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杢の家をつくる会

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 「杢(もく)の家」一般の人にはちょっと馴染みのない言葉だ。杢とは木目の美しいの紋様のこと。埼玉の木と匠(たくみ)の技で本物の家をつくる。「杢の家をつくる会」設立の趣旨はここにある。 

 2002年10月、本当の木の家づくりを目指した人々、工務店、設計士、大工など住宅に携わる10数名がこの会を立ち上げた。紆余曲折もあったが共有する思いは同じ、家を建てようとする人と本物の家づくりを実践するプロが一体となって生活者目線で家づくりを行うこと。2004年6月には、埼玉県より法人の認証を受け、「杢の家をつくる会」を発足させた。

 「家という箱は買わないでください!人の生活が中心の“ 住まい” こそつくってください!」これをモットーに活動。「木造住宅って高いんでしょう?」というお客様の素朴な疑問に副代表理事で事務局長の小澤利明さんはこう応じるそうだ。「大手ハウスメーカーが出す基本料金にちょっとしたオプションをつけたくらいですよ」と。各顧客に合わせた条件のなかで良い方法を探していく。そんな活動が地元に根づいて支持されてきている。その活動が実を結んだ協働事例として「ツリーハウス建設プロジェクト」(2009年7月~2009年8月)と「山の木が家になるまでのワークショップ開催事業」(2008年12月~2009年3月)がある。

 

山の木が家になるまでを理解する勉強会

 この事業には、「この人」「この場所」無くしては語れないという人がいる。萩原さとみさんだ。萩原さんとの出会いは県からの紹介による。ご自宅に伺った際は留守であったが、後日、直接お電話を頂いてお会いすることが出来た。彼女は、さいたま市内では貴重な自然が残る「見沼田んぼ」周辺で田舎暮らし体験農園「ファームインさぎ山」を主宰する。早くからグリーンツーリズムを推奨し、代々続く農家である自宅を会場に、小学生から家族を対象にした ”かーちゃん塾”を開催している。グリーンツーリズムとは、農・山・漁村に滞在し、都会では味わいがたい自然の魅力や農林漁業の体験する旅のことである。

 萩原さんにこの「ファームインさぎ山」の隣接地を提供してもらい、「山の木が家になるまでのワークショップ開催事業」ができたという。この事業は国土交通省「地域木造住宅市場活性化推進事業」の補助を受けて実施された。

 このワークショップの目的は大きく2つある。1つは、山の木が家になる過程を地域の大人や子どもたちに見て知ってもらうこと、2つ目は、大工の基本である「木組み」の技術の伝承である。この事業では、子どもたちが県内の伐採現場まで行って木の伐採を見学した。伐採は、通常木が水分を吸わなくなる秋から春先までの間に行い、伐った木は「葉枯らし」という期間を経て3月ごろ、製材所へ運ばれる。まだ早春の寒いときに皮むき作業がある。根気のいる作業だが大事な工程である。これも子どもたちに体験してもらった。そして製材・乾燥を行った後、熟練大工による墨付け・刻み、木を合わせる木組みまでを浦和の作業所で行い、この一連の作業は熟練棟梁の指導の下、見習い大工たちが行った。「木が家を建てる材木と同じものだと思っていない子どもたちが多くいたのには驚かされました。参加してくれた子どもたちは理解してくれましたが、今後、子どもたちに木のことをよく理解してもらうための活動が必要だと痛感しました」とは小澤さんの感想だ。

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ぼくらの秘密基地/ツリーハウスを造ろう

 もう一つの協働事業「ツリーハウス建設プロジェクト」は、日本たばこ産業㈱の助成を受けて2009年夏休み中の土・日に行なった。目的は作る喜びと職人の技を広く地域の人々に知ってもらうこと。そして、主役は子どもたち。通算12日間で前述の「ファームインさぎ山」にツリーハウスを建てた。このプロジェクトに参加したのは8組の親子、こちらも会の専門家の指導の下、みんなで考え、知恵を絞って苦労をともにして樹上にかわいいツリーハウスを造り上げた。

 ツリーハウス完成を記念してのイベントは参加者100人以上で大盛況だった。メインは、ツリーハウスの上からの40mほどの竹によるそうめん流し。なんと200束のそうめんが参加者のおなかの中に納まったという。この他、ツリークライミング(木登り)の実演、コカリナの演奏も行われた。コカリナは、「桜の木でできたオカリナ」といわれ、ギターとの共演で10曲ほど美しい音色が流れた。このツリーハウスの取り持つ縁で参加者同士のいい出会いができて小澤さんもこのプロジェクトを行ってよかったと感じたという。同氏に「なぜツリーハウスを?」と聞いてみた。あっさりと「昔、子どもの頃…どうしても造りたかったんですよ。これ、公私混同ですかね?」と苦笑い。子どもの頃の夢を今の子どもたちに託しこれが実を結んだ格好だ。

tsunaga09_mokunoie2.jpgツリーハウスに大集合した参加者

 

☆協働相手からの応援コメント☆
日本たばこ産業株式会社 埼玉支店
 JTグループは、社会と共生する「良き企業市民」であることを目指し、「JTグループの社会貢献活動の基本方針」を定め、「社会福祉」「文化・芸術」「環境保全」「被災地支援」を重点分野とし、様々な社会貢献活動に取り組んでいます。
 その活動の一環として、JTは、地域コミュニティの再生と活性化を推進し、より良い社会を築いていくためには人材育成、とりわけ次世代の社会を担う「青少年の育成」が重要な課題との認識から、その健全な育成のため、特定非営利活動法人が日本国内において、地域と一体となって取り組む事業を支援しています。
 2009年度は、埼玉県において「ぼくらの秘密基地/ツリーハウスプロジェクト」の事業が助成の対象となりました。参加した子どもたちは、夏休期間の猛暑の中、森の中でのツリーハウス制作という経験を通じ、物をつくることの楽しさ、自然の中で遊ぶことの楽しさを十分に体感していました。初めてのツリーハウス制作という中で、事務局長の小澤氏を中心に、大人・子どもが一体となった、有意義なプロジェクトになったと実感しています。