まちアートプロジェクト
アートが教室の外に飛び出す 北越谷のKAPL(コシガヤ・アートポイント・ラボ)に「まちアートプロジェクト」代表の鈴木眞里子さん、副代表の山口愛さん、KAPL代表の浅見俊哉さんを訪ねた。KAPLは2008年に浅見さんたち文教大学の卒業生が設立したアートスペースだ。越谷市内外の学校による作品展を始め、アートに関する幅広い企画が行われていて、この会もここを活動拠点にしている。鈴木さんが活動について説明してくれた。「越谷市を中心に活動している作品出展者たちと私たち文教大学生とが、市内の商店や施設に作品を展示したり、パフォーマンスを行ったりして、越谷市全体を『美術館に見立てよう』というプロジェクトです。年に1回、展覧会を開催しています。何よりもコミュニケーションを大切にしています」 2006年にまだ大学生だった浅見さん、鈴木さん、山口さんたちが、自分たちのアートを教室の外に出したい、地元の商店や町の人々と協働することで新鮮な創作展開が可能になるのではと考え、北越谷商店会の皆さんに胸の内を吐露したところ、商店会のほうも町内の連携を深めるのに格好の機会だと話を受けてくれたという。
「学生たち、本気なんだな」 それでもはじめは商店会の中に、学生たちに対する疑心暗鬼の雰囲気もあったとか。「4年で卒業する学生にかき回されて、卒業したらおしまいでは…」と二の足を踏まれたようだ。そこで学生たちはすかさず「キタコミ」というフリーペーパーを発行。地域と学生をつなぐさまざまな情報を掲載して、信頼醸成に努めた。すると「商店会サイドも『学生たち、本気なんだな』と納得し、『じゃ、やってみるか』となったのです」と鈴木さんが振り返る。
活動の先を見据えて このプロジェクトがユニークなのは、いわゆるシャッター商店街の町おこし活動ではない点だ。学生たちだけでなく商店の人々も、「アートを通じて学生を支援し交流することが目的で、町の活性化や経済効果狙いとは関係ない」と言い切る。その思いを端的に表現するのが浅見さんの言葉だ。「よその商店街ならアーティストに『シャッターに絵を描いて』と注文することが多いと思います。でも空き店舗のシャッターに絵を描くことで問題解決になるのでしょうか。問題はシャッターを開けること。シャッターの絵で『ハイ、町が明るくなりました』なんてナンセンスです」さらに浅見さんは活動の先を見据え、「アートでもっと深いところの問題解決ができるはず。目的をもっと深く設定しないと活動が本末転倒になる」と熱く語る。 |
|
メンバーの皆さん | 展覧会オープニング会場風景 |
展覧会が始まった 2009年は10月4日から7週間、「まちアートプロジェクト」のメインイベントである展覧会が開かれた。1年間の活動の集大成だ。テーマは「まちからアートができる アートがまちをつくる」。商店サイドから見れば「まちからアートが…」となり、出展者からみれば「アートがまちを…」となる。この二つの志向の矛盾をそのまま表現したコピーだ。鈴木さんが語る。「町の人たちは『こんな作品を創って欲しい』、でも私たちは『こんな作品を創りたい』。お互い議論しながらそんな矛盾を超えていく作業が、実は濃密なコミュニケーションの時間なんです」 展覧会のイベントとしては音楽、パフォーマンス、ワークショップ、作品鑑賞ツアー、手作り映画の上映などが目白押しだ。絵画造形教室に通う子どもたちも「キッズアーティスト」として作品を披露し、賑わいに一役買った。2009年は北越谷だけでなく隣の大袋商店街にも会場を構えてひときわ盛大だったが、今後は越谷市全域への展開を図っていくのだろうか?「参加商店の数は40店と毎年変化していません。広げすぎて作品の質が下がるのがいやですし」と鈴木さんは答えた。一方でイオングループの支援を受け、越谷レイクタウンに「まちアートプロジェクト」のギャラリーをオープンするなど、新たな取組で活動領域を広げつつある。 最後に山口さんが協働の相手である商店会の皆さんへの思いを語ってくれた。「はじめ教室の外に出て町の人と話したら、次は挨拶ができたんです。私は故郷から出てきて一人暮らし。挨拶する人ができると急に越谷が自分の町になったみたい。社会につながるって楽しいんだなと実感しました。町の方々にはお礼を言いたい。でもまだどこか上から目線の人もいる。これからは本当の意味での協働のプロジェクトにしていけたらと思います」 |
☆協働の相手からの応援コメント☆ |