このまちで暮らす会・むさしうらわ
互助システムの学習会
埼玉県の2009年度における老年(65歳以上)の県民全人口に対する比
率は18.99%に達している。2000年より2009年までの人口増が2
1万人弱に対し老年人口増は51万人を超え2倍以上の増え方である。要介護
(要支援)認定者も2000年度の6万5千人から2009年度には3倍近い
18万人になっている。
「生活サポート互助システム(共助の仕組み)づくり」は、2003年から
市民の福祉と医療の相談事を受け付け、さいたま市や川口市の介護事業所の全
調査、老人ホーム等の訪問調査を行なってきた「市民の福祉と医療の情報セン
ター」の新しい事業として開始された。
武蔵浦和地区にはグループメンバーがそろっていたので、生活圏ごとにお互いに助け合える有償ボランティア組
織として、「生活サポート互助システム このまちで暮らす会・むさしうらわ」を立ち上げた。代表の関根正子さ
んと事務局長の上田寧さんに話を聞いた。
介護の互助システム
この会は誰かの手助けを必要としている人が、手助けをしてくれる人に1時間につき1,000円の福祉通貨を
支払う。手助けをした人が助けてもらいたい時にはその福祉通貨を使用して援助を受けることができる。しかし、
地域が広いと助けが必要な時に助けられないことがある。そこでこのシステムを円滑に動かすために、駅を中心と
した狭い生活圏を範囲とすることと、介護保険の対象にならないことなどをサポートの対象にすることを考えた。
顔の見える人間関係を維持していくために、グループの参加人員を最大100人としている。月会費は3,000
円(会員の割り勘)で、この事務局の人件費と諸経費に使用している。
サポートシステム
この会の強みは、長年さいたま市などで高齢者福祉や医療問題に取り組んできた市民団体やNPOのメンバーが
中心となって医師・看護師、ケアマネージャー、介護福祉士などの専門家と共にハイクオリティなサポートシステ
ムを構築していること。会員同士で解決できない場合は、さらに協力会員である弁護士、税理士、建築士などの専
門家の力を借りて解決に導いている。
このシステムを始めた頃は、軽いサポートが多いのかなと思っていたが、実際に始めてみると末期癌の人のサポ
ートなど重いものも多く、そのご家族のメンタルの面でのサポートも出てきていると言う。
この互助システム事業は、2008年度「埼玉県NPO協働提案推進事業」に採択され、立ち上げのときには、県
のサポートによる学習会や講演会および広報によって大変助けられたという。2009年9月現在、互助システム
の会員数は66名にのぼっている。サポート時間も9ヵ月間で400時間以上になっている。しかし、持続する上
ではやはり会費が高いことがネックで、また、広報不足で会員が増えないという悩みがある。ボランティアをする
能力と時間、そして気持ちは大いにあるのに、この情報を知らなかったので参加できないといった人がいる。この
ような人をどう取り込んでいくのかが今後の課題である。そこで今後は狭い生活圏を生かした密度の濃いサポート
と子育ての部分にも進出して会員増を図って行こうとしている。「行政の公助、家族の自助、そしてこの会の共助
で介護保険の枠を超えて助け合いませんか」と関根さんや上田さんは呼びかける。
「今は、介護や支援は要らなくても、今後必要になる場合のときの保険として参加していただいてももちろん結
構」と会員の獲得に力を入れている。
一方「市民の福祉と医療の情報センター」では
①調べる(福祉施設や福祉業者、医療機関などの実際の姿を市民目線で情報収集)
②確かめる(収集した情報の正確性の検証のための訪問調査)
③知らせる(福祉と医療の情報共有)
を基本として、市民が自らの高齢期の暮らし方を考える「初めの一歩」となる「医療と福祉 ご近所探検」での見
学・調査によって、埼玉県南の特養や老健などの高齢者施設や有料老人ホーム、グループホーム、高齢者住宅など、
様々な施設の情報を収集し共有する取り組みを進めている。
関根さんは「福祉や医療に困ったら相談して下さい。一人で抱え込まないで一緒に考え、その解決方法を見出し
ていきましょう」と話してくれた。