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特定非営利活動法人 エコ.エコ

 首都、東京都の隣接県でありながら、県土の3分の1を自然公園が占めるなど、緑豊かな環境が残存する埼玉県。中でも、川口市からさいたま市の1,260haにかけて広がる「見沼田んぼ」は、首都圏に残る貴重な大規模緑地として知られています。
 平成26年には、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟が実施する、地域の文化・自然遺産を未来に伝える市民の活動を登録する「プロジェクト未来遺産」に、「首都圏の大規模緑地・見沼たんぼを100年後の子ども達に残す」プロジェクトが登録されました。
 貴重な自然を守り後世に伝えるため、市民団体や教育機関が連携して保護活動に取り組んでいる見沼田んぼ。
 今回の活動レポートでは、上記プロジェクトにも参加し、見沼田んぼの環境保全や自然教育活動などに取り組むNPO法人エコ.エコ(以下「エコ.エコ」)代表理事の加倉井憲一さんと、副代表理事の加倉井範子さんにお話を伺いました。

共助社会づくり課
「エコ.エコは見沼田んぼ地域の湿地の保全活動をされていると伺いました。活動を始めたきっかけについて教えてください。」

エコ.エコ 加倉井憲一さん
「エコ.エコが保全している見沼田んぼ地域の湿地には、コガネグモ(大型のクモの仲間)やハンゲショウ(ドクダミ科の植物)など多くの希少な動植物が数多く生息しています。中でも、埼玉県レッドデータブックに掲載され、将来絶滅が危惧されているニホンアカガエルを保護するために活動を始めました。
 現在はこういった希少種の保護活動に加えて、子供たちに向けたイベント開催など、見沼田んぼを知ってもらうための活動も行っています。」

黄色い横線が特徴的なコガネグモ 小さな白い花が集まるイヌヌマトラノオ

黄色い横線が特徴的なコガネグモ       小さな白い花が集まるイヌヌマトラノオ


共助社会づくり課
「子供たちに向けてどのようなイベントを企画されているのですか。」

エコ.エコ 加倉井範子さん
「月に一度、『里山.com』と『自然観察会』の二つのイベントを開催しています。『里山.com』では、畑を使ったジャガイモやサツマイモの収穫や焼き芋、葦を使った龍神作りなどを体験します。『自然観察会』では動植物の観察を通して自然の大切さや不思議などを子どもたちとともに体験しています。
 自然観察会は日中に実施することが多いのですが、エコ.エコの設立当初から夜間の観察会『ナイトハイク』も実施しています。
 今年の『ナイトハイク』では、セミの羽化の観察会と夜活動するクモの観察会を企画しました。セミの羽化の観察会は、セミの羽化を見たことがない若い保護者の方や子ども達に、例年大好評です。」
※龍神・・見沼田んぼには龍が住んでいたという伝説が語り継がれている。

共助社会づくり課
「子供たちに向けたイベントの開催において、力を入れている点はありますか。」

加倉井憲一さん
「そのイベントで扱う動植物などの専門家に講師を依頼するという点に力を入れています。私たちエコ.エコのスタッフが子供たちに昆虫や植物のことを教えることも可能ですが、子供たちにはその道のプロである専門家と接してもらいたいと考えています。専門家の方の話は子供たちも夢中になりますし、エコ.エコのスタッフにとっても参考になります。ただ、イベント開催毎に講師料が発生するので生協やさいたま市ふれあい福祉基金などの助成を受けて費用を補っています。講師料を始め、資金面の悩みを抱えながらも活動を継続できているのは、協力してくださる個人や団体の方のおかげだと思っています。」

葦で出来た龍神マルコ(マルコとはエスペランド語で湿地を意味する) さいたまトラスト1号地の竹林

葦で出来た龍神マルコ            さいたま緑のトラスト1号地の竹林

共助社会づくり課
「実際の活動にあたっては、どのような個人や団体の方から協力を得ていますか。」

加倉井範子さん
「エコ.エコは、会員、準会員、賛助会員といった会員の方々の支援・協力で、活動を継続することができています。また、公益財団法人さいたま緑のトラスト協会(以下「トラスト協会」)や、地元の農家さんが運営する野菜販売所「みどり販売所」、埼玉県さいたま農林振興センター、活動資金を助成していただいているサイサン環境保全基金、公益信託武蔵野銀行みどりの基金など、多くの団体や組織の援助を得て活動を進めています。中でも、トラスト協会とはお互いに人員を提供したり、農具を貸し出したりするなど、密に連携を取っています。
 またエコ.エコとして活動を始める際には、「了解なく土地に立ち入られた」という苦情などにつながらないよう、予め見沼の地権者の方に環境保全活動への御理解をいただいてから保全活動を開始しました。地権者に保全活動の定期的な報告を行い、信頼していただけるように努力しています。」

共助社会づくり課
「エコ.エコのイベントは、申込の段階で参加者数が定員に達することが多いと伺いました。多くの方のイベントへの参加を募るために、どのような広報を行っているのですか。」

加倉井範子さん
「団体独自のホームページや、ツイッター・フェイスブックといったSNSでの広報はもちろんのこと、エコ.エコの日々の活動を紹介するニュースレターを定期的に発行するなど、常日頃から情報発信に努めています。また、不定期ではありますが、主婦向けに発行されているコープみらい(生協)の広報誌『さいたまインフォメーション』に、記事を掲載していただいています。
 広報誌に観察会の御案内を掲載いただくようになったおかげで、エコ.エコの活動に参加してくれるようになりました。
 一方で、現在の懸案事項は時期によって参加者数の増減が激しいということです。夏休みなどの長期休暇中は、多くの子どもがイベントに参加してくれるのですが、寒い季節になると参加者が減ってしまいます。四季を通して自然を知ってもらえるように、魅力的な企画を立てたいと考えています。」

共助社会づくり
「現在、見沼田んぼ地域の湿地の保全状況はどうなっていますか。」

加倉井憲一さん
「見沼の景観は、田んぼ・斜面林・用水路の3つの要素で成り立つと言われています。しかし、そのすべてが十分に維持されているとは言い難い状況です。
 かつて、見沼田んぼには130か所の斜面林がありましたが、現在ではその30か所が公園や住宅地になり、姿を消してしまいました。また、昔の用水路にはコンクリート護岸がなく、水が田んぼに漏れだすことで、環境が保たれていたのではないでしょうか。現在、さいたまトラスト1号地周辺の用水路はコンクリートで護岸されていないため、江戸時代から続く見沼田んぼの自然や風景が残ってると思います。」
※さいたまトラスト1号地・・さいたま緑のトラスト基金によって取得した県内13か所あるトラスト地の1つ。

下流に向かって左岸(コンクリート護岸されていない) 下流に向かって右岸(コンクリート護岸されている)

下流に向かって左岸(コンクリート護岸されていない) 下流に向かって右岸(コンクリート護岸されている)

共助社会づくり課
「エコ.エコの将来のビジョンや、目標を教えてください。」

加倉井憲一さん
「ここ南部領辻(さいたま市緑区の北東部に位置する地名)は大宮駅からも浦和駅からも距離が遠いことが幸いし、多くの自然が残っています。貴重な自然・風景が残っていることは周知のとおりですが、動植物の生育状況など、見沼田んぼの保全の価値に関わる具体的な事項については、未だに解明されていない点が多々あります。そこで、今後の活動としては、専門家の力を借りながら湿地の調査を進めることで、見沼田んぼがいかに重要な場所であるのか、裏付けをはかりたいと考えています。
 エコ.エコの最終的な目標は、現在保全活動を行っている場所の土地を購入し、公有地化することです。目標達成のためにも、見沼田んぼの重要性をたくさんの人に知っていただき、より多くの方の賛同を得られるよう、地道に活動を続けていくつもりです。」

加倉井さん御夫妻 トラスト一号地の手作り看板

加倉井さん御夫妻              トラスト1号地の手作り看板

活動レポート

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