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さわやか福祉ネットたすけあい伊奈

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tsunaga09_tasukeaiina.jpg事務所全景 tsunaga09_tasukeaiina2.jpg会員の皆さん

「1年ぶりにコーヒーが飲めた」

 「さわやか福祉ネットたすけあい伊奈」(以下「たすけあい伊奈」)は1992年8月に、当時の町会議員12名で政策研究会を立ち上げ、「さわやか福祉財団」(堀田力理事長)の研修を受けた後、1995年10月住民参加型の在宅福祉サービス団体として設立された。その後、2000年8月に法人の認証を受けて現在に至る。

 「たすけあい伊奈」は「困ったときはお互いさま」の精神を活動の原点にしつつ、在宅福祉サービスや子育て支援サービスを広範に行う会員制の有償ボランティア団体である。会員の家屋内外の清掃・洗濯・買い物・食事作り・食事の世話・話し相手・散歩、また外出できない会員のための役所・銀行などの外出のための付き添い、病院や趣味の集まりなどへの介助送迎、家族の介護を軽減するための援助、産前産後や病気のときの家事援助、子守り、保育所・児童クラブへの送り迎え等の支援をしている。

 地域包括支援センターや伊奈町役場に相談した人が、「たすけあい伊奈」を紹介されることもあるという。そのときには利用会員になってもらってサービス開始となる。先日は喫茶店にコーヒーを飲みに行きたいという外出困難な人を紹介されたので、喫茶店まで送迎したところ「1年ぶりにコーヒーが飲めた」ととても喜ばれたという。

 

移送サービスに力を入れる

 伊奈の町にこうした「たすけあい」の団体ができた理由について「やはり今はお隣同士のおつき合いが希薄になってきたということでしょうね」と事務局のKさん。理事長の飯塚藤郎さんは「介護保険法が改正されたため、介護保険のセーフティネットからこぼれ落ちる人が多くなっている。介護保険法の改正は、実は改悪ではないかと言う人もいる。ネットからこぼれた最大の問題は、病院への通院が法の適用外になってしまったこと。これからは移送サービスに力を入れます」と語る。「介護保険法のサービス部門には進出しないんですか」とたずねると、飯塚さんは「介護認定事業所登録すれば保険料収入は入ってくるが、私たちは報酬(で潤うこと)は考えていない」

 

「ふれあい切符」のシステム

 会のシステムは1枚800円(1回1枚1時間までのサービスが受けられる)の「ふれあい切符」を中心に組み立てられている。何かのサービスをしてほしい会員(利用会員)はサービスしてくれる会員(協力会員)にふれあい切符を渡してサービスしてもらう。サービスした後、切符を受け取った協力会員は事務所で換金する(例えば600円を受け取れば残りの200円は会への寄附となる)ことも、会に預託することもできる。預託した場合は、自分が利用会員となったときに使える。600円は協力会員のサービス提供のための報酬ではなく、あくまでも利用会員からのお礼。最低賃金法の規定以下の600円に設定することで労働の対価でなく、「お礼」の意味を明確にしている。現金のやりとりは一切生じない。現在は高齢化のため、また団塊世代が入会しつつあるので利用会員・協力会員の数は増えてきているそうだ。

 「では、賛助会員は?」と問うと、飯塚さんは「純粋に資金援助するだけの会員です。最も多いときは27名いたのですが、現在は11名ほどに。皆さん、理念は分かっているんですが、景気が悪いので…」と顔を曇らせた。「町や社会福祉協議会からの補助は一切無し。2001年埼玉県社会福祉協議会よりコピー機購入の補助金を受けている。1998年2月に日本財団から福祉車両の補助を受けたことも。ただそのクルマは古い型なので乗降がリフト式。利用会員は乗降が『怖い』と言うし、協力会員は作業のラクな新型のスロープ式を望んでいる」とか。2001年から2005年までは埼玉県共同募金会より受託金を受けていたが、それがなくなったことも財政面でこたえた。

 

ふれあいの場「浜さん家(ち)」

 そこで財政力強化のため、協力会員中心にバザー、交流会、各種イベント会場・町の文化祭でのワタアメ・手作り蒸しパンの提供などを行っている。自慢の目玉商品は手作り蒸しパンだ。これは原材料費は会が負担するが、製造関係はすべて会員の負担。「各会員が自宅の台所で一生懸命作ってくるんです。いつも完売ですよ」と胸を張る飯塚さん。蒸しパン以外の商品もよく売れるという。「おいおい地域の祭りでフリーマーケットに出店したいんです」と今後の計画も語ってくれた。さまざまなグッズが会への寄附として集まるので、それをフリマで売りたいのだと。

 また新しい企画としては「浜さん家(ち)」の開設を準備している。これは地域の「浜さん」というご家族が自宅を「たすけあい伊奈」に無償提供し、会ではここを近所の人々が自由に立ち寄れる場所として開放する試みだという。飯塚さんが熱く語る。「ここを赤ちゃんからお年寄りまで集まる『ふれあいの場』にしたいんです。今後、浜さん家のような『ふれあいの場』をどんどん増やしていきたい」

 

☆取材を終えて☆
取材の途中、出払っていた車両が戻ってくると、事務局のKさんはきまって外に出に行く。飯塚さんが「人を乗せているので、無事に帰ってくるまで心配なんですよ」と説明した。お話の楽しい飯塚さん、「細く長く活動していきたいの」と微笑んでいたKさん、いつまでもお元気で頑張ってください。