ふじみの国際交流センター
「ふじみの国際交流センター」は、ふじみ野市に拠点を持つ外国人支援団体である。ふじみ野市、富士見市、三芳町を中心としたエリアで居住している中国、フィリピン、韓国、中近東、アジアからの外国人たちが言語、法律、教育の問題など生活上で困ったことを相談できるところとして県内でも名高い。 約14年にわたる日本語の指導や、7ヵ国語で表記された多言語生活情報誌の発行など日々の活動は、不安材料を抱える外国籍の人たちを地道に支えてきた。また、近年は県の業務委託として外国人女性を対象としたDV(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)被害のシェルター運営に取り組んでいる。 このセンター設立の原点は理事長の石井ナナエさんによると大井町日本語教室だったという。 石井さんは、この教室を通じて外国人たちが抱えるさまざまな悩みや問題に直面した。法律のこと、言葉のこと、子どもや夫のことなどを自由に話したり、外国人が集い、日本人と交流できる場所の必要性を強く感じたという。そこで1997年に交流拠点設立の準備を進め、1998年4月に任意団体の「ふじみの国際交流センター」が誕生。2000年に法人の認証を受けた。 受益者である外国人からの収入は見込めない。今もスタッフは全員無償。外国人支援という心労が多いセンターの活動を思うと頭が下がる。
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中学生・高校生のボランティアを体験 在日外国人に対するボランティア活動はだいぶ知られるようになったが、理解があるとは言いがたいし、偏見もある。そこで同センターでは毎年、地元の中学・高校生を対象にボランティア体験のイベント「彩の国ボランティア体験プログラム チャレンジ!ディスカバー・ワールド」を開催している。これはふじみ野市社会福祉協議会との協働事業で2009年では、初日は在日の外国人小・中学生の日本語教室やボランティア体験するというもの。2日目は、外国人と一緒に食材の買い出しから始まる料理作りで話を聴く…とまずは、身近なところから異文化体験を行うのである。 「こんな小さな体験がベースになり、彼らが大人になったとき外国人に対する偏見がなくなるといい」とスタッフは語る。
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ディスカバー・ワールドで餃子づくりを |
外国籍児童のための日本語教材ソフトを大学と作る 当センターでは、大人と子ども向けにそれぞれ日本語教室が週1回開催される。同時にホームページには外国籍児童のために基礎的な日本語教材ソフトを無償でダウンロードできるようになっている。 このソフトを開発したのは、埼玉県宮代町の日本工業大学工学科の学生たち。3年生だった2008年から1年かけて作り上げ、2009年3月にホームページで公開された。今も開発が続いているこの協働のきっかけは、埼玉県が呼びかけたNPO・大学シンポジウム実行委員会での出会いだった。同学科は授業のなかで「地域社会の情報化に貢献」することを掲げ実践していた。IT教育のアシスタント活動は常に行われ、地元宮代町の小中学校での児童・生徒の指導は評価が高かった。 この会のスタッフから日本語指導が必要な外国籍児童の増加や教材の不足を聞いた大学の大木幹雄教授と学生たちが授業の一環としてソフト作りに取り掛かったという。こうして大学と「ふじみの国際交流センター」との交流が頻繁に行われるようになった。 教授と学生たちは、日本語指導の現場を何度も見学した。スタッフからも必要な機能や要望、子どもたちの持つ興味などを聞き取り、学習方法検討して教材作りに取り組んだ。日本で生活していく上で必要な文字や数字・単語などが明るい挿絵入りで作られている。動物や品物の絵や文字をクリックすると音声が流れる。発音もゆっくりとわかりやすい。書き順に添って練習したり、○×形式で答えを選んだり…。そして動きのある画面は子どもたちをあきさせない。日本語ゼロの大人にもこういうわかりやすいソフトは教材として最適といえる。
今後の課題はスタッフの経費を出せるような活動も
先にも触れたが、助成事業などを除いて基本的にはスタッフは無償。 行政からの業務委託や、企業や個人の寄附などに頼るところが多いのだが思うようには集まらないのが実情のようだ。若い人たちの参加も希望し、活動を継続していくためには、スタッフが負担している経費はもちろんのこと、費用弁償できるようにしていくことが今後の課題だという。確かに善意やポリシーのみでは活動は続かない。 これからますます必要とされていくこの会のような活動を社会で大いに理解されていくことを期待したい。
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中国語教室で先生を囲んで | 毎月発行される外国籍市民のための生活情報誌 |
☆協働相手からの応援コメント☆
滞在上の法律的な問題や子どもの教育、住居、職業、生活習慣、経済的問題等々、外国人が日本で暮らすには、多くの日本人の暖かい支援が必要です。この「チャレンジディスカバーワールド」事業は、試行錯誤を繰り返しながら5年目を迎えましたが、参加した中学生は皆「共生」という言葉の意味を実感して日々の暮らしの中に活かしてくれ散ると確信しています。 |