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彩星学舎

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フリースクール彩星学舎

 彩星学舎」は、様々な悩みを持つ子どもや青年たちの「学びのコミュニティー」として、1999年4月に設立されたフリースクールである。開設以来、不登校や軽度発達障害など、人間関係で悩んでしまう児童、生徒、青年が集い、社会や学校への復帰、自立を目指している。

 テーマに沿った体験的総合学習や自立の一歩となる畑作と毎日の調理、生活体験を豊かにする自然キャンプ、表現力を豊かにする演劇、地域と一体となったバザーなどの活動を通じて、「自己肯定感」と「コミュニケーション感覚」を培う教育を行ってきた。

 2009年9月現在、彩星学舎に通学している生徒は25名ほど、体験実習やイベントなどの時に参加する小・中学生や青年はおよそ60人ほどいる。

 「開校時は生徒が2~3人と少なかったのに、ようやくここまで来たという感じです。経営の理念としては大成功ですが、運営については財政的には恵まれず、不安を隠せないのが現状です。生徒を増やしていくこと、長いスパンで考えて継続していくことが大切だと思っています」とはスクールマネージャーで理事の橋克己さん。

 

地域との協働を通じて子供たちが変わっていく

 この会の運営は大変でも、子どもたちには楽しい学び舎だ。生徒が主役の活動や地域と協働したイベントがたくさんある。そのひとつが地元の浦和区の大東地区と組んで開催した「地域交流バザール」である。地域住民との協働作業を通じて子どもたちが地域に溶け込んでいくために開催しており、今年2009年で10年目を迎えた。

 生徒たちが地域の各家庭を回り、提供してもらえるいろいろな商品を集めてくる。それをみんなで値段を決めて、陳列して販売する。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と心を込めて感謝の言葉を返すことも忘れない。宣伝には、生徒たちが自ら作ったチラシを1万枚ほど配る。こうした活動を通じて子どもたちの表情が明るくなり、行動も活発になっていく。年を追うごとに盛況となり、今年は提供商品が200件を超え、5日間の参加者は1,195人だった。開校当初は「変な団体が地元に来た…」といぶかられたそうだが、ようやく地域に認められたと実感できるようになったという。

 

 tsunaga09_saisei1.jpg地域交流バザール。3ヶ月かけて準備し、店員として自分たちですべて行う

チョコレートが主役の演劇会

 2002年、チョコレートを題材にした演劇会を開催した。この企画は、有名菓子メーカー約10社との協働である。

 各社からたくさんのチョコレートを提供していただいて、来場のお客さんに差し上げる、いわば、チョコレートが主役の演劇会で、演劇は「おまけ」のような企画にあえてした。チョコレートに押されて生徒たちの演技への注目は多少薄れたが、かえって生徒たちがリラックスできたそうだ。人と接することが苦手な生徒たちがのびのびと演じられるよう学舎側の心遣いだった。

 演劇はコミュニケーションに最適な活動で、自分に適した役割でみんながひとつのことを創る喜びを味わうことができる、そしてまた、自分を表現したり、感性や能力を育むことができる、優れた活動でもある。一度経験すると気持ちが変わるもの。こんな体験の数々が生徒たちの意識を変え、日常の生活に戻っていくためのきっかけにつながる。「楽しいと思えること」「やってみたいこと」を通じて、彼らは自分を取り戻していく。

 

宮沢賢治のふるさとで朗読会

 子どもたちが「大人の技とその努力」に心うたれた事例がある。岩手県の更木(さらき)地区との協働で、朗読という自己表現の場を持った。題材は岩手が生んだ宮沢賢治の詩「鹿(しし)踊り」で、生徒たちの朗読中に地元有志の鹿踊りの実演が入った。聴衆もこの会のメンバーも最高に盛り上がった。

 また、発表会の後に地元の人たちが開いてくれた懇親会が楽しかったそうだ。

 大人とのふれあいが少ない生徒たちにとって、「努力すれば自分たちにもできるんだ」という自信を得た催しとなった。ここに参加したメンバーの感想がある。

「ちゃんとできるのかと言われて最初はちょっと怖かった。だけど、姿勢をちゃんとしなさいと言われそのとおりにしたら、お腹の底から声を出せるようになれました。今までは大きな声が出せなかったのに」

 経験を積みながら生徒たちは成長している。11年間活動してきたこの会に支援の輪が広がることを願ってやまない。

 tsunaga09_saisei2.jpgのサムネール画像朗読の様子。埼玉大学の学生と一緒に3ヶ月かけて練習発表