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名栗カヌー工房

 
 
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 ロックフィル形式の名栗湖(有間ダム)の堤防沿いの道を進むと道の両側に丸太で作られた建物が見える。これが名栗湖畔にある「名栗カヌー工房」だ。訪問の挨拶をすると大きな犬が現れた。日本では珍しい犬種レオンベルガーのロンだ。工房の中には製作中のカヌーが置かれ、預かっているらしいカヌーが20数艇組まれた木組みの中に納まり、天井にはカヌー船体作りの基礎となるモールド(木枠)がぶら下がっている。代表の山田直行さんから、早速この会の成り立ちや協働について話を伺う。

 

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西川材を使って作ったカヌーの

塗装を乾かしている

tsunaga09_naguricanoe2.jpg制作中のカヌー  tsunaga09_naguricanoe3.jpg

 

 

害魚を食べちゃいます

 名栗湖畔に位置するこの工房がブラックバス駆除に一役買ったユニークな協働事業がある。

 ブラックバスは1925年に箱根の芦ノ湖に食用の目的で放流されたのが最初といわれ、1950年代後半から全国各地の湖沼、河川で見られるようになった。これはルアー釣りがしたいがために釣人などが放流したものといわれている。なかでもコクチバスは冷水系を好む習性があり、これによって各地の内水面漁場は在来魚の生態系がより脅かされている。

 2008年県のNPOとの協働提案推進事業に応募し、採択されたのが、「一日漁師~ブラックバス食べちゃいます」カヌーを使って刺し網でブラックバスを駆除し、さらに試食会で料理法の研究をするもの。

 2009年にも事業を行ったが春には応募者すべてに対応できないという盛況であったという。これ以外にも、県との協働で名栗湖の堤防の階段作りと補修を行う。2008年、名栗湖の植樹祭を行うにあたって堤防に階段を作ることになり、入札して落札。地域の人といっしょに湖の下から上まで防腐剤処理をした丸太を担いで何百段という階段を一段一段築いていった。「苦しかったが非常に楽しかった」と山田さんは振り返る。

 

山の中で船作り きっかけは広い工房が欲しくて…

 山田さんは、かつて東京のテレビ各局で「お母さんといっしょ」やノッポさんでおなじみの「できるかな?」、「ひらけポンキッキ」、「ピンポンパン」など子ども向け番組の美術の裏方であった。現代アートの彫刻家でもある彼は広い工房が欲しくて1988年1月に当時の名栗村に転居。趣味でカヌー作りをしていたところ、これをたまたま通りがかった新聞の記者が、「山の中で船作り!」と地方版の日曜版に見開き掲載してくれたのがきっかけでカヌーの注文が殺到。1人では対応ができなくなり、都会から移り住んできた新住民の奥さん方にカヌーの仕上げなどを手伝ってもらい、カヌー事業ははなんとか成功した。その後、地元の西川材で作れないかということになり村営事業として、カヌー製作を始めた。飯能市と名栗村の合併がきっかけで工房が特定非営利活動法人として独立した。建物は飯能市の所有で、会は、建物の指定管理者になっている。

 

 

☆協働相手からの応援コメント☆
埼玉県農林部生産振興課

 埼玉県内の内水面での漁獲高は1989年の1/5に激減。原因の一つに外来魚による在来魚の捕食が挙げられている。外来種が確認されている県北の本庄市の間瀬湖では、採捕魚の96%が外来魚になるなど河川・湖沼など生態系への被害が報告されている。県民の共有財産である在来魚の生態系を守るために、外来魚駆除と地域での活用を期待してNPOとの協働を働きかけたところ、水のきれいな名栗湖でカヌーに乗って刺し網で外来魚を駆除し、駆除した魚をおいしく食べるという企画を名栗カヌー工房が提案してきました。2008年「一日漁師~ブラックバス食べちゃいます」とのキャッチフレーズで「彩の国だより」に掲載したところ。参加者は2008年度で118名。他にも外来魚の被害状況や魚の再棲に向けた取り組みを啓発するための3つのフォーラムで講演を行ったり、違法放流禁止の看板の設置を協働で行いました。コクチバスやブラックバスはスズキと同じ種類の白身で美味しい魚です。キャッチアンドリリースではなくキャッチアンドイート。生産振興課はこれからも外来魚絶滅のために行事があれば応援いたします。