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特定非営利活動法人 Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム

埼玉県では、NPO基金を財源にしてNPO法人が独創的・先駆的な視点で取り組む事業を支援しており、
平成29年度は「NPO活動サポート事業」として10事業が実施されています。

今回は連続セミナー「わが子の「発達の遅れ」に直面した保護者とともに考える」を実施している
「特定非営利活動法人 Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム
(以下 『NPO法人 教育を軸に』と記述します。)」の代表理事の知覧俊郎さんにお話を伺いました。

座って打合せする代表理事知覧さんの画像

代表理事の知覧さん

  • 共助社会づくり課
    「活動のきっかけを教えてください」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「私は医療ライターとして、これまでいろいろなテーマで書いてきました。
    その中で発達障害に関心を持ったということがひとつ。あわせて、発達上の遅れをもつ子供の指導を行う川口市にある、民間の教育機関(エルベテーク)と継続的に情報交換する中で、ハンディキャップのある子供もとてもいい成長をしていると感じていました。コミュニケーションがうまく取れない子、集中力がとぎれる子、なかなか覚えられない子達であったとしても、周りが声をかけて注意すれば、不適切な言動を改められる子供達です。本やテレビでよく紹介される『発達障害』の子供達の姿とは大きく異なっています。そんな実例、幼児期から社会人までの実例が何百とあります。
     次第に、早い段階から適切な教育を提供すれば、かなりの子供達はハンディキャップがあっても自らの課題を乗り越えられると確信するに至りました。そこでその事実と実例を情報発信していきたいというのが大きなきっかけです。」

  • 共助社会づくり課
    「NPO法人の設立についてお聞かせください。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「NPO法人を設立したのは、NPOの客観性、社会性と責任というところが大きいです。これは企業活動ではなかなかクリアできないものだと思います。以前、小さな事務所を経営していた時には、運営面の優遇など、NPO法人に対してあまり良い印象を持っていなかったのは事実です。
     しかし、私自身、年齢を重ねてみると、さまざまな制約の中で一般市民が自分の蓄積してきたネットワーク、スキル、経験をベースに活動するにはよい仕組みだと感じるようになりました。地域固有のテーマあるいは地域共通のテーマに絞った活動にNPOは適しています。私の場合、"埼玉"を意識しながら教育や医療に関わることによって、新たに発見できるものがある、と感じ始めています。」

  • 共助社会づくり課
    「セミナーは主に発達に遅れのある子供の保護者の体験発表が中心ですが、メリットはどんなところですか。お話しする方は躊躇したりしませんか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「やはり切実な話がきけることが一番です。医療関係者の話も大切ですが、そういった関係者の知識ではない、保護者だから語ることのできる生の声には具体性があり、説得力があります。まず保護者の声に耳を傾けてみよう、ということですね。
     本やテレビなどでカウンセリングの経緯を実例として見聞きすることはあっても、1人の子供を長期的継続的に追いかけている複数の事例紹介は案外、少ないものです。セミナーを通じて親の心配や不安も共有でき、そこから具体的に抜け出す方法を示すことで子育ての負担軽減につながると思います。

     現在お話ししてくださっている保護者は、教育・学習の意義と手応えをしっかり理解している方、確信を持って家庭学習や学校との信頼関係づくりに取り組んでいる方なので、それほどの躊躇はないようです。とは言え、保護者のうち医師や看護師の方は発表慣れしていますが、普通の主婦の方は事前の準備を十分にしていただいています。

     同時に主催者として、単なる親の体験発表の場にはしたくありませんでした。
    学習を通した成長の記録を紹介することこそ意義があると考え、体験発表と指導法をセットにして情報発信しています。どのような指導をしたから、3年後、5年後、そして10年後、子供はどのように変わったかを伝える構成です。」

  • 共助社会づくり課
    「セミナーの開催を重ねて実感することはありますか。反響はいかがですか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「医療の話になりますが、医療の世界では用意周到に計画された臨床試験を経て大量データに基づく治療法が検討されます。そして、信頼度のレベルが評価されます。それは当たり前の事です。発達障害児の教育の世界では治療法は指導法にあたると思いますが、なぜか長期にわたる検証に基づかない曖昧な指導法が語られます。よく吟味されていないのに『無理をさせてはいけない』『発達の遅れは個性』といった情緒的な言葉で説明されるケースなどです。本当に長期間指導したことのある方のアドバイスなのだろうかと疑問に思います。現場の教師自身も戸惑っているようです。

     こういう状況は子供本人にとっても保護者にとってもきわめて不幸なのではないでしょうか。
    セミナーを重ねれば重ねるほど、その思いを強くします。医師であり母親である保護者の方が事例発表の中で『発達障害に関してはセカンドオピニオンがない』と嘆いていましたが、私たちは保護者が複数の指導法の中から自分が納得したものを選べるセカンドオピニオンの習慣を『発達障害』の領域にも根付かせたいと考えています。」

セミナーの様子(保護者の体験発表と教育機関の講師が講演するのを参加者が聞く)

 連続セミナーの様子

  • 共助社会づくり課
    「法人名からも『教育』に対する強い思いが表れています。
    教育という面では、子供の発達の遅れに気づいたら何をしたらいいですか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「子供の遅れに一番に気づくのは、やはり身近な親です。『なんとかしなければ』と思うのも親です。
    遅れがあるからとあきらめてしまうのではなく、その子の課題を見つけ、協力者を探して努力することだと思います。
    子供が最低限身につけなければならない力を育てるための指導が受けられるかどうかで、その子や家族の人生が変わるのではないでしょうか。」

  • 共助社会づくり課
    発達障害は世間で広く認知されるとともに、早期の療育が効果的だということも浸透していますが、
    その反面過剰に反応しているところもあるかと感じます。どのようにお考えですか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「とにかく、病名や診断名に振り回されすぎずに、その子自身の本当の力がつくかどうかを基本に考えたいですね。
    言葉を獲得し、ルールやマナーを覚え、気持ちや行動をコントロールし、文字の読み書きの力を伸ばすこと、要するに学ぶ姿勢を中心に据えて力を育てる。そうしたプロセスを経て実際に力をつけてきている事実を、私たちは情緒的ではなく冷静に伝えたいと思います。効果的な新しい療育と特別支援教育のあり方が求められているのではないでしょうか。」

  • 共助社会づくり課
    「『NPO法人 教育を軸に』では、子供の教育と医療という二つをテーマに掲げてらっしゃいます。
    この二つの連携についてはいかがですか。また、具体的な活動はお考えでしょうか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「具体的な活動はこれからですが、たとえば子供を含めた家族全体が健康増進や健康診断に参加し盛り上げることによって
    地域医療や予防医療の質を高め医療費の削減を可能にできると思います。あるいは脳性麻痺の子供のリハビリに教育的なアプローチを導入することによって、QOLをより高められるのではないかと考え始めています。NPO法人として教育と医療の壁を超えてそうしたプロジェクトに関わっていきたいですね。

     私は医療の分野で特に緩和ケアに関心を持ってきました。その関係で、この分野のパイオニアともいえる埼玉医科大学病院総合診療内科(緩和医療)教授の岩瀬哲先生に理事になってもらいました。病気の進行に伴う苦痛に対し予測・予防・緩和する緩和ケア本来の視点から特別支援教育を考えるとともに、医療の分野に子供の教育という視点を持ち込めるのではないかと考えています。結果的に保健や福祉の負担軽減にもつながると確信します。」

  • 共助社会づくり課
    「『NPO法人 教育を軸に』では親と子のワークショップなども開催されています。
    大人と子どもの知的な(騒がしくない、幼くない)時間をつくるのが特徴とのこと。
    特に小さな子のいる家庭ではどう確保したらよいか気になるところです。
    今回のワークショップは、実際どんな雰囲気でしたか。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「『ほんとうの"楽しさ"、みつけよう!オブジェ作家・茅木さんといっしょに人形をつくる』を開催し、身近なもの(新聞紙と和紙)から立体をつくる夏休みのイベントを企画しました。穏やかな空間づくりには講師の方の力や話し方が大きいと思います。今回は4組10名が参加し、うち1組が発達の遅れのある子どもでしたが、2時間を概ね静かに穏やかに制作することができました。
     子供の参加するイベントでは楽しませよう盛り上げようと思うあまり、子供中心に陥り、大人が子供と同じレベルになりがちなのではないでしょうか。やる側の落ち着きも必要だと考えます。同時期に開催した『子どもの発表会』も同様でした。」

完成した人形を前に記念撮影する二組の親子、子供が5人人形作家の茅木さんが2組の親子に机を挟んで教える画像完成した人形を前に記念撮影する親子2組


人形作家の茅木日出男さんから教わります。
完成した人形と一緒に。

完成した人形を前に笑顔の親子(母2人、子供5人)の画像

  • 共助社会づくり課
    「発達の遅れがあってもなくても、"教える大人と教わる子供"という『NPO法人 教育を軸に』が大切にしているテーマは、大人が念頭に置いておきたいことだと思いますが、徹底するのが難しいところでもあります。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「最近、思うのですが、人間とは言葉や文字を使って教えたり教わったりする動物なのではないでしょうか。ですから、効率的に物事が伝わるし、教え方の手順も体系化できる。まず、親子で最初に確認すべきことは、この事実だと思います。そして、親は子供の目をみて伝える。子供は親の目をみて話を聞く。こういう『教え教わる関係』づくりが、ハンディキャップのある子だけでなく一般の子にとっても成長のプラットホームになると思います。子供の成長の中心には教育があるということですね。」

晴れの輔君研究会の発表風景ミニ観察会、駅前の公園で身近な生き物を探している人達

子供の発表会「晴の助君の夏休み生き物かんさつ日記 と りのさんの自由研究 発表会」
りのさんは"色水の観察"、晴の助君は"生き物観察"を発表。
写真は発表会とその後のミニ観察会の様子。すぐそばの自然に触れる楽しさを親子で共有します。

晴の助君の観察日記、スケッチと日記

観察日記の一部。                
 生き物の形態と特徴を捉えたスケッチに参加者も感心。

  • 共助社会づくり課
    「今後の活動について教えてください。」
  • 「NPO法人 教育を軸に」知覧さん
    「12月に8回目の連続セミナーがあります。弁護士でもある父親が体験発表を行います。
    現在、ホームページに全セミナーの報告とアンケートを掲載していますが、今後、より詳しい記録をまとめる予定です。セミナーはある程度継続することが必要だと考えています。回数を重ねることにより実績を積み、その中で注目されていくのではないかと考えます。
     私たちは得意分野である情報発信でNPOを発展させ、いずれは、啓発本や論文の他、絵本なども企画していきたいですね。」

特定非営利活動法人 Education in Ourselves 
教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム ホームページ
https://www.education-in-ourselves.org/

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