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特定非営利活動法人 ライフ・アンド・エンディングセンター

 「終活(人生の終末を迎えるにあたり、延命治療や介護、葬儀、相続などについての希望をまとめ、準備を整えること)」という言葉が流行しブームとなってから8年あまり、今やすっかり定着しました。そのずっと前から埼玉県で「お元気な時からお墓まで、死生を自分らしく決めるお手伝いをしたい」とエンディングノートの発行や講演会、葬送の支援をしているNPO法人があります。

 今回は、特定非営利活動法人ライフ・アンド・エンディングセンター(以下LECと記述します。)の理事長の須齋美智子さんにお話を伺いました。

男女のスタッフに囲まれて微笑む理事長の女性の画像、計3人の人物

LEC理事長の須齋美智子さん(中央)

  • 共助社会づくり課
    「活動のきっかけはご主人の病気だったとLECのホームページで拝見しましたが、どのようなものだったのでしょうか。」
  • LEC 須齋さん
    「夫が食道がんを患い、食道全体を切り取って、胃を食道の代わりにする大手術を受けました。
    9時間もかかる過酷なもので、その後21日間も点滴のみで寝たきりでした。
    この手術に耐えても、終わった後は抗がん剤と放射線治療が勧められます。
    これほどダメージを受けた体に重ねてダメージを与えていいのかと疑問に感じ、治療を断ることにしました。今では抗がん剤は人によっては良くない、という考えもありますが、当時はそういった状況ではありませんでした。
     そのような折、図書館でがん産業(ラルフ・W・モス)という本に出会います。
    目から鱗が落ちるとはこのことで、キャンサービジネスや医療界のヒエラルキーなどを知ります。
    人生観が変わりました。『命は自分で守るべし。』具合が悪いからとやたらに医者に駆けつけるのではなく、理性的に判断してかかるべきです。夫はその手術から10年生きることができました。」

  • 共助社会づくり課
    「そこから活動が始まるわけですが、もともと60歳を機に第二の人生を考えていたそうですね。」
  • LEC 須齋さん
    「はい。60代で生き方を変えましょうということで少しずつボランティアをやってみたり、与野市民演劇に参加しようかなどと考えたりしていました。ですが、夫が大手術をした後でもあり、既に両親を亡くしていましたから、次は自分が初めて葬儀を執り行う人なのだと意識しました。
     まず葬儀屋さんに電話で問い合わせてみましたが、とてもわかりにくい。そこで自分で勉強を始めてみると、葬儀は古くから世界中で行われてきたもので、様々な形があるなど、その歴史は大変興味深いものでした。現実に立ち返ると、私たちの老後には、終末期医療、尊厳死の宣言書、遺言などの公正証書手続き、死後事務、住いの整理など多岐にわたる問題があります。」

  • 共助社会づくり課
    「現在では終活講座というと大変人気がありますが、当時の様子はいかがでしたか。」
  • LEC 須齋さん
    「加入していた公益社団法人長寿社会文化協会の会員を中心に月に1度、埼玉で葬儀の勉強会を始めることにしました。この勉強会は2年間やりましたが、皆さんの関心が非常に高かったので、これなら広く一般にもノウハウを知らせたいと思い、NPOを作ろうということになったのです。
     2000年の年末に法人を設立し、2001年に所沢市役所で公益社団法人長寿社会文化協会と共催で葬儀のテーマで対談企画及び遺骨の始末の仕方の展示を行ったのがNPO法人としての出発で、2年目に10回連続葬送講座を行い、その最終回に模擬葬儀を行いました。
     これもとても注目を集めました。」

  • 共助社会づくり課
    「これまでに多くの人に支持されているエンディングノートである
    『もしもノート(家族への伝言帖)』の発行の経緯についても教えてください。」

  • LEC 須齋さん
    「葬儀のために家を訪ねると、家族は思いのほか亡くなった方のことをわかっていないことが多いのです。家族や周囲に伝えておくべきことがあるのでは?
     模擬葬儀が終わった後に、『もしもノート』の情報収集を始めました。素人が収集するものですから、介護の具体的なやり方など的を得ないものも多かったのですが、全ての資料に目を通し、他にも参考資料を集めて編集しました。
     『もしもノート』は未来を考えるためのものとして作りました。未来を思考して書いてほしい。表紙の裏に男性が赤ちゃんを抱っこしている挿絵がありますが、これはそういう思いを込めています。市内の多くの公民館他で、このノートをもとに講義をしました。埼玉発の『もしもノート』は瞬く間に広まり、現在ではエンディングノートと呼ばれるものは3000種類もあるそうで驚きます。
     副題で『20歳から100歳までの危機管理』となっているのは、自分の足元を見る作業だから。若い人に書いてもらえば、「自分を見つめること」ができます。自分探しをしなくてもよくなるよと伝えたいですね。 
     こうして2004年に3000冊作ったノートは、賀状のやり取りをしている仲の知人に送ったことがきっかけで新聞記事に取り上げられ、全国に知れ渡ります。当時3台あった電話は鳴り止まず、現在までの販売部数は25万部を超えました。」

  • 共助社会づくり課
    「終活というとどんな相談が多いですか。」
  • LEC 須齋さん
    「やはりお墓をどうしようかという質問がとても多い。まだ、お墓は必ず用意しなければならないと思っている方が多いのです。
    でも、今後の自分の暮らし方をきちんと考えないといけません。一人残って墓守するのは誰ですか。今は、散骨や樹木葬など選択肢もたくさんある時代です。お墓はいわば迷惑遺産になってしまうこともあります。葬り方、片づけ方をきちんと考えたほうがいいです。
     亡くなるとお墓という発想は、売る側も買う側も考えやすくわかりやすいです。もちろん、お墓も大切だけど、それ以外のことがとても重要。自分はどんな状況にいるのかを洗い出すこと、キャリアデザインの棚卸しにあたることをする必要があります。やはり書きだすことによって頭の整理ができますね」。

  • 共助社会づくり課
    「LECの講座の内容は、『もしもノート』の書き方や葬儀の仕方にとどまらず、終末期医療や介護保険制度、訪問介護など本当に幅広いですね。今年度からさいたま市のマッチングファンド事業の『不安のない一人暮らしのための終活事業』を協働で実施されています。評判はいかがですか。」
  • LEC 須齋さん
    「高齢者が安心して暮らせるように、溢れる情報の中から良質な情報をわかりやすく提供したいと考えています。例えば、配布している『主な死後事務委任契約(エンディングパスポート)』は目で見てわかるように絵を入れて作っています。私たちの主な会員は70代の方で、やはりインターネットではない情報収集がほとんどです。
     また、講座の評判はおおむねいいです。皆さん「知らなかったことだ」とおっしゃいます。
     内容は大学教授の講義などもあり、少しまじめすぎたかしらとも思いますが、高齢者の皆さんの関心の高さを感じました。特におひとりさまは勉強して、具体的に考えられるように準備しておかなければいけません。」

講演会を聞く会場の画像演台に立ち講義する男性講師の画像

さいたま市の講座の様子

  • 共助社会づくり課
    「現在LECでは『死後事務委任契約(エンディングパスポート)』に注力されていますね。」
  • LEC 須齋さん
    「世間でいわゆるおひとりさまと言われる一人暮らしの高齢者が亡くなると、従来家族が行ってきた多岐にわたる手続きを行うことが困難になり、行政が負担することが増えてきました。亡くなってお葬式をする。でも、お葬式で終わりではなくて、その後にやることが山ほどあります。その際にもお金はかかりますし、それらはみな税金で支払うことになります。
     一方で、亡くなる時にある程度の預金を残しても、相続人がない場合はその預金は国庫へ入ります。2017年4月16日付情報元日本経済新聞朝刊には、『亡くなった人の遺産を国が「相続」するケースが増えている。相続案件が増える一方で、未婚率上昇や高齢化で受け取り手がいないケースが増えている。遺産が国庫納付される金額は年間400億円とこの10年で2.5倍に拡大。』という記事が掲載されました。死後のお金の使い道は、例えば地域の潤いになるようにしたいなんて思うものではないでしょうか。生前に死後事務を委任することで、これらを解決することができます。」

  • 共助社会づくり課
    「『エンディングパスポート』の紹介資料をみると、亡くなってからの事務はたくさんありますね。信託が担う部分も大きいようですが富裕層向けのイメージがあります。」
  • LEC 須齋さん
    「『死後事務』ついて、特に単身の方は第三者を挟まないと何かと大変なものです。また、単身者でなくとも身内による資産管理には諸々の問題があり、難しいこともあるようです。
     信託というと、信託銀行や銀行が兼業している信託だと思って、お金持ちのためのものだと感じがちですが、平成16年の改正信託業法により、少額の信託を扱う株式会社信託が参入しました。これで50万円のみを預けてお葬式にだけ使ってくださいというやり方もできます。信託って庶民のためのものですよ、と伝えたいと思っています。」

  • 共助社会づくり課
    「LECが設立して20年近く、NPO法人のお姉さん、お母さんといった存在ですが長年やってきていかがですか。
    運営上で苦労している点は何ですか。」
  • LEC 須齋さん
    「NPO法人はいろいろな制約があり、税率が低くても、手間暇がかかり、継続は大変なことです。そしてNPOは玉石混交。心無いNPOが起こした事件ばかり報道に取り上げられてしまうのは残念なことだと感じています。
     苦労するのはやっぱり資金です。長くやればやるほど、皆さんそうおっしゃっていますし、私達も感じています。もっとお金があれば、もっともっといろいろ面白いことができるのにって。
     会員の会費では合計しても2か月も持ちません。人件費は、もちろんボランティア価格ですけれど、それだけでは生活していけません。
     世の中的にやっていかなければ、そしてやるからには継続していかなければ。法人と事業は大きくなればなるほど責任も大きくなり大変です。有力な団体と組んで安定した運営をしていきたいとも考えます。協力してくれる、サポートしてくれる先も探したいと思っています。
     もちろん次の大往生の勉強会(講座)も準備中ですよ。みなさんの切実な悩みに応えていきたいです。」

  • 共助社会づくり課
    「埼玉県では今年度、アクティブシニア(元気な高齢者)に地域活動を楽しんでもらおうと地域デビュー楽しみ隊を結成するなどしています。大先輩にあたる須斎さんから第2の人生をスタートするアクティブシニアに一言いただけますか。」
  • LEC 須齋さん
    「みんなまだまだ新しい種まきができる年ですよ。私だって100歳まで後15年ほどありますから。
    0歳の子供が15歳までにどれだけ成長できるか。私もまだまだ知らないことだらけ、やりたいことだらけです。」

特定非営利活動法人 ライフ・アンド・エンディングセンター ホームページ http://www.npolec.org/index.html

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