特定非営利活動法人木の家だいすきの会
活動レポートでは、NPOを訪問して、その活動を紹介しています。
今回は、所沢市に拠点を置き、「森に緑を、住まいに木を」を理念として、
住まい手と山(木材産地)とのネットワークによる木の家づくりの普及に
取り組む(特)木の家だいすきの会を紹介します。
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特定非営利活動法人木の家だいすきの会
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◆NPO紹介◆
木の家だいすきの会(所沢市)は、木を使った家や施設の普及に取り組み、森林保全やまちづくりに貢献しています。
平成24年度と平成25年度、埼玉県の助成を受けて、「森と結ばれた木育(もくいく)」を実践し、子どもたちに木の良さ、木を大切に使うことを伝えるとともに、「木育」の指導者養成に取り組みました。
代表理事の鈴木進さんにお話を伺いました。
<設立経緯>
Q まず、NPO設立の経緯をお聞かせください。
A 私はまちづくりのコンサルタントをしていて、まちづくりの仕事を通じて、森のことに関心を持つようになり、森を保全するためには、木を使わないといけない、ということを知りました。木を使って、また新しい木を植えることで森が保全されるのです。日本は人工林が多いので、日本の木が使われなくなると、森が荒廃してしまいます。そこで、もっと木が使われるようになるにはどうすればよいかと考えたところ、木の家をたくさん作れば良いのではないか、ということで、2000年に任意団体で「木の家だいすきの会」をスタートしました。
ちょうどNPO設立の機運が盛り上がっていた時期でもありますので、今後の活動のために法人格を取得したほうがよいということになって、2002年にNPO法人化しました。
<“夏の木陰、冬の陽だまり”を実現した木の家づくり>
Q 法人の関わった木の家は何軒くらい建ちましたか?
A 約10年で六十数軒が建ちましたので、年平均6軒
くらいですね。計画途中の家があと数軒あります。
Q NPOとして、木の家づくりにどのように関わるの
ですか。
A 木の家の良さを森林保全の視点から共感してもらい、
木の家づくりのための心配ごとの相談にのり、工務店などとのマッチングをお手伝いします。
Q 木は埼玉県の木に限らず、他の地域の材も使うのですか。
A 県産の木は、できれば構造材、つまり、柱や梁(はり)に使うと良いです。
埼玉県は、杉やヒノキがとれるので、これらの地元で育った木を使えば、菌や病気に強いですし、丈夫で長持ちする家 になります。100年も持たせることもできます。内装材は、好みもありますし、県内でとれない木もありますから、広く国内産を求めます。
家づくりで木を使って、また新しい木を植えれば、森の循環が促進されます。
杉やヒノキの木を植えて育つまでに50年かかります。今、家を作るために使う木は、おじいさんの代に植えた木ということになりますね。建て主の方の御希望があれば、家族で大黒柱を伐採したり、丸太の皮むきをしたりすることもできます。
木の家だいすきの会では、月に1回程度、木の家の見学会を行ったり、最近は、「耐震エコリフォーム講座」を専門家向けに開設したりしています。
<森と結ばれた木育(もくいく)への取組み>
Q 埼玉県の助成を受けて、こどもたちに木の大切さや森の保全のことを伝える活動に取り組んでいらっしゃいますよね?
A 次世代を担うこどもたちに「森」や「木」に直接触れてもらって、木の良さや木を大事に使うことを学んでもらうプロジェクトです。
前身として、平成20年度から「すぎんこプロジェクト」を立ち上げて、子どもたちが森に入って、草刈りをしたり間伐をし、その森の木で床張りをするという活動を実践してきました。子どもたちが床張りをした北秋津小学校の空き教室に「ほうかごところ室」と命名して地域のネットワーク活動の拠点としています。
Q 「木育」というのはどのようなものですか?
A 「木育」は北海道から始まった教育理念で、こどもたちが木や森に触れて、木や森の良さ、大切さを学ぶというものです。「木育」研究先駆で第一人者である埼玉大学の浅田茂裕先生に木の家だいすきの会の活動に共感していただき、指導していただいています。
平成25年度は、「木育」の指導者養成について検討するワークショップを3回行ったあと、「巣箱をつくって森へ行こう!」という企画を実施しました。
「巣箱をつくって森へ行こう!」では、森に目を向けてもらうきっかけづくりとして、親子で巣箱を作って、木に取り付けるところまで行いました。この地域は、雑木林による豊かな自然が残されています。その保全は人が管理してはじめて維持できるものです。ここから継続して森に足を運んでくれることを期待しています。
[写真:親子で巣箱づくり]
Q 床張りをした子どもたちの反応はいかがですか?
A 参加した子どもにはとてもよい影響が表れています。床に木の板を張り付けるのに、午前中は上手にドリルを使えなくて、釘が斜めになってしまって何度もやり直すのですが、午後になると、急に上達してスピードアップして1日で完成します。
完成したときの子どもたちの達成感と満足感はとても高いものがあります。自分で苦労して取り付けるので、「木を大切に使う」ことだけではなく、「物を大切にする」ことが実感としてわかってもらえるようです。
ちょうど作業の日に休んでいた児童が、床を粗末に扱うようなことがあると、床張りをした児童が怒るんです。床に落書きするようなことも一切なくなりました。
[写真:床張りワークショップ]
教育的見地からいうと、「自己肯定感」を育てるのにも役立つそうです。午前中には上手くできなかった作業が、午後にはスムーズにできるようになって、1日で完成することで、本人もその上達を実感でき、「やればできる」という自信につながるということです。
その変化は父兄の眼にも明らかなので、父兄の皆さんも「○○ちゃん、すごいね!」と心から褒めますし、子どもたちに良い経験になったと喜んでいただいています。
Q 今年の活動予定は?
A 今年は、「木育」の指導者養成により一層、力を入れたいです。昨年、浅田先生が作成された「北秋津の森林と結ばれた木育の手引き」の実践を子どもたちへの体験活動を取り入れながら行っていきます。
―― ありがとうございました。――
(取材:MK / 平成26年5月)
<リンク>
(特)木の家だいすきの会公式HP http://www.kinoie.org
NPO情報ステーション・NPO登録団体・(特)木の家だいすきの会
http://www.saitamaken-npo.net/database/kyoudou/group.php?mode=detail&id=050610170011