特定非営利活動法人NORDICあさか
定年退職後の第2の人生。これから何をやろうかと思いを巡らせる方がいれば、仕事以外にやるべきことが見つからない、という方まで、様々な方がいらっしゃることでしょう。
今回御紹介する特定非営利活動法人NORDICあさかの代表理事・河内さんは、長年企業に勤めあげたビジネスマンでした。しかし現在は、2本のポールを持って歩く「ノルディック・ウォーク」(※1)を普及させるべく、精力的に活動されています。
活動に至ったきっかけ、そして第2の人生で楽しく活動を継続している秘訣について、河内さんにお話を伺いました。
※1「ノルディック・ウォーク」
2本のポールをそれぞれ両手に持ち歩くウォーキング方法。
通常のウォーキングよりも運動効果が高く、体への負担も少ないことから近年注目を集めている。
【活動レポート】NORDICあさか
共助社会づくり課
活動を始めたきっかけについて、教えてください。
特定非営利活動法人NORDICあさか 代表理事 河内さん(以下河内さんと表記)
私は長年企業に勤め、仕事一筋で取り組んできました。その一方で、自分の健康面にはあまり力を入れておらず、10分間歩くだけでも億劫だと思うほどでした。
このまま定年を迎えてしまったら、と不安に思っていた時、友人に教えてもらったのが「ノルディック・ウォーク」でした。独学ながら取り組んでみたところ、なんと1か月で3キロも体重が落ちたのです。
もっとたくさん歩きたい!と意欲が沸き、一般社団法人全日本ノルディック・ウォーク連盟の公認指導員の資格も取得。しかし、近隣にノルディック・ウォークに取り組む団体がありませんでした。そこで、まずは朝霞市の「健康普及員」としてノルディック・ウォークを広げる活動を始めました。
健康普及員として活動する中で、集まった14人の仲間と2015年11月に立ち上げたのがNORDICあさかです。その後、2017年10月にNPO法人として認証を受けました。
NORDICあさかが朝霞市内の2か所、新座市内1か所で開催している会員向けのノルディック・ウォーク教室の様子。各会場で月に3回開催されており、参加者は自身のレベルに応じてコースを選び、ウォーキングに取り組む。
共助社会づくり課
普段実施されている、法人会員の皆さんが参加するノルディック・ウォーク教室の様子を拝見しました。
大勢の会員の方が、レベル別にコースを選んでウォーキングに取り組んでおり、活動内容がしっかりと体系化されている印象を受けました。
設立当初と比べると、団体の規模がかなり大きくなっているかと思いますが、これまでの活動で苦労したことはありますか。
レッスン後には大勢の参加者が一同に会し、コース毎に指導員による講評の時間。
河内さん
正直に申しますと、これまでの活動で嫌になったり、苦労したことはありません。
NORDICあさかでは、活動する中での意識付けとして、「①自分の健康②仲間の健康③NORDICあさかの発展」という3つの優先順位を掲げています。
NORDICあさかでの活動は、仕事とは違います。楽しいことが大原則であり、活動が辛くなったら辞めればいい、というスタンスで取り組んでいるから、これまでうまくやってこれたのだと思います。
共助社会づくり課
NPO法人として認証を受けたのはなぜですか。
河内さん
設立してからしばらくの間は、任意団体として活動していました。
しかし、会員数が100人を超えたことをきっかけに、一定の責任や安全確保に対応できるようにするため、法人格を取得することにしました。
NPO法人以外にも、一般社団法人として設立するという選択肢もありました。一般社団法人には、2名以上の社員で設立できるなど、様々なメリットがあります。
しかし、代表者をはじめとした少人数で責任を負うのではなく、主要メンバーみんなで責任を負って活動していきたい、という思いから、設立時に社員が10名以上必要な、NPO法人として設立することにしました。
NPO法人になってから現在に至るまで、法人の理事・監事とで、責任を分担して活動してきました。
とはいえ、各自の環境の変化などで、活動に参加することが難しくなったり、不満を抱くようになるメンバーもいます
NORDICあさかの活動は、あくまでも自分自身が楽しんで活動できることを前提としています。無理に理事・監事の職にとどめることはせず、一般の会員になってもらう、などして、柔軟に運営してきました。
共助社会づくり課
現在課題だと感じていることはありますか。
河内さん
団体の会員数は年々さらに増加しており、今のところは順調に活動しています。
その一方で、団体の規模が拡大したことで、団体の中枢メンバー間でのコミュニケーション不足を感じています。
NORDICあさかでは、団体の理事・監事、そしてノルディックウォーク教室で講師を務める「指導員」の3者を役員として、月に1度集まる「役員会」を開催しています。しかし、役員それぞれの思い抱く理想が高いために、どうしても役員同士での摩擦が生じてしまう現状があります。
役員同士が集い、より深く話し合うことで、活動への意識の持ち方など、すり合わせができる場を設ける必要がある、と考えているところです。
共助社会づくり課
ノルディック・ウォーク教室など、実際の活動状況はいかがでしょうか。
河内さん
会員向けの「ノルディック・ウォーク教室」はもちろんですが、現在特に力を入れているのは、ノルディック・ウォークを普及拡大する「元気復活プログラム」(※2)です。
健康維持に興味はあるけれど、具体的な運動手段がわからない、或いは地域に踏み出すきっかけがつかめずにいる様な高齢者をターゲットに、ノルディック・ウォークを紹介、体験して頂く出張教室を開催しています。
地域包括支援センターや不動産業者など、地域の高齢者の情報を持つ様々な主体と連携して、新たな参加者を開拓してきました。現時点で、参加者の中からNORDICあさかに入会する方や、新しくノルディック・ウォークのサークルを立ち上げる人が出てきており、一定の成果を上げています。
今年度は朝霞市の他、志木市、富士見市、吉川市で開催ですが、先日新たに和光市でUVケアのウェアを手掛ける企業の計らいで、和光市社会福祉協議会のお力も頂き、実施が決まりました。順調に進めば、和光市でも定期的にノノルディック・ウォーク教室を開催できるようになるかもしれません。
※2「元気復活プログラム」
今年度(令和元年度)埼玉県NPO基金助成事業として、県の助成を受けNORDICあさかが実施している。
元気復活プログラムの様子。ポールを持っての立ち方から始まる丁寧なレクチャーを行い、その後実際にノルディック・ウォークを体験する。
共助社会づくり課
毎年11月に主催されている、「ノルディック・ウォーク健康増進フェスタ」についてはどうですか。
河内さん
大勢の参加者を募り、毎年市内全域をノルディック・ウォークで歩く「ノルディック・ウォーク健康増進フェスタ」は、2019年11月の開催で4回目を迎えました。
従来200人ほどだった参加者は、今回で300人以上にもなりました。今年の「元気復活プログラム」で初めて体験された方など、定期的な教室への参加が厳しい方にも気軽にノルディック・ウォークを楽しんでいただけるイベントとして、今後も継続していくつもりです。
「ノルディック・ウォーク健康増進フェスタ」は2019年の開催で4回目。
朝霞市内の名所に沿って設定されたコースを、ノルディック・ウォークで歩く。
距離の異なるコースが複数設けられており、自身のレベルに応じて楽しんで歩くことができる。
共助社会づくり課
今後の活動の目標や、方向性について教えてください。
河内さん
私たちの活動の最終的な目標は、街中でノルディック・ウォークを楽しんでいる人を見かけるのが、当たり前になることです。その目標を達成する上では、必ずしもNORDICあさかがより大きな団体になる必要はないと思っています。
NORDICあさか以外にも、各地で様々なノルディック・ウォークの団体が生まれる。初心者向けのイベントや体験会実施に特化した団体として、NORDICあさかから独立した団体が活動するなど、様々な可能性があると思います。
また、現在はシニア層の参加者が目立ちますが、むしろ会社勤めなどで不健康になりがちな「現役世代」に取り組んでほしいと思っています。
シニア世代、現役世代、孫世代...と、家族が週末に街中で、ノルディック・ウォークを楽しむという文化が、各地に広がるよう、活動を続けていきます。