日本捜索救助犬協会
「日本捜索救助犬協会」は、災害発生時に、人命救助のための捜索活動を行う災害救助犬の育成や自治体との協働体制を図るという目的で2004年に設立された。 災害救助犬による被災地での救援活動をやっていく上では様々な相手方との協働が非常に重要である。災害が発生すると被災地の自治体が中心となって対策本部が設置され、その指揮のもと組織立った救援活動が行われる。救助犬による捜索活動も対策本部の指揮下で行われるのだ。代表理事の江口タミ子さんにお話を伺った。
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岩手・宮城内陸地震での共同捜索活動 2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の際には、当時「レスキュードッグ関東」と呼ばれた「日本捜索救助犬協会」と「日本レスキュー協会」が共同捜索活動を行った。 地震発生の午後には出動準備が整い、緊急出動。栗原市の救援対策本部の指揮のもと、翌15日には隊員6名、救助犬8頭による捜索活動がスタートした。同日駒の湯温泉旅館へ、ヘリコプターで移動し、その後2班に分かれて行方不明者の捜索活動を開始した。さらに翌16日には荒砥沢ダム、行者滝で行方不明者の捜索活動を行った。 NPOの共同オフィスである「埼玉NPOハウス」を中心としたNPO災害支援センター計画が策定されていたので、後方支援を受けることができたそうだ。しかし、電話や無線機が通じないため衛星電話による連絡手段の必要性や、報道スタッフをつけなかったことによる救助隊員の負担増などの課題も残った。
平時から行政等との協働は不可欠 江口さんは「平時からの行政との協働、具体的には合同訓練、出動協定の締結が重要だ」と言う。出動する際は対策本部からの要請を待たなければならないが、要請を待っているだけでは間に合わない、また持ち物やボランティアの人数が厳しいといった状況もあるそうだ。さらに電波が通じない、何の連絡方法もない場所においては、更なる通信設備を備える必要がある。 通常、現地対策本部に入ると、まず待機の指示が出るという。待機時間は短かったり長かったりと場合によるが、レスキュー隊、警察、自衛隊などが活動しているそばで救助犬とともにじっと待っていなければならない。岩手・宮城内陸地震の際には数多くの被災地に行方不明者が発生したので、自衛隊から「救助犬を使いたい」との要請があり、活動することができたが、ハード面とソフト面を含めて迅速に活動できる体制が必要となってくる。 特にソフト面では、出動する上で各自治体と災害時の出動協定を結んでおくということが非常に重要なポイントとなる。岩手・宮城内陸地震を例にとると、当時はっきりとした協定が結ばれていなかったため、救助犬の出動体制が整っているので現地へ出動したいとの報告を行わなければならなかったそうだ。もし協定が結ばれていれば、自治体からの出動要請があり、到着してすぐに救助犬による捜索活動が行えるはずである。その辺りが非常に大きな課題となっている。この課題を解決するため、2009年10月には「全日本救助犬団体協議会」が設立された。沖縄から北海道までの全国の救助犬団体が協議会を設立し、「どこかで何かがあれば協力して出動しよう」という態勢が整うこととなった。また後方支援についても、埼玉NPOハウスが事務局となり、国、自治体、生協、労働組合等との調整およびNPO災害救援ネットワークの構築も進めている。
日ごろからお互いの思いと行動を理解しておくこと 「災害が発生した際にスムーズな出動を行うための協定書の締結がまず先決です」と江口さんは力説する。実際、この会は久喜市と出動協定を結んでおり、これをひとつのモデルケースとして埼玉県および県内市町村との協定締結へと進めていくことが非常に大切だ。八都県市合同防災訓練や久喜市、蓮田市など多数の合同訓練にも参加しているとのことであった。 こうした取組が自治体の地域にとどまらず、支援に出た地域での合同捜索にも寄与するのではないだろうか。「日ごろからお互いの思いと行動、そういったものが分かっていれば、被災地に行った時もスムーズにいくのでは」と江口さんは語る。 2009年山口防府豪雨災害においては、4名の行方不明者の発見に寄与したそうだ。災害救助犬の有効性が認められつつあり、国、各県レベル・各市ごとの出動協定が締結されることによりスムーズに出動できるようになるだろう。 「すぐに捜索活動ができるということは一分一秒をあらそう命を救えるということです」と江口さんは語る。日ごろからの細かい連携プレーや合同訓練が、災害発生時に大きな機動力となり人命救助に寄与すると感じた。 |
日ごろからの合同訓練が 災害時の機動力に繋がる
岩手・宮城内陸地震で 捜索活動にあたる救助犬たち
2009年10月には 「全日本救助犬団体協議会」が 設立された
八都県市合同訓練の様子 |
☆協働相手からの応援コメント☆ |