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さいたまチャイルドライン

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チャイルドラインとは 

 子どもをとりまく環境は年々悪化し、問題は深刻化している。いじめや対人関係をはじめ、不登校、引きこもり、虐待、性の悩み…子どもたちの声に耳を傾け、子ども自身が解決への足掛かりを見つけていくために、気持ちに寄り添いながら日々電話に応じているのが、18歳までの子ども専用の電話「チャイルドライン」だ。子ども自身が何か困ったことがある時、また誰かに話を聞いてほしい時にかけてくるNPOの電話である。18歳までの子どもなら誰でも電話をすることができ、通話料無料のフリーダイヤルとなっている。

 「名前は言わなくていい」「秘密は守る」「どんなことでも一緒になって考える」「嫌になったら切っていい」の4つの約束で子どもの心の声に応えているチャイルドラインは、37都道府県に66団体存在する全国的なネットワークである。埼玉県で活動する「さいたまチャイルドライン」の太田久美さんにお話を伺った。

 

 もともと「チャイルドライン」は1970年ごろ北欧に始まり、日本のチャイルドラインはイギリスをモデルに始まった。イギリスでは、その電話番号を知らない子どもはいないという民間の子ども専用電話だ。日本でのスタートは1998年。きっかけは前衆議院議員の保坂展人さんがイギリスの「チャイルドライン」を紹介し、世田谷の市民団体がイギリスまで視察に行ったことから始まった。当時の文部大臣であった小杉隆さんや、前官房長官の河村建夫さんもイギリスまで視察に訪れ、1998年に国会内に「チャイルドライン設立推進議員連盟」を設立(現在は、チャイルドライン支援議員連盟。会長:河村建夫代議士、幹事長:馳浩代議士、事務局長:小宮山洋子代議士)。同年「特設チャイルドライン」が東京世田谷で行われることとなり、翌1999年には、日本に「チャイルドライン」を作るための支援を行うNPOとして、「NPO法人チャイルドライン支援センター」が設立された。その後全国に広がり、子どもたちを支援していくための運動体として活動し、「NPO法人チャイルドライン支援センター」のネットワーク組織で、全国統一番号・フリーダイヤルを実現している。

 

子ども自身が解決方法を見つけることを支援する

 「チャイルドライン」の基本は、大人側から子どもたちに対し、指示や一方的に問題解決の方法は示さないことだそうだ。子どもたちの話を聴いて、子ども自身が解決方法を見つけていくことを重要視し、子ども自身がエンパワーメントしていくことをサポートしている。子どもがかけた電話は、発信県の「チャイルドライン」に優先的に着信するが、話中などの場合は他のチャイルドラインに接続される。現在一日に600件を超える電話が着信している。なかなか繋がりにくい場合もあるが、複数回のアクセスで80パーセント以上は着信している。(中には10回近く電話してやっと一回つながるといったケースもある。)昨年度は全国で180,311件の電話が着信し今年度は20万件を大きく上回る状況にある。昨年度の着信の内16,229件を「さいたまチャイルドライン」で受けていて、それは全国の着信数のおよそ1/11にあたり、毎日絶えることなく着信している(電話の開設時間は午後4時~9時)。各地の「チャイルドライン」はそれぞれ自分たちで運営費を賄なっていて、「さいたまチャイルドライン」も寄附金により運営されている。「チャイルドライン支援センター」では複数の企業や一般市民などの支援を得てフリーダイヤルや広報費用を捻出している。なかには、子どもたちを支えていきたいという支援を自発的に申し出る企業もあるという。

 

すべての子どもたちが幸せになるために

 「チャイルドライン」は多数の市民に支えてもらう団体になることを望んでいる。大きな援助をいただくことももちろん嬉しいし大切だが、子どもたちを自分の出来る形で支えていきたいと願う、多くの市民の方たちを増やしていくことが重要だと太田さんは話す。その面では、ボランティアをしたいと願う市民の存在が大切で、毎年電話の受け手の養成を行っている。

 子どもたちは自己肯定感が低い。そういう電話が毎日数多くかかってくる。その原因はどこにあるのだろうか。こういう子どもたちが社会に放り出されていくわけで、企業に入っても働くこと自体、困難を伴うだろう。子どもが大人になれる…そのための子育ては親の責任ばかりではなく、企業や行政も含めた社会の課題ではないか。わが子の幸せを願うのは、親として共通の思いだろう。しかし、親は子どもの一生に付き合い守ることはできない。わが子が暮らすその世代や社会全体が安全で安心でなければ、わが子の幸せさえ守れない、と太田さんは話す。

 また「チャイルドライン」では、子育て中の親のサポートも必要だと考え、週に一度子どもをもつ親たちの悩みを聴く「子育てライン」を行っている。親が子育てにキリキリしていると、子どもに影響が及ぶ。極端な例が虐待だ。父親や母親たちが話をすることでホッとしたり、違う価値観との出会いで安心できることはたくさんある。

 子育てを母親だけに任せるのではなく、企業人として、父親として、人間として、それぞれの立場で子どもたちをサポートしていく。そんな世の中になったら、きっと子どもたちは、きちんと大人になれる、人間に成長していけると思っている、と太田さんは話した。

 

☆取材を終えて☆
「子どもたちは、自分を分かって欲しいと思っているんです」取材をさせていただいた中でこんなお言葉を聞いた。それは子ども時代に教育を押し付けられたり、言うことを聞かないと見捨てられたりする不安がつきまとっていることが発端となっているのかもしれない。自分を変えていけるのは結局自分しかいない。だが今の日本の社会は人の心が離れやすくなっているため、人を信じにくく、自分すら信じられなくなるのではないだろうか。子どもの社会は日本の社会の縮図のような気がしてならない。そんな折に、子どもたちが自分の力で解決方法を探る手助けをし、また多くの大人たちがこういった問題に真剣に向き合い支えていくことが、本当の意味での支援ではないだろうか、と深く考えさせられた。