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ハンズオン埼玉

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 「ハンズオン埼玉」は、2005年9月に法人の認証を受けた。2004年6月から準備会を設立し、組織と組織をつなぐNPOの「中間支援団体」として活動している。 

 埼玉県には「自分のまちが好き!」という人が少ないといわれる。東京へ通ういわゆる埼玉都民のまちになってしまい「ここが自分のまち、生活の場」という意識が希薄という意味だ。この会では、市民参画型のまちづくりに取り組んでいる。一人ひとりの市民が、まちを見て・触れて社会や地域の課題の解決に向けてプランを出し合う。そのための調査研究や政策提言、そして市民参画型のプログラムづくりと推進、また非営利組織の運営の支援も手がけている。

 

まちを見よう、まちに触れよう

 「まずは、自ら口や手を出して、新しい風を起こすんです。それも楽しくさまざまな立場の人が関われる工夫は欠かせません。楽しみながら活動していると、行政や企業をはじめ、いろいろな組織とのコラボレーションが生まれます」と事務局長の若尾明子さんの弁。まちにある問題一つひとつをきちんと見つめ、実践するためのさまざまな「しかけ」と「しくみ」をつくっていく、誰もが自分の人生やまちの未来について、自らがそれを決定する当事者であると実感できるような社会をつくっていくこと。この会の活動の趣旨はそこにある。

 「楽しく、さまざまな立場の人が関わる工夫を」と主張するだけに、この会の事業はとても楽しそうだ。企画・運営するスタッフには、苦労や悩みがあるかと思うのだが、取材では楽しい話ばかりを伺ったため、NPO活動にありがちな重苦しさは感じられなかった。とにかく周囲の人を上手に巻き込んでいる。参加者を「お客様」にすることなく、地域の課題を解決する担い手として関われる工夫をこらし、スタッフとともに参加者が楽しむようにしている。

 

おイモを焼こう…お父さんの子育て参加とゆるゆるパパ友づくりの輪

 どちらかというと、母親は父親に比べて、公園、幼稚園、学校での保護者つながりなど、地域に溶け込む機会が多い。父親は会社の同僚との付き合いが中心で、ご近所付き合いは妻にお任せし、地域に友人と言える人が少ない人が多いようだ。そんなお父さんたちを地域に引っ張り出すための仕掛けが「おとうさんのヤキイモタイム」。父親の子育てを応援するイベントだ。これは毎秋、埼玉県福祉部少子政策課との協働で行い、2009年で5回目を迎えた。開催場所も年々増えて、2008年度は103ヵ所で参加者が1万人を越す盛況ぶり。この事業の趣旨に賛同した生活協同組合ドゥコープから、ヤキイモタイム用にサツマイモ1トン(10kgを100ヵ所分)を寄附してもらっているそうだ。

 おやじの会や保護者会など、お父さんたちが地域でグループを作って、焼き芋という共同作業をしながらみんなで苦労を分かち合うなかで、お父さんの輪も広がっていく。焼いたおイモがうまい!地域に自分が関わってみれば、自ずとそのまちが好きになるだろう。

 

クッキーでつながる人々の輪 

 もう一つ、この会が取り組んだのが、みんなで集まって、力を出してプレゼントしたくなるクッキーを作ろうというクッキープロジェクト。「おいしい」をみんなで作る楽しいプロジェクトで、福祉作業所の商品開発を支援するというものだ。埼玉県内でも、多くの福祉作業所でクッキー作りが盛んだ。同プロジェクトでは、そのクッキーのパッケージやデザイン、味などを2007年秋から、さまざまな立場の人とともに、連続講座を通じて研究してきた。参加者はシェフ・デザイナー・学生・主婦・NPOなどで、クッキーによるうれしい輪が広がっている。2008年2月、県内でクッキー作りに取り組む

 11作業所とともに、同プロジェクトの成果発表会として、クッキーバザールを浦和駅前のショッピングセンター「浦和コルソ」で開催。出品団体は11団体に加え、技術指導を担当したパレスホテル大宮のシェフらもチャリティークッキーを出品した。2日間の来客数は600人を超え、商品2,000点、総額40万円、2008年度は参加団体が13団体に増えて、108万円を売り上げることができた。作業所のメンバーもシェフもボランティアもみんなが“ まぜこぜ” になってバザール会場を盛り上げた。1年目は埼玉県の助成金と寄附金と講座の参加費収入で運営したが、今後どのように自主事業として採算をとっていくかが課題となっている。でも成果は何といっても、これまでの福祉との接点がなかった人と、作業所との出会いの場をつくれたことと、若尾さんは笑顔で話した。

 

CSRの最新状況を調べる「みかんプロジェクト」

 “みらいのかいしゃかんがえる”…頭文字をとって「みかんプロジェクト」。ちょっとしゃれたネーミングだが、その活動内容は意外なことに、企業のCSRの社会貢献活動の支援というお堅い内容だという。同プロジェクトは、この会がさいたま市の市民提案型協働モデル事業に応募し、行政とNPOとの協働で立ち上げたプロジェクトで、さいたま市内のお店や会社などの社会貢献活動・CSRの最新情報を調べてゆくというもの。寄附や場所提供、社員によるボランティア活動などに代表される社会貢献活動、環境に配慮した商品の開発、ワークライフバランスの推進、本業を生かした地域活動など会社やお店の地域社会とのさまざまな関わりを調査し、2008年3月には、それらを紹介するCSR事例集を発行した。また毎年3月に、さいたまCSRフォーラムを開催している。ちなみにCSR(Corporate Social Resuponsibility) とは「企業の社会的責任」のことをいう。

 これからも地域の市民活動の後押し役、けん引役として楽しく活動を続けていってほしい。

 

 

父親の子育てを応援する「おとうさんのヤキイモタイム」は年々盛況になっている

 

 

クッキーバザールでは、作業所メンバーもシェフもいっしょに売り場を盛り上げる

 

 

「さいたまCSR事例集2008」
DVD版、発行元/さいたま市市民局
市民部コミュニティ課市民活動支援室
企画・編集/ハンズオン埼玉