食育研究会 Mogu Mogu
毎日の生活で食事を重視したくてもできない大人が多いのが現状だ。 2000年から活動している「食育研究会MoguMogu」は食育セミナーを受けたお母さんたちが素朴な疑問を出して農業や食文化を話し合うところから始まった。 2003年に法人の認証を受けた。食育を奨め、MoguMogu(もぐもぐ)というように子どもたちを対象に「親子で食べものを楽しもう」という理念だ。模索した活動は、親子料理教室「もぐもぐランド」になり、農業や食文化を知るイベントにつながった。
県内外の食のプロが会をサポート もぐもぐランドは、年に何回か県内外のレストラン、パン屋さん、フードコーディネーター、ホテルといった企業商工団体との協働事業を行っている。また、レクチャーを受けながら県内を回る「ぐるっと巡る地産地消バスツアー(2009年実施)」も県の農林部経済流通課との協働ならではの企画。 「親子料理教室」について、代表の松成容子さんは今までの執筆の仕事で知り合った人たちに協力を仰いだ。 結果、8割から9割の賛同を得て、現在県内外のイタリアン、フレンチ、日本料理のシェフ、ホテル、パン屋さんほか食のプロたちが講師として参加している。親子料理教室ではパン、魚料理、クリスマスケーキ、にカレーをプロの仕事をみながら作っている。できた料理を食べて親子ともども楽しく幸せな時間と同じ味も共有する。スタッフにも忘れがたい体験が多々ある。例えば、パン作り。ふっくら焼けたパンがオーブンから出てきたときの子どもたちの感動にあふれた表情。大人だってパンが膨らんだときの嬉しさは格別だ。 |
|
2005年から始まった「新宿中村屋」シェフの指導のカレー作りも大変な人気。参加は毎年抽選になるほどだ。子どもが大好きなカレーに料理意識をくすぐられるのかお父さんの参加が多かったそうである。 2009年のメニューは、地元の旬の野菜を使った「ベジタブル・カレー」。「新宿中村屋」とは埼玉の旬の野菜などの打ち合わせを行い、料理長の石崎シェフほか2人のシェフが子どもたちを料理指導。子どもたちは間近に見る石崎シェフの手さばきに見とれ、使用するスパイスの独特な香りには「臭いや!」などと忌憚なく感想を述べるからシェフたちにもリアクションが新鮮ではないだろうか。
|
中村屋・石崎巌シェフの手際の良さに真剣なまなざしが集まる |
協働相手とどのように付き合うのか 協働の相手とどのように付き合えばいいのか、協働事業の進め方がわからないという団体の声も聞く。当会が現在のように相手に恵まれたのは、松成さんの人脈と人柄によるところが大きい。運営にあたっても不安がないこともなく、続けていくには常にアンテナを張り、人脈を作る努力を重ねていかなければならない。 「新宿中村屋」との協働の例では、2005年当初、当会の条件を率直に伝えたものの「本や雑誌でのレストランの紹介ならいざしらず、謝礼も少ないNPO法人。大きな組織になると宣伝メリットの少ない活動に応えてもらえるか…」という不安があったそうだ。 そして、トラブルではないが、「何年も交流があったにもかかわらず、あるとき打ち合わせをメールでやりかけたら、言葉足らずだったようで相手側に誤解を招いたようなこともありました」と松成さんは振り返る。 「できる限り相手に会うなり、電話で話すなりしてお互いの考えを伝えあうことが大事です」と。協働の成功はあくまでも対等な意識でお互い自分たちの活動内容や趣旨(思い)を相手側にきちんと伝えて進めるのがポイントのようだ。
同じ方向、目線で付き合える協働相手を選ぶ
幸い講師をお願いした先の「新宿中村屋」からは当初思っていたよりも積極的な対応が得られ、その後年に1度のお付き合いが続いている。このほかにパンの「ドンク」、フレンチの「浦和ロイヤルパインズホテルアールピーアール」(浦和)、イタリアンの「オープンセサミ」(大宮)、「虎ノ門パストラル日本料理」(東京・虎ノ門)ほかの講師陣を迎えた親子料理教室の成功は、協働相手の見つけ方にある。当会を例にとると趣旨に沿うポリシーを持つシェフや、「新宿中村屋」のように企業理念に食育を掲げている企業に声をかけることが大事だ。知名度だけではなく、子どもたちへの思いも選ぶポイントである。また、双方のスタッフまで同じ思いで進めなくては協働にはならない。 「最初の話し合いは担当セクションの上層同士ですが、協働が始まると現場のスタッフレベルで作業が進んでいきます。まったく同じではなくても同じ方向、目線をもった相手を選ぶことが大事です」と松成さんは続ける。 料理教室では、講師にその日に使う食材の知識やその背景も話してもらっている(ミニ学習)。 「ここは単なる料理教室ではなく、食に対して楽しさとともに何か気がつく、感じてもらうことが目的…そのことを含めて講師をお願いしています」(代表談)。そして、「相手側の食に対する思いも受け止めて進めていくことも忘れてはなりません」。 協働は、発注者と受注者の関係ではない。当会の講師陣を例に取ると相手は食のプロ中のプロである。食に関しては一家言あるだろうし、経験も豊富、こちら側の思いや趣旨だけで押し通すわけには行かない。 一方、こちらの相手は普通の親子である。協働相手側とこちらの趣旨と強みを上手にすり合わせて進めなければならない。 |
|
もうひとつの協働事例「ぐるっと巡る地産地消バスツアー」では、県の農林部経済流通課という県内の地の利、産物を把握している職員の協力なくしては県内を1日で回ることなどはできない。 バスの中で、土地の特徴や産物がどのように採れるかというレクチャーも県の職員なら深みが出るし、作り手の話を聞く上でも潤滑油となってもらえる。行政側も子どもたちと親に県のことをよく知ってもらえるいいチャンスであろう。 営利のみを追求しないNPO団体だからこそできる食育活動、子どもたちにだけではなく、新しい大人たちにとっても食べものを楽しんだ思い出は、必ずや将来につながることだろう。 |
いちご狩りでは、深谷市の農家の方のお話をうかがう。2009年4月バスツアー |
☆協働相手からの応援コメント☆ 「親子料理教室」について
「地産地消バスツアー」協働事業について
|