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教育ネットワーク・ニコラ

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月刊「ニコラ」の発行

 「教育ネットワーク・ニコラ」はさいたま市南区で、不登校や登校拒否の子どもたちが通学するフリースクール

「ぱいでぃあ」を運営している。理事長の馬場章さんと事務局長の米丸由美子さんにお話を伺った。

 この会は、馬場さんたちが学校や地域、家庭の問題など、子どもたちの学びや育ちの環境に強い危機感を抱いて

いた折、地域・子ども・親・教育関係者を結ぶネットワーク誌の誕生を望む声が起こり、1995年に教育月刊誌

「ニコラ」を創刊したことから始まった。

 これは各方面から大きな反響を呼び、不登校や中退、いじめや体罰など学校問題で悩む子どもとその家族からの

相談電話が殺到した。

 やがて不登校の子どもの進路に関する相談が多くなり、あるときこんな情報が寄せられた。「東京のほうに不登

校生でも高卒資格が取れるスクールがあるみたい」米丸さんは直ちにこれを取材。そうした子どもの進路としてど

んな選択肢があるのかを可能な限り調査した。すると様々な道があり、展望が開けそうなのでそれを月刊「ニコラ」

の読者に報告し始めた。

 これは1998年に単行本「行ってみないかこんな『高校』」、翌年には続編「行ってみないかこんな『学校』」

の刊行となって評判を呼ぶ。米丸さんは「不登校の子どもが出ると学校の先生たちは他校に転校するよう薦める。

でも他校も学校には違いなので、また不登校に…。そんな子どもたちへのガイドとなってくれれば、との思いで

きた本です」と語った。

 「行ってみないかこんな『学校』」には全国のユニーク校・サポート校の詳細が9例ほど紹介されている。

 

 

「ぱいでぃあ」は遊びと学びを融合する

 その一方、馬場さんたちは1996年「ユニークな学園の教育実践報告会&進路相談会」を開催。ユニーク校・

サポート校の先生方にその学園の様子などについて本音で語ってもらったところ、定員200人を大幅に上回る約

300人の来場者で立錐の余地もなかったという。そして、2000年、馬場さんたちはそんなフリースクールの

運営に自ら乗り出す。

 「ぱいでぃあ」とはギリシャ語の「パイディア=遊び」と「パイデイア=教育」を融合させた造語だという。

 本来、子どもたちの活動では遊びと学びとは同根のもの。馬場さんはこれをフリースクール運営の基本理念とし

て高く掲げる。

 「ぱいでぃあ」の時間割は午前10時から午後3時まで。英・国・数・理・社の5教科は各人に合った時間割で

勉強する。また週3回「ぱいでぃあ活動」の時間があり、天候によってアウトドア・インドアの活動となる。さら

に毎月1回、野外活動・体験学習なども行う。

 「ぱいでぃあ」での出席日数は学校での出席日数として認定されている。

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後列右端・馬場さん。1人おいて左に米丸さん 馬場さん(左端)もいっしょに…

 

子どもの立ち直りには行政との連携が不可欠

 この会は「不登校生・中退者のための進路相談会」「悩み相談会」を定期開催するほか、さまざまな講演会やシ

ンポジウム、教育広場(学びの場)や親の会等の学習会などを開き、教育や子育てについての学習啓発活動を進め

ている。

 またメールマガジン「いきいきニコラ通信」、掲示板「子どものしゃべり場」、ブログ「教育落書帳」を開設し、

それらサイトに寄せられた声をもとに単行本「中高生660人の掲示板」(PHP研究所)を出版するなど、広報

活動にも力を入れている。

 2003年、埼玉県教育局主催の「彩の国スーパーサマースクール」に参加、不登校対策で県とのパイプを持っ

た。2004年、埼玉県が「不登校・ひきこもりに関する機関の連携を進める手引」を作成し、行政・教育・福祉

などの関係者から成るチームを発足させたが、民間からは馬場さんが参加した。ここに県との協働関係が始まり、

この年「ニコラ」は特定非営利活動法人の認証を得た。

 行政との協働について馬場さんは語る。「フリースクールの小・中学生は義務教育制度から外れてしまい、親が

自前で通わせるしかない。これはおかしい。義務教育費は学校に支給されるのではなく、義務教育クーポン券の形

で、教育を受ける子ども自身に支給されるべきだ」と。それはフリースクールに通う子を持つ親の負担を大きく軽

減する。

 2008年には「ぱいでぃあ」親の会が「フリースクールへ通う子どもを持つ親たちの願い」と題する文書を埼

玉県教育委員会に提出、現在の困難について行政側からの解決を訴えた。取材の最後に馬場さんは「行政とは連携

を密にしていきたい。子どもの立ち直りにはそれが不可欠です」と締めくくった。

 

☆協働相手からの応援コメント☆

「ぱいでぃあ」親の会 S・T氏

不登校が社会現象のように言われ、誰にでも起こりうることだということは最近よく言われていますが、実際わが子がそうなってしまったことで思い悩み、体調を崩してしまう親御さんは少なくないと思います。実のところ私もそうでした。そんな親の心のよりどころになってくれた親の勉強会。

娘は「ぱいでぃあ」にお世話になった数ヶ月で心身ともにずいぶんと安定した日々をすごせるようになりました。全日制の高校に進学を決め、新たな生活に胸ときめかしている様子ではありますが、まだまだ危うい面もありこれからも「ぱいでぃあ」とのつながりを大切にして欲しいと思っています。また親である私たちも微力ではありますが、なにかお手伝いできることがございましたら協力させていただくつもりでおります。