NPO法人キャンパー
「特定非営利活動法人キャンパー(以下、キャンパー)」は、キャンプや野外活動好
きが集まり発足した団体です。キャンプで培ったアウトドアのノウハウを活かし、野
外調理や専門機材を利用した災害時の炊き出し活動を実施している他、有事に備えた
災害マニュアル作りや防災リーダーの養成などを行っています。
今回は、代表理事の飯田芳幸さんにお話を伺いました。
◆心を和ませる温かい食事の提供◆
新潟県中越地震や能登半島地震など、過去の震災時においても、そのキャンピング
トレーラーの機動力と野外活動のノウハウを活かした炊き出し支援を実施している
キャンパー。今回の震災でも地震発生直後から被災地での支援活動に向けて準備を
進め、石巻市の社会福祉協議会との連携によって、約一週間後の3月19日から被
災地での炊き出しを開始しました。そして、避難所となっている石巻市立開北小を
拠点として、これまでに1日1000食、合計で約4万食以上の炊き出しを実施、
被災者の心を和ませる温かい食事を提供し続けました。
◆足らない被災地でのボランティア活動◆
阪神・淡路大震災の約6倍ともいわれる被災範囲の広さに加え、これから夏に向け
て、衛生状況が深刻になっていくことが予想されています。それは腐った生魚等を
含んだ汚泥からウジやヤブ蚊が大量発生し、感染症の二次被害の恐れがあるからで
す。だからこそ、飯田さんは「夏までが勝負」と話します。
しかし被災地では多くのボランティアを待っている一方で、体制が整わずボランテ
ィアの受け入れを制限しているのが現状です。こうしたボランティア制限に業を煮
やしたゲリラ的なボランティア活動が増え、被災地の混乱を招く恐れも指摘されて
います。
キャンパーでは行田市社会福祉協議会が石巻にむけて定期運行しているボランティ
アバスのサポートをし、毎週、多くのボランティアを被災地に送り届けています。
こうした被災地との連携に基づいたルートを確保、支援していくことで、被災地に
混乱や負担のない形でボランティアを増やしていくとともに、被災地ボランティア
のネットワーク構築を目指しています。
◆ホワイトタウンプロジェクト◆
5月6日をもって被災地での炊き出し支援を終えたキャンパーは、今後の中長期的
な支援策を検討し始めています。そこで大きな課題となるのが居住地の問題です。
津波の被害で平地が浸水してしまった今回、仮設住宅を設置する用地の確保が大変
難しいのです。
キャンパーでは災害時にキャンピングトレーラーを利用し、避難所や簡易仮設住宅
群を構築するホワイトタウンプロジェクト(※)を推進しています。飯田さんは言い
ます「キャンピングトレーラーの良いところは、機動性に優れ、場所を選ばず、迅速
に住まいを設置できるところです。現在、避難所となっている石巻市立開北小に3台
のキャンピングトレーラーを簡易仮設住宅として校庭に設置していますが、学校行事
等で校庭が使用できなくなる場合は、一時的に別の場所に移動することも可能です」
ホワイトタウンプロジェクトは、現在、石巻市の本格参入が決まり、国内外から車
両の確保等を進めています。
※「ホワイトタウンプロジェクト」とは?
アメリカには、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の仕様に合わせて全米の業者が製造
したトレーラーを、災害時に各地から集合させ、一夜にして、簡易仮設住宅群を構築
するシステムがあり、ハリケーン・カトリーナの被災地でも活躍しました。この「移
動できる簡易仮設住宅群」を、キャンパーではトレーラーの色から「ホワイトタウン」
と名付け、今回の震災支援の中で是非実現にこぎつけたいと考えています。
◇訪問を終えて◇
被災地の生々しい状況を、写真を交えてお話いただいた今回、改めて震災被害の甚
大さを思い知らされました。被災地ではまだまだ支援の手が足りていません。少しで
も多くの支援の手が被災地に差し伸べられるよう、私たちもチカラをあわせて頑張っ
ていきましょう!
キャンパーの東日本大震災特設サイト。震災におけるキャンパーの取り組みがわかります。 ↓ http://www.camper.ne.jp/npo/touhoku/ キャンパーでは現在、石巻市立開北小学校PTA会長からの依頼で、鼓笛隊の中古ユ ニフォームを探しています。 ↓ http://www.camper.ne.jp/npo/blog/?p=308 「地域防災力の向上に取り組み、災害時には炊き出し活動を行う:特定非営利活動法 人キャンパー」つながリスト2009(平成21年度協働事例集)より ↓ http://www.saitamaken-npo.net/kyodojirei/report/kyoudoujirei/tsunaga09_camper.php
(平成23年5月取材)