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ぬくもり福祉会たんぽぽ

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老舗中の老舗NPO

 「ぬくもり福祉会たんぽぽ」(以下「たんぽぽ」)は1999年に埼玉県で初めて知事の認証を受けた老舗中の老舗NPO。飯能市郊外の「たんぽぽ本部」に会長の桑山和子さんを訪ねた。

 「たんぽぽ」は公民館で開いていた女性講座の参加者が、1986年に女性問題研究会を立ち上げたのが始まりという。1994年には「ぬくもりサービスたんぽぽ」を設立して家事援助・介護・保育、配食、移送サービスを開始する。次いで2000年、デイサービス「ぬくもりの館」を開所するとともに「訪問介護事業所」や居宅介護支援業務も開始し、2003年にはグループホーム「メゾネットたんぽぽ」を開所(後に認知症対応型通所介護施設を併設)。これは飯能市内のグループホーム第1号となった。その後も居宅介護支援「たんぽぽ総合相談センター」、デイサービス「田園倶楽部」「訪問看護ステーションたんぽぽ」等の施設を次々と開所するかたわら、飯能市からの委託事業「ファミリーサポートセンター」「飯能市障害者就労支援センターJOB」「飯能市地域包括支援センターあずま町」等の業務も引き受けて現在に至る。

tsunaga09_tanpopo.jpgたんぽぽ本部

 「たんぽぽ」は上記業務のほか、障害者福祉サービスや助け合いサービス、各種研修事業など幅広い活動を行っている。また研修事業としては、駿河台大学や目白大学、立正大学などから社会福祉士を目指す学生たちがインターン実習に訪れたり、院生たちが論文作成のためのフィールドとして活用し、行政職員・教職員たちも研修に来たりしている。また中学生たちもカリキュラムに組まれた3デイズチャレンジ(社会体験)の場として利用し、「たんぽぽ」の農園で耕うん機体験などに歓声を上げている。

 

注目の「ソーシャルファーム」

 

 また2009年に立ち上げた「ソーシャルファーム」事業も大きな注目の的だ。「ソーシャルファーム」とは障がいのある人や就労にハンディのある人に雇用の場を提供することを主眼に置いた営農ビジネス。「たんぽぽ」は厚生労働省、埼玉県福祉政策課、飯能市障害福祉課・農林課および全国組織の「ソーシャルファームジャパン」や地域の人々など各方面から支援を受けながら、地元落合地区に7カ所、計約4,000平方メートルの畑を借り、無農薬・有機肥料の自然農法による野菜づくりをスタートさせた。この農園では現在障がいを持つ3人が農作業に汗を流している。穫れた作物は配食サービスへ提供したり地元の自然食品店で販売する。販路拡大や「たんぽぽ」ブランドの開発、「ソーシャルファーム」を独立事業として確立する道の模索などは今後の研究課題だという。

 tsunaga09_tanpopo3.jpgたんぽぽ農園  tsunaga09_tanpopo2.jpg桑山さんと経営管理部長・岡田さん

 

ふたつのユニークな協働の取組

 たんぽぽ」は他団体との協働にも積極的かつユニークに取り組んでいる。たとえば駿河台大学の狐塚(こづか)准教授と進める転倒予防プログラムの共同開発。毎週水曜日にデイサービス「田園倶楽部」で利用者がボールやタオルを使ったコーディネーショントレーニングを行うものだ。コーディネーションとは「知覚→判断→動作の一連の過程をスムーズに統御する」との概念で、狐塚先生はこれを運動能力アップのトレーニングに導入したのだ。桑山さんによると、導入効果は確実に上がっているという。

 

 そしてもうひとつユニークなのが飯能市立加治小学校との交流の取組。2001年から加治小学校児童と「たんぽぽ本部」のデイサービスやグループホーム利用者との間で相互訪問をベースにした交流が始まった。これは小学校の5・6年生における総合学習としてカリキュラムに組み込まれている。

 プログラムはまず「たんぽぽ」から配食スタッフが5年生のクラスに配食利用者に届けるのと同じ弁当を届ける。5年生たちはこれを食べて配食について考え、利用者についての理解を深めた後に配食利用者たちと文通を開始して、利用者たちに元気を送り、利用者たちからは心を受け取る。そして6年生になると今度は全員で「たんぽぽ」を訪問し、デイサービスやグループホームの利用者たちとハーモニカ発表会などで交流。6月から月に数回、8月はほぼ毎日メンバー表に従って「たんぽぽ」を訪れ、掃除したり話をしたりしながら福祉についての理解を深め、かつ手紙を通じて言語表現力を向上させている。児童たちが農園に芋掘りに来たり、利用者たちが運動会や文化祭に招待されたりもする。桑山さんが「小学校内の段差部分で小学生が利用者をエスコートしている姿は微笑ましいですよ」と目を細める。この事業は2008年、毎日介護賞特別賞を受賞した。

 「たんぽぽ」運営の基本姿勢について桑山さんは「つねに一歩前を見ること。利用者が何を求めているのか、いち早く察知して次の行動を。そうすれば後から法律が整備され、行政の支援も得られやすくなる」と、温和な笑顔にそぐわないダイナミックな哲学を語った。 

 

☆協働相手からの応援コメント☆
飯能市立加治小学校教諭 飯田きみ江氏
 核家族化が進み祖父母等と同居していない児童が多い中、「ぬくもりの館」のご利用者さんとの交流は、大変貴重な体験となっています。児童は交流会の始めは、どんな話題でどのように話したらいいのか分からず、大変緊張していますが、ご利用者さんの方から、歓迎の言葉や励ましの言葉を掛けていただく内に、緊張も取れ、自然と優しい笑顔で活動できるようになってきました。人の優しさにふれた児童は、次の交流会ではどんなことをして喜んでもらおうかと相手の気持ちを考えながら交流会の計画を立て、準備をしていきます。修学旅行先から全員が出したお便りに返事をいただき大変喜んでいる児童もいました。この活動を通して相手を思いやるやさしい心が育まれていると感じます。