者の手助けが必要だと痛感していました。
    いろいろと方法を模索する中で、面会交流支援の中心的な存在である公益社団法人家庭問題情報センター(Family Problems Information Center:FPIC)のスタッフ向け講習会に参加する機会があり、
    まずは自発的にスキルを身につけできることから支援を始めようということになりました。
    これは、10年近く有志で勉強会を行ってきたという下地があったからこそです。」

  • 共助社会づくり課
    「県内では、面会交流を組織的に支援している団体は他にないようですね。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「面会交流支援団体を立ち上げるうえでは熊谷という地域の問題もありました。
    都内や神奈川県には面会交流支援団体がありますが、物理的に遠く、収入事情も異なります。
    小さな子供たちが都内まで通うのも、また多額の費用も大きな負担でしょう。
    そのような中、志を同じくする故笠間代表理事が、自宅の一角を提供してもいいと申し出てくれました。
    私たちは幸運にも仲間と場所という条件が揃い、活動を実現することができました。
    勉強会をしながら、動きやすい形を整えようと思いNPO法人設立の検討をしました。」

  • 共助社会づくり課
    「面会交流の必要性というのは一般にまだ浸透していないように感じます。
     子どもにとってどんなメリットがあるのでしょうか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「日本では面会交流の認知が遅れており、広まっていませんでした。
    そもそも両親から愛されて育つ権利が子どもにはあり、国連の『児童の権利に関する条約』第9 条においても、親と離れて暮らす子が定期的に親との個人的な交流や接触を維持する権利を尊重しなければならないとされています。
     私たちは面会交流が子供の健全な育成、円満な人格形成にはなくてはならないという信念があってやっています。もちろん例外的に、会わないほうがいいケースもありますが、会えないことで、片方の親から愛されていないと思って育ったり、同居する親が別居する親を否定するために子供が自分自身の半分を否定することに繋がるのはよくありません。
     加えて、平成23年に民法第766条が改正され、父母が協議上の離婚をするときには面会交流と養育費の分担の取り決めの義務が明示されたことで、面会交流支援の社会的な要請も高まってきています。」

  • 共助社会づくり課
    「子供は親に会えないことをどう感じているのでしょうか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「子供は同居する親の心を汲み取って行動します。
    会いにいきたがらない子供は、本当に会いたくないのではないかもしれない。
    夫婦の問題と子供の(面会交流の)問題を切り離して、理性的に考えてもらえるといいのですが。
    父母のバトルの狭間にいる子供は大変難しいです。子供は両親の不仲を1~2歳ごろからわかるといいます。
     最近は、親の離婚を経験した子供が発表する形のシンポジウムも増えてきました。
    成長した後に『親に捨てられた』、『親と会わせてもらえなかった』、『自分が想像していたような人ではなかった』、などと話す人もいれば、離れていた親と会って自分の半分を取り戻すことができたという人もいました。
    親が考えているようには子供は考えていないもので、言葉では会いたくないと言っていても、
    やがて成長すれば小さい頃のことは覚えていなかったりして、当時まで遡って恨まれることすらあります。」

  • 共助社会づくり課
    「『こどものおうち』、という法人名からは親子に自宅のように過ごしてほしいという気持ちを感じますが、
    面会の親子にとってどのような場所になっていますか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「『こどものおうち』の一番の特徴は、アットホームな、家庭的な雰囲気です。
    子供と父親、母親がリラックスできる場所。私たちは何より安心・安全を心がけていますし、それが第一優先事項です。
    一般の住居を使用することで、子供に抵抗がない空間づくりができ、面会がうまくいく要因ともなっています。庭が見渡せるオープンで明るい部屋が和やかな様子を作っているのでしょう。」

民家の庭の門扉の画像こどものおうちの入り口

部屋の一角に子供のおもちゃがたくさんある画像 部屋には子供がリラックスできるおもちゃも。

  • 共助社会づくり課
    「こちらでの一般的な面会について教えてください。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「まず、同居している親、お母さんが多いのですが、子供を連れてきて私たちスタッフに預けてもらい、別な場所に行っていただきます。その後、別居している親が来て子供と一緒に時間を過ごします。
    時間が来たらバイバイして、同居の親に戻ってきてもらい子供を引き渡します。
    その間、私たちはスタッフ2名で見守っています。
    小さい子供(2、3歳)は連れ去りの心配があります。
    いろいろな場面を想定し、2名の付き添いがあることで小さいお子さんの親は安心できるようです。
     『こどものおうち』で慣れてくれば、近くの公園に出かけるようなこともあります。」

  • 共助社会づくり課
    「お子さんには良い変化が生まれますか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「2年以上支援している事例ですが、初めは父親に会いたがらず、母親のそばを離れなかった子供でしたが、
    今はパパと呼ぶようになり、会えば飛びついていくように変化しました。子供の顔が、強ばったものから段々と明るい笑顔に変わっていく。その過程を私たちは見ることができます。
    そして、面会を重ねていくうちに母親が精神的に安定し、子供や父親にいい影響を与えていきます。
    父親は、子供に直接会いその様子を見て、このように育ててくれている母親に対し、素直に感謝の気持ちが出てきます。」

  • 共助社会づくり課
    「面会交流を定期的に続けていった場合、最終的には第三者の支援から卒業ということになるのでしょうか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「当団体が関わった事例は最長で2年半程度なので、そこまで進んだものは今のところありません。
     特に母親が離婚の痛手から立ち直るのには時間がかかります。
    経済的な不安・精神的な不安から生活基盤を安定させるまでには3年程度は必要ではないでしょうか。
    こうした面を乗り越え、いずれはサポートなしにできるケースも出てくると思われます。」

  • 共助社会づくり課
    「面会交流支援事業の最も難しいところは何ですか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「調整です。働いているお母さんとお父さんがお休みで、スタッフ2名が確保でき、そして場所が空いている、この3要素が揃わなければなければなりません。
    こちらの『こどものおうち』でも、お休みである土日に午前2件、午後2件の毎週4件しかできません。
    同居の親が渋るケースは、余計に調整が難しいです。」

  • 共助社会づくり課
    「法人運営で大変なことは何ですか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「スタッフの確保と運営費です。経済的に苦しい一人親家族から高額な支援料はもらえません。
    どこからもお金を取りにくいということです。ひとり親、シングルマザーの家庭では貧困に苦しむことすらあります。そこから毎月高額の費用を捻出するのは非常に厳しいです。
    対象者が限られますし、デリケートな事案なので、一般市民や企業の支援も今は難しい状況です。」

  • 共助社会づくり課
    「面会交流の重要性についても普及されていますか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「面会交流は、民法で明文化されたばかりで、社会的認知を得るため啓発していく必要があります。
    今年度は熊谷市との協働事業を実施しています。離婚届提出の際に手渡す資料に、面会交流支援のご案内を入れてもらい、また、市役所に週2回相談窓口を設置しています。これは県内では画期的なことです。
     最近では面会交流について、会わせなくては親権が取れないのではないか、
    拒否できないのではないかといった相談や様子を聞きに来る方もいらっしゃいます。」

  • 共助社会づくり課
    「主な利用者は県北部にお住いの方ですか。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「熊谷に拠点がありますが、利用している方は県北以外に県南の方も多くいらっしゃいます。
    他県の方もいらっしゃいますが場所とスタッフの問題もあり、遠くてもこちらまで来てもらう他ありません。経済的な支援などを考えると今後は基礎自治体単位で発信するだけでは難しいと思うようにもなりました。
    面会交流の重要性を普及し、面会交流を定着させたいけれど、多くの需要を掘り起こしてしまうと対応できず、
    他に紹介せざるをえないかもしれないジレンマもあります。」

  • 共助社会づくり課
    「今後の活動についてお聞かせください。」
  • NPO法人 こどものおうち 堤さん
    「地元の立正大学に働きかけて学生のボランティアとの協働を始めています。
    子供は若い人が好きです。今後もより大学との連携を深め、いずれは支援スタッフの育成につなげていきたいです。
    また、様々な事例のデータを蓄えて今後の面会交流支援に役立てていければと思っています。」

特定非営利活動法人 面会交流支援 こどものおうち ホームページ
https://kumagaya-kodomo.jimdo.com/

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