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さわやか福祉の会きらりびとみやしろ

 

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「困ったときはお互いさま」 

 東武伊勢崎線姫宮駅東口の閑静な住宅街の一角に「きらり姫宮」がある。「さわやか福祉の会きらりびとみやしろ」が運営する小規模多機能ホームだ。ここで事務局長の安部晨さんに話を聞いた。

 行政の福祉サービスは税金で行われるため、その範囲・内容・回数などに制約があり、サービスを受けられずに困っている人がいる。その人々を支えるには市民が自ら助け合うしかないと考えた地域の25人が1998年に「さわやか福祉の会ハートフルみやしろ」を設立し、「困ったときはお互いさま」を合言葉に助け合い活動を開始した。会員宅と保育所間の子どもの送迎・身体介助・庭の手入れ・修理・留守宅のペットの世話など、あらゆる依頼をこなしたという。最初は会員約80名(現在は約470名)の助け合い活動だけだったが、2000年に特定非営利活動法人となり、町の委託事業「宮代町福祉交流センター陽だまりサロン」の運営を開始する。次に2001年宅老所の運営、2004年介護保険事業(訪問介護・ケアプラン)をそれぞれ開始、さらに2005年、現在の地に「きらり姫宮」が完成し、「福祉に関することで市民のためになることなら何でもやる」(安部さん談)態勢が可能になった。2006年には一時保育事業「キッズルーム」を開設し、その後、デイサービスフロアの空きを利用して地域の人たちに開放する「ふれあいサロン」も設けた。

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きらり姫宮

 kirarihimemiya2.jpgきらり姫宮内部

「ふれあい切符」で助け合い活動 

 「きらり姫宮」運営開始と同時に、法人名も「ハートフルみやしろ」から「きらりびとみやしろ」に改称。これは団体設立当初から愛唱していたシンボルコピー「いつまでもきらりびとでありたいね」にちなんだものだという。現在この会の事業内容は多岐にわたり、大まかに分類すると次の①~⑥に及ぶ。

①地域福祉サービス(助け合い活動・福祉有償運送・「ふれあいサロン」運営)

②福祉への意識啓発活動

③町からの委託事業(「福祉交流センター陽だまりサロン」運営・一時保育)

④介護保険サービス(ケアプラン作成・ホームヘルプ・デイサービス・高齢者グループホーム運営)

⑤障がい福祉サービス(ホームヘルプ・ケアホーム)

⑥「キッズルーム」運営、等々。

 この会の活動のメイン、助け合い活動とは、会員同士がサービス1時間ごとに800円の「ふれあい切符」を利用することで、先ほど挙げた以外にも洗濯・掃除・買い物から入浴・排泄の世話・散歩の付き添い・話相手など、幅広い地域サービスのやりとりをするもの。サービスする側とされる側との対等な関係を保つために、あえて有償制を取り入れている。

 

ユニークな「陽だまりサロン」

 ユニークなのが「陽だまりサロン」の運営。これは町立笠原小学校にできた余裕教室を活用して児童と障がい者や一般市民と自由にふれあう場を設ける試みだ。注目度が高く、県内外からの見学・視察も多いという。また子育てママの集まり・健康体操・さをり織り体験等の会場にもなり、近くにキャンパスを置く日本工業大学の学生たちによる「宿題おたすけ隊」の活動拠点にもなる。

 

hidamarisalon.jpg陽だまりサロン
 珍しい大学との相互支援協定 

 助け合い活動の利用実績を管理するコンピュータソフトは設立当初「さわやか福祉財団」(堀田力理事長)から寄贈されたものだったという。しかし、これはWindows95の仕様だったためやがて時代遅れとなり、トラブルが発生するようになった。そんな折、その窮状を日本工業大学に相談したところ、学長と情報工学科長が協力を快諾。2006年「情報工学総合演習」の一環として学生13人が無償でソフト開発に着手した。机上での研究開発でなく実際の福祉の現場で必要とされているという明確な目標が同学の掲げる「実践的エンジニアの育成」という開学理念に適うため、同学はやがて「きらりびとみやしろ」との間で継続してソフトの維持・メンテナンスを行う等幅広い相互支援協定を結ぶまでに至った。

 NPOと大学との間でのこうした相互支援協定は全国的にも珍しいものだという。

 日本工業大学は1967年宮代町に開学後、町との間に「災害時相互協力協定」を結ぶなど地域との連携を強めているが、「きらりびとみやしろ」は、環境系教職系の学生たちの実習やインターンシップに協力している。また、建築学科の学生たちが福祉施設の建築設計について共同研究するのに対し、情報の提供も行なっている。今後の活動や協働の展開について安部さんは「これからも活動を通して地域に根ざした、地域の人が安心して暮らせる町づくりを目指します」と力強く語った。

 

☆取材を終えて☆

 取材の後、見送りに出てくれた安部さんが初秋の陽射しの中、辺りを指差しながら「何年か後経営が安定したら、あそこには今後確実に増える独居の方のためのグループリビングを、こちらには現在2カ所に分離している事務所を統合する建物を建てて…」と将来設計を楽しそうに語った。地域の人々の笑顔を守るため、どうぞいつまでもお元気で。 

 

☆協働相手からの応援コメント☆ 
日本工業大学常務理事・総務部長 藤田則夫氏
 日本工業大学は1967年、埼玉県宮代町に「実践的技術創造人材の育成」を教育の理念として開学しました。「きらりびとみやしろ」における学生参画によるソフトウェア開発は、まさに本学の掲げる「実工学」教育を具現するものです。また、本学は、地域との結びつきを大切にしていきたいと考えております。「きらりびとみやしろ」との協定締結をはじめ、地域・自治体・学校等ともさまざまな面で協力体制を構築してきております。今後とも一層、地域との連携を深めて参りたいと考えます。