サイト内検索
トップページ > 活動レポート > 共助社会づくり課による取材 > 平成21年度協働事例集 > コ・ラ・ボ埼玉

コ・ラ・ボ埼玉

tsunaga09_collabo.png

「心の相談室コ・ラ・ボ」 

志木市の閑静な住宅街に、学校に行けない子どもたちが通うフリースクール「特定非営利活動法人むさしの学園」があり、そしてここに「コ・ラ・ボ埼玉」がある。どちらも代表理事は望月泰宏さん。望月さんは「むさしの学園」内に内部相談部門「しき教育クリニック」を設置して不登校・いじめ・発達障がいなどの悩み相談に応じていたが、社会的に深刻の度を加える家庭環境・教育環境の悪化を背景に相談の範囲が自学園の枠を超えて地域一般に広がるようになり、これに充分な態勢で臨むため「コ・ラ・ボ埼玉」を設立したのだった。

 この会の基本的活動は「心の相談室コ・ラ・ボ」(以下「心の相談室」)、「子育てに悩む親の連絡会」、「公務員塾」の事務局運営。前述の「しき教育クリニック」の活動を継承するのは「心の相談室」だ。相談は毎月1回。予約制で無料。会場は「志木ふれあいプラザ」。相談スタッフは精神科医、臨床心理士、作業療養士、精神保健福祉士、フリースクール・フリースペース職員、発達障がいの子の家族など多彩な顔ぶれが揃う。

 

 30~40代からの相談も歓迎 

 「心の相談室」にはユニークな点がいくつかある。まずは相談者1人に必ず2~3人の相談員が対応する点。望月さんは「各相談員がそれぞれ自分の専門的な視点からアドバイスすることによって多角的な解決策が提示できるメリットがある。よそはだいたい1対1の相談形式。私たちの方式は全国で初めてでは」と胸を張る。

そして「たとえばひきこもりの子を持つ親は、どこに相談に行けばいいか分からない。行ってもたらい回しされるなどで、皆さん一人で悩むんです。心療内科に行ってもなかなか解決しないケースが多い。家族の理解がないとその子どもは家族からもひきこもってしまうので、家族関係にも目を配らないといけない」と指摘する。

 また相談の継続性を重視する点もユニークだ。児童青年期の心の問題には長いスパンで取り組む必要があるとしてリピーターを歓迎し、相談の対象年齢に上限を設けていない。30~40代の相談者もいるという。

「行政は義務教育期間中は教育委員会、その後18歳までの相談なら児童相談所、18歳を超えると保健所の精神保健課が窓口なので年齢で断絶がある。相談の継続性を重視する私たちの観点から言えば、これはおかしい」と望月さんは言う。

 「子育てに悩む親の集い」連絡会は2003年の発足し、県南の各市で1~2カ月に1回定期的に開催される。2004年は「子育てガイドブック」を発刊した。

また、「公務員塾」は2005年発足。これは公務員同士切磋琢磨し、未来の公共のあり方について自ら探っていく場を提供するもの。年2~3回開催する。毎回50人ほどが参加し、全国から気鋭の行政職員が集まる。 

 

コ・ラ・ボ埼玉事務局ビル.jpgコ・ラ・ボ埼玉事務局ビル

代表理事望月さん.jpg代表理事の望月さん 

「新しい相談機関を」の想いから

 「心の相談室」は朝霞保健所との全面的な協働事業だ。昨今、児童相談所や保健所は様々な課題への対応で多忙を極めている。朝霞保健所とパイプを持っていた望月さんが保健所職員と相談して話をまとめ、保健所は精神保健センターなどの行政職員に協力を要請し、望月さんは民間で精力的に活動している仲間に呼びかけて開設した。その際、望月さんはマスコミにも働きかけて「心の相談室」の開設をアピールしたのだという。しかし、子ども・若者に係る様々な課題の相談に対応している仲間たちの「現状以外の相談機関が必要!」という想いが開設できた一番の要因と強調する。

 「コ・ラ・ボ埼玉」の課題についてお聞きした。望月さんは首を傾げながら「課題ねえ。NPOはどこもそうだけど高齢化が課題です。若い人たちが活動に参加してほしいです。そのためにも若い人たちが集まる魅力的なNPOでありたいと願っています。協働相手のほうも人手不足だからとすぐに要員増が見込める情勢でもないし」と活動の規模拡充については楽観していない様子。しかし「広報の問題もある。『心の相談室』開設当時こそマスコミ報道のお陰で相談が多かったが、最近は取材も少ないので、何か他に広報の手段を考えないと」とあくまでアグレッシブ。そして「悩む人たちにどんどん利用してもらうのがいちばんいいことです」と締めくくった。

 

☆協働相手からの応援コメント☆

埼玉県朝霞保健所保健予防推進担当

 児童・青年期のひきこもりや不登校の問題は、近年ますます増加傾向にあり、問題も深刻化しているように思われます。「心の相談室」に訪れた人たちから、「どこに相談していいかわからなかった」「相談に行ってもたらい回しにされて終わった」という言葉をよく聞きます。問題が認識されず、時間だけが過ぎてしまったり、せっかく相談に行っても窓口の対応によって、せっかくの介入機会を失っている状況があることがわかります。こういった状況を少しでも無くそうと、「心の相談室」では、面接に際して多職種が組んで対応しています。面接者が1人ではないため多角的な意見が出て、今後の援助の方針や他機関への調整が立てやすかったり、相談者へのアドバイスもその場でいろいろと行うことができ、非常に大きな利点がたくさんあります。新しい面接のスタイルと言えるかもしれません。朝霞保健所とNPOの協働事業は、様々な人たちの援助や協力により成り立っています。今後も相談者や当事者が、「心の相談室」を通じて、少しでも本当の笑顔が取り戻せるような取り組みを地道に続けていきたいと思っています。