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特定非営利活動法人 グリーンパパプロジェクト

 2017年度発表の男性の育児休業取得率は調査以来過去最高。今、育児にもっと関わりたいという男性は多く、また、制度改正によって男性も育児休業が取りやすくなりました。
 父親の育児参加が家族にもたらすメリットはとても大きくその環境づくりも少しずつ進んでいます。とは言え、まだまだ子育てを理由に会社を休みにくかったり、長時間労働の削減等の働き方改革も始まったばかり。パパたちを取り巻く環境は依然として厳しく大変です。
 今回は、そんなパパたちに、自然と触れ合い働き方を見直すきっかけを提案している特定非営利活動法人グリーンパパプロジェクト(以下GPPと記述します。)の代表理事吉田大樹さんにお話を伺いました。

ワークショップ参加者と記念撮影、20名ほど大人の男女と子供

SAITAMA子育て・働き方未来ワークショップの参加者一同と代表理事吉田さん(前列右)

  • 共助社会づくり課
    「NPO活動のきっかけについてお聞かせください。」
  • GPP吉田さん
    「小学校三年生から上尾市で育ち、結婚を機に市内の団地に住むと、その近くに『NPO法人彩の子ネットワーク』の『つどいの広場』がありました。私はもともと、家事や子育てもどんどんやりたいと考えていて、育児休暇も取得するなどしていましたが、『彩の子ネットワーク』の『こども☆夢☆未来フェスティバル』の実行委員会に参加したことで、地域の子育ての担い手としてパパたちの存在感の無さに気が付きました。」

  • 共助社会づくり課
    「その後、父親支援のNPO活動に参加されていますが、
    『グリーンパパ』のキーワードはどのようにして生まれましたか。」
  • GPP吉田さん
    「私は当時、労働関係の出版社で記者をしており、父親が働き方を変えなきゃいけない、子育てに父親が携わっていく必要性があると強く感じて、父親を支援するNPO法人に入会。活動するうちにそのNPO法人の代表理事を務めることになりました。発言力のある大きな団体でしたが、現場を持ってないためパパ一人一人への働きかけ不足を感じてもいました。それには具体的な活動が必要だと。

     10年ほど前、当時の政府が緊急経済対策として「定額給付金」を国民に給付したことがありましたが、たまたまその財源の別な使い道について考える機会があり、具体的なパパたちへのアプローチをしていこうと、自分の中で『グリーンパパ』の発想がでてきました。その後、農林水産省の方からパパの農業への関心を高めたいという話を聞いた時も、『グリーンパパ』の発想が大事だなと改めて感じました。」

  • 共助社会づくり課
    「自然豊かな地方と交流できるトライアル合宿を長野県で実施されていますが、
    このイベントについて聞かせてください。」
  • GPP吉田さん
    「前NPO法人の代表理事を辞めた直後、雑誌の取材で長野県佐久市を訪れました。
    佐久市の柳田市長は、育児休暇を取得するなどいわゆるイクメン市長として知られた方でもあり、少し面識があったのですが、その訪問を契機に、春日温泉ふれあい塾(春日温泉を盛り上げるため、農業体験などを通じて県内外と交流を深め、新しい農業を考える取り組み)を主催する農家さんとつながることができ、プロジェクトが具体化しました。

     地方とのつながりは一回きりではもったいない。コンセプトは四季折々を経験することで、その地域を感じ、知っていくことです。春にはレタス定植や田植え、秋には収穫、稲刈りなどがあります。
     こういったことを父子で体験できるイベントとして2015年からスタートさせました。メンバーの半数は前NPOでつながった人で30人近く集まりました。これを一つの形にしていければなと思い、NPOの準備を始めました。」

12名くらいの親子が田んぼに並び田植えし始めている画像 畑でレタス上をする父子、向かい合いで作業する3組

トライアル合宿の様子

  • 共助社会づくり課
    「NPO法人という形態を選んだのはなぜですか。」
  • GPP吉田さん
    「社会的な責任の追求として、毎年度の事業報告書などは必要だと考えますし、また前NPO法人時代にクリアできなかったことに再チャレンジしたいとの思いもありました。
     それに加え、現在のGPP副代表の鈴木さんとの出会いやタイミングも大きかったです。自分一人だったら厳しくても、それぞれの得意分野を生かしながらやっていこうと。キャンプや自然体験が好きなパパたち、『グリーン』に関心をもっている人がいるのはわかっていたので、それぞれがそういう興味のある分野を持ち寄ってやっていこうと法人を立ち上げました。」

  • 共助社会づくり課
    「子育てNPOや環境NPOですと、どのような事業か想像しやすいのですが、
    『都会のパパたちを地方につなぐ』とは、どのようなことを目指していますか。」
  • GPP吉田さん
    「私たちは、固定したモデルを押し付けたくないと考えています。普通、活動から始まって、任意団体になり、そのあとにNPOへというかたちが多いかもしれませんが、グリーンパパは、まず理念で団体をつくるところから始まりました。
     『地方とつないで移住しなきゃ』、というのはハードルが高いけど、そうじゃなく、『みんなで地域や地方につながってみませんか』、という提案です。引越しまではできないけど、そういう体験をしてみたい、体験があれば参加してみたい、という人はいます。私たちは『グリーン』にひっかかれば農業、自然体験、旅、色々な関わり方を提供していきます。」

  • 共助社会づくり課
    「グリーンパパプロジェクトには、どこかいい意味でふわっとしたイメージを持っていたのですが、
    そこも新鮮で魅力なのかなと感じます。」
  • GPP吉田さん
    「これは働き方も同様です。多様な働き方があり、「これ」という一つの提案があるわけじゃない。
    色々なメニューがある中で、一つの意思として働き方を変えようということができればいいと考えています。」

  • 共助社会づくり課
    「『グリーン』と出会うことで家族や子供にはどんな影響がありますか。」
  • GPP吉田さん
    「農業という点で言えば、普段はスーパーで食材を買うだけで生活しています。
    作物がどう育ち、どう収穫されているかなど大人でも知らないことが多すぎる。農家の苦労やありがたさ、食への意識、そういうことを子供だけで体験してきてというだけじゃなく、親子で行って、親子で学ぶ機会があること、これが大きなメリットだと感じています。
     また、複数のパパたち、親子たちが一緒に過ごすことで人間関係が学べるのも重要です。学校や地域の友達関係もいいのですが、それだけではない関わり、時間も貴重です。あの土地にいるあの子に会いに行きたい、という多様な人間関係を学べるのは子供の成長にもプラスに働くはずです。親自身も地域に根差して暮らしているパパたちに出会うことで学ぶことも大きい。こうした影響し合える関係性を副次的な効果として感じています。」

レタス農家のビニールハウスの前で記念撮影する20名ほどの親子  森林の中ターザンロープで遊ぶ笑顔の男児

然の中で遊ぶ子供たち

  • 共助社会づくり課
    「都会と地方のパパの交流会もあるようですが、地方のパパの実状はどう感じていますか。」
  • GPP吉田さん
    「地方のパパには都会の感覚ではわからない苦労もあります。こちらがゆったり過ごしているだろうと想像していても、足し算しながら仕事を組み立てている方も多く、意外と忙しかったりします。雪があれば雪かきがあるし、地域活動もある。地方ならではの人間関係もあります。人それぞれだからこそ、うまくいっている人の話を聞いてみると、色々と心掛けているのがわかります。
     もちろん子供達は生命力が高められるし、様々な自然環境に囲まれてのびのびと成長できます。都会と地方のパパそれぞれの人の気持ちに寄り添って、交流する関係性を増やして築いていく、そういう土台づくりを目指しています。」

  • 共助社会づくり課
    「埼玉県で活動することはどのように捉えていますか。」
  • GPP吉田さん
    「『グリーンパパプロジェクト』は主には首都圏のパパたち対象の取組みですが、登記は鴻巣市にしました。埼玉にも自然はいっぱいありますし、しかも都心にも近い。この環境を生かしたいと考えています。
     自然に囲まれた環境で生活したい人は移住すればいいけれど、都心に通いながら、自然にふれあいたい人たちのとっかかりに埼玉はよい場所です。圏央道などの交通網も整備され、利便性も高い。まずは埼玉で、次のステップが地方ということも考えられます。そういう点で、埼玉の見せ方も考えたいし、自分自身もせっかく埼玉に住んでいるのだから県の魅力につながるような拠点を作ってお手伝いしたい気持ちも芽生えました。」

  • 共助社会づくり課
    「今年度は、埼玉県少子政策課の職場の交流応援事業に採択され、
    『~ザ埼玉 未来を語って好きになるSAITMA 子育て・働き方未来提言プロジェクト』を実施し、
    「子育て」「働き方」「地域」「家族」の4つのテーマについて提言をまとめられました。」
  • GPP吉田さん
    「この4つのテーマは日常をつくる大事な要素で、それを一つ一つ掘り下げていきました。
    地域で活躍する人は見えても、その人が子育てする姿は見えなかったり、この4つのセクターが分かれてしまっているようで、うまく融合させたいというのもありました。
    住んでいる埼玉に興味がないのはもったいない。だからもっと知りたいの部分を掘り下げていこうよ、と。

     県内で活躍する講師の一人一人が語り、参加者それぞれが思いを膨らませてまた語る、という言葉にしていく作業で、参加した人の満足度は高かったです。実りあるものになりました。限られた時間でしたが、思いのこもった提言になったと思いますし、彩の国ビジネスアリーナで発表することもできました。小さい提言かもしれないけれど大きい成果だったと感じています。」

ビジネスアリーナで発表。
吉田さんと鈴木さん

ビジネスアリーナのブースの前の吉田さんと鈴木さん

  • 共助社会づくり課
    「忙しい毎日を過ごす方も、ワーク・ライフ・バランスやライフデザインを考え、新たなつながりを持ってみようということですね。」
  • GPP吉田さん
    「結婚支援や子育て支援はストレートな少子化対策ですが、今回はその手前の、もっと根底にある部分を深めていきたいと企画しました。

     地域を知って地域に参加すると、男女に限らない出会いのほか、子育て、働き方を考える様々な出会いがあり、その最後に結婚があると思います。
     ともすると、行政はやったことに満足してしまう傾向があるのではないでしょうか。
     次につなげていくことをやらないと本当の意味の支援にならないという思いがありました。」
  • 共助社会づくり課
    「『働き方改革』と言われてもなかなか現状は難しい。
    パパたち個人が小さな一歩を踏み出すにはどんなきっかけが必要ですか。」
  • GPP吉田さん
    「やはりこういうことは国や県にこうだ、と決められるものではありません。今は考え方も多様化し、押し付けは難しい。自発的で主体的だからこそ意味があります。埼玉の未来提言書みたいなものを地域ごとにつくって深めるような、地域を知る機会は今後どんどん必要になっていきます。
     ジブンゴトでなくては働き方も変わらない。都会では、ともすると周りとつながらないことに甘んじてしまいますが、関わっていくことで生きやすさが生み出されるかもしれません。

     例えば、自分は数十年上尾市に住んでいてもお祭りのお神輿を担ぐことはありませんでしたが、鴻巣に居を移してからは自治会の活動などにも参加し、地元の方と顔見知りになって祭りを手伝うようになりました。地域に関わる大事さをみんながちょっとずつちょっとずつ気づいていく。180度の転換は難しいけれど、ジブンゴトとして踏み出していくことで変化は起きます。グリーンパパはそういった地域に関わりを持ってこなかった人たちに対して変化の兆しの一歩となる企画をしていきたいです。」

  • 共助社会づくり課
    「今後の予定について教えてください。」
  • GPP吉田さん
    「常々現場が欲しいと考えていたこともあって、鴻巣市で来年度に学童保育を開所する予定で準備を進めています。
    日常的に子供と関わりながら、実際の声を拾って具体的なアプローチへとつなげていきたいし、いずれは、子ども食堂などの地域の拠点づくりもしていけたらと思っています。
     現場を持つことで活動領域が広がりますし、やりがいを持ちながら、いろいろな提案もできると考えています。また一方で、保育関係の施設で働く方の処遇の改善にも取り組めると感じています。

     もう一つは情報発信です。グリーンパパプレスというwebメディアを新たに立ち上げ、ライフスタイルやツアーを紹介し、多くの地域とのつながりを生んでいきたいです。地域ごとにロケーションと人と地域資源を掛け合わせることで地域の魅力は一層増していくと思います。」

特定非営利活動法人グリーンパパプロジェクト ホームページ http://greenpapa-project.jp/

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