土と風の舎
農・園芸を通じて広範な活動 川越市郊外に「土と風の舎」の運営する自然農園「こえどファーム」がある。「土と風の舎」代表理事の渋谷雅史さんをここに訪ねた。 埼玉県は1999年から2002年にかけ園芸療法をベースにした「癒しの園芸活動」を推進する目的で、「彩の国・癒しの園芸活動指導者養成研修」と「同サポータ養成研修」を開催した。園芸療法とはリハビリなど健康回復のための医療施術の一種だが、「彩の国・癒しの園芸活動」は目的をそこに限定せず、幅広い福祉活動の一環としてとらえたものだという。これを受講した渋谷さんだが、研修修了当時はまだ「癒しの園芸活動」を実践できる施設は数少なくて、研修の成果を実地に生かすことは難しかった。そこで、研修を受けた仲間たち数名と2002年に「土と風の舎」を立ち上げ、実践の場とネットワークづくりに邁進することになった。この会はその翌年県の認証を受け、現在は「こえどファーム」運営と「お出かけ園芸ひろば」活動、「アグリの会」という障がい者への自立・就労支援事業、園芸福祉・園芸療法等の各種講座やセミナーの開催・園芸教室や体験学習等への講師派遣さらには施設や一般家庭の庭づくりから庭木の手入れまで実に広範な活動を展開している。
「土と風の舎」の活動理念 「土と風の舎」の活動理念は、障がいのある人も子どもも高齢者も病気の人もあらゆる人たちが農・園芸を通じて心と体の豊かさを分かち合おうというもの。「こえどファーム」では「川越子育てネットワーク」の支援を仰いで親子・家族の農業・自然体験会を開催したり、高齢者の健康増進・障がい者のための農業・園芸への就労支援などさまざまな園芸福祉活動を展開している。 「お出かけ園芸ひろば」は高齢者施設・障がい者施設・病院・学校・幼稚園・保育園・学童クラブ・子ども会などの、植物や自然に触れたいが機会に恵まれない人たちのために出張訪問して自然・園芸を体験してもらおうとの活動。現在、川越市内のグループホームでの園芸療法、久喜市内の精神科クリニックでのガーデニング活動を行っている。今後は川越市の障がい者施設との連携も視野に収めている。
行政との連携がスタート 行政との連携は、2008年度農林水産省の事業として、独立行政法人「農研機構・農村工学研究所」から委託されて「農業分野での障害者就労支援セミナー」の開催事務局を務めたり、また文部科学省の委託を受けて「『学びあい、支えあい』地域活性化推進事業」の運営主体として園芸福祉活動を通じた地域づくり・子育て支援・高齢者・障がい者福祉への啓発活動に努めるなど意欲的な取り組みを見せている。
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朝のミーティング、右端が渋谷さん | 作業風景 |
これからの活動計画 今後の課題について渋谷さんが語る。「休憩施設・拠点施設がほしい。ここは借地であり、農地法上の制約もあるので大がかりなトイレや休憩所などは作れない。障がいのある人たちが来たときに、どんな突発的な事態が起きても即応できる緊急医療用具などを完備した施設も作りたい。また、川越市の市街地に園芸・農業・自然・環境・料理・地域文化・子育て・障がい者就労などに関する学習会や園芸福祉講座などのセミナー・集会等を開催できる拠点施設も物色中だが、いずれも確保のめどはまだです」 今年から独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業として「障がい者と農家をつなぐみどりの掛け橋事業」を行っている。これは障がい者の自立から就労を、農・園芸を活用して支援するもので、久喜市の精神科クリニックと連携して自立・社会参加に向けたプログラムを実践している。またこの事業の一環として「農業者のための障がい者雇用促進セミナー」「支援者のための障がい者アグリ就労支援セミナー」を開催することになった。これらは障がい者の自立・社会参加・就労の一助として大きな期待が寄せられており、この事業を契機に行政との協働が期待されている。 |
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