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埼玉いのちの電話

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どんな悩みが? どんな相談が?

 「埼玉いのちの電話」事務局に事務局長の角尾さんと事務局スタッフのSさん、Oさんを訪ね、お話をうかがった。話題はまず「いのちの電話」に寄せられる相談の内容について。

 2008年1年間の相談件数は23,705件。内容としては「人生」「家族」「夫婦」「対人」「保健医療」などである。うち、3,044件が「死にたい」という気持ちを訴える電話(自殺志向)で、全相談件数の12.8%にあたるという。その理由を内訳で見ると、突出しているのは、「人生」に関する悩み(1,453件)と「保健医療」に関する悩み(1,088件)だ。しかし、Sさんによれば「人生の悩み、保健医療の悩みなど単独の悩みを訴えてくるものばかりでなく、いくつかの悩みが複雑にからみ合った相談が最近多くなっています」とのことだ。複合的な悩みのもつれを自力で解けない時、「いのちの電話」にかけてくるのだろう。また、ひとりの人が同じ悩みを何度もかけ直してくるケースひとりの人が複数の悩みを同時に相談してくるケース、電話で聴くだけでは済まされない現実的な対応を迫られるケースなども多くなっている。

 自殺志向率が年々上昇している現在、厚生労働省の助成を受けて、国内の「いのちの電話」50センターが協力し、毎月10日午前8時より24時間のフリーダイヤルで「自殺予防いのちの電話」を行っている。ここにかかる電話の3割以上が自殺志向の相談だ。相談員は、容易には癒されない心の悲鳴に耳を傾けながら、やがて電話のかけ手が話し尽くすことによって、自ら「とりあえず今日は生きてみよう」と思える時を待つ。

 「そんな電話を受け続ける相談員の皆さんのメンタルケアは?」と問うと、角尾さんは「相談員のケアシステムは用意されていますが、それで十分ということではないので、今後も大事にしていかなければならないと考えています」と語った。

tsunaga09_inochinodenwa1.jpg事務局オフィス

相談員がもっと増えれば

 「埼玉いのちの電話」では開局以来、現代の不安な状況に対応すべく、①いつでも、だれでも、どこからでも…受け続けられる24時間体制の受信 ②18歳以下の子どものための「こどもライン」開設などを行っている。さらに、相談員の増員のため県内各地で毎年定期的に募集説明会を開催している。相談員になるためには、まず体験学習を中心とした研修が1年半行われる(研修費は自己負担)。認定を受けた後、無報酬のボランティアとして活動する。

 「相談員が増えれば、つながりにくい電話もつながりやすくなるかもしれません」と率直な期待を語るSさん。「やっと、つながった」と喜ばれる言葉の背後には、その何倍ものつながらない電話がある現状をいちばん憂えているのは、スタッフの皆さんなのだと実感させられるひと言だった。

tsunaga09_inochinodenwa2.JPG電話で相談を受けるスタッフ

他団体との連携を重視

 「埼玉いのちの電話」を運営面で支えるのは個人・団体・後援会からの寄附が大きく、全体の約7割を占めている。その他、相談員研修の受講料収入が約1割強、赤い羽根共同募金分配金が約1割強と続き、毎年1回開催するチャリティ映画上映会の収益と年10回前後開くバザーの収益、市・社会福祉協議会からの補助金などが残り数パーセントを占めている。

 自殺には、いじめ、多重債務、過重労働、うつ病、介護疲れ、リストラ、虐待、差別、育児の悩みなど日常的な複数の問題が要因となっていることが多く、このことからも他団体との連携は大変重要だ。「埼玉県立精神保健福祉センター」や「さいたま市こころの健康センター」も、いのちの電話と同様の電話相談を受け付けており、「いのちの電話」は両センターとの情報交換も行っている。

 さらに、「埼玉いのちの電話」では、自殺要因となる多重債務、介護等の特集記事を通じて他機関の活動及び連絡先等の紹介を行っている。これからも地域の連携を通じて自殺の予防に取り組んでいこうとしている。なお、「埼玉いのちの電話」では毎年定期的に電話相談を受けるボランティアを募集しているとのことなので関心のある方はぜひお問い合わせいただきたい。

 

 ☆協働相手からの応援コメント☆
埼玉県立精神保健福祉センター 精神保健福祉相談・自殺防止対策センター
 ライフラインとして、長い間多くの人の心の声を受け止めてくださっている「いのちの電話」の皆様と、ようやく顔の見える話し合いの場を持つことができつつある。自殺対策が主要な業務になりつつある精神保健福祉センターとしては、ずっと先を行く先輩として「いのちの電話」の方々から教えていただきたいことがたくさんある。「いのちの電話」からお声がけいただいて、連絡会に4人でお邪魔したり、研修会に当センターから、相談に携わる職員が3分の1ほど参加して、相談員さんたちと具体的なお話をする機会を持つことができた。今後とも、センターがどんな仕事(相談)をしているところなのか、ご理解いただいてご活用ください。